小手毬の花と医学生

これは50年ほど前、私が小学校低学年の頃の話しです。

母方の祖母は綺麗な人で、いつも和服で髪は美容室でセットしていました。
日舞の習い事もしていました。

祖母の家の玄関先には小手毬が植えてあり、春になると真っ白の花が沢山咲き、それは見事でした。
花の頃に、母と一緒に出掛けて行くのが楽しみでした。

祖父は私が幼稚園の頃に他界し、祖母は1人暮らしでしたが、家の近くに国立大学の医学部があった縁で、男子学生を2人下宿させていました。

私は、このお兄さん達に会うのも楽しみでした。

祖母の家に行くとすぐ、お兄さん達の部屋をノックして、「こんにちは」と挨拶していました。
2人共いつも机に向かっていましたが、笑顔で「こんにちは」と返してもらえるのがとても嬉しかったです。

1人のお兄さんの部屋は2階で、2階に上がる自分の小さな足音も覚えています。

ある日遊びに行くと、下の部屋のお兄さんの所には行かないよう言われたので、
別室のインコの鳥籠を見に行きました。

祖母が母に話している声が聞こえて来ました。

振られた。
プレゼントは全部返された。
それは全て捨てた。 

下の部屋のお兄さんに何かがあった事が分かりました。

50年も前の、ご本人も覚えているか分からない話しを、どうして私が覚えているのか。
数式は全く暗記出来無いのに。

ありがとうございました。
また明日。









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