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倭人は暢草(ちょうそう)を献じる30(小説)(エッセイ・とんぼ)

エッセイ・とんぼ 〈 椿 ほころぶ気配 〉

写真は庭の椿を一輪、飾らせてもらいました。
わずかにほんのり甘い香りがします。
実際鼻を近づけても香りはしないのですが。
庭や向こうに見える公園の遊歩道、身近でも至るところで彩りが姿を消してゆく中冬の間美しく咲き誇る椿。
椿の木には白と赤の蕾が次々に膨らんでいますね。
花びらと花びらがしっかりとつぼんでいて、触ってみると分かると思いますが蕾はぎゅっと硬く、さあ今から美しく咲き誇るのだという自信にみなぎっている様です。
それなのに慎み深く美しい。
ずっと蕾のままの姿を愉しんでいたいと思ったりもしますが
蕾が開くと柔らかな花びらが重なり合いどこかに椿姫が隠れていそうだなと思い耽ってしまいます。
あんなにぎゅとしていた蕾が嘘みたいに思えるほどの繊細な花びら。
咲くと黄色い雄しべが姿を現します。
落ちる時は花と雄しべが萼ごとポトンと落ちる。
その姿には奥ゆかしさを感じます。
分厚く光沢のある葉は濃い緑が艶々と光っていて触ると革質。
隙間なく葉が茂り蕾を守っているようです。

ですが、そうなんです本当に萼や葉が花を守っているそうです。
日本に由来深い桜は春に咲くのに、どうして椿は冬に咲くのか疑問に思って調べてみて驚いたのですが。
花粉を鳥に運ばせるためだそうです。
春は他も沢山の餌が生息しているため、鳥達はそちらの方に夢中になってしまいます。だから餌が無くなる冬を選んで咲いているのだそうです。
冬になると鳥達は椿の蜜を吸いにやってきます。
その際くちばしに花粉をつけて運んでもらわなければなりません。
中には花粉まみれになることを嫌がり花びらを横から突いて蜜だけを吸っていってしまう鳥もいるために萼が花をしっかりと守っているのだそうです。
憶測ですが肉厚に生い茂った葉も鳥には手強い相手ではないでしょうか。
その結果、花の正面からくちばしを入れて蜜を吸うしかなくなり、計算通り口ばしに花粉をつけて運んでくれる仕組みになっているそうです。
これが常識的な知識だったらすみません。
私は知らなかったので驚きました。

これから春までの時間、椿と鳥たちの様子を伺いながら
冬を楽しめそうな気配です。

♢ 不老不死の草薬。千年に一度花を咲かせる暢草。
 かつて時を得た仙草を周天子へ献上した倭人。
 黒潮奄美族(くろしおあまみぞく)。
    大陸の内戦が海も陸も混乱させる今、真の倭人が訴えることは何か...

🌿秋津先生の著書で、難しい漢字や言葉、興味を持った事などは
 辞書やネットなどで調べながらゆっくり読んでみて下さい。
 きっと新しい気づきがあり、より面白く読み進められると思います。

倭人は暢草を献じる 30
原作 秋津 廣行
  「 倭人王 」

昆迩(こんじ)は、遠回りではあったが、黒潮奄美(くろしおあまみ)族と周天子(しゅうてんし)との繋がりを話した。

 「その話は、高天原(たかまがはら)にも届いておる。
豊浦宮(とよこんすうらみや)を築かれた豊雲野之神(とよくもののかみ)は、知佳島(ちかしま)の昆(こん)によって、宝貝の海路が開かれたことを高く評価され、昆(こん)と共に豊浦宮(とようらみや)を築かれたと伝わっておる。
豊雲野之神(とよくもののかみ)は、後に、大海原の大神となられ、高天原に次ぐ神として、西の海を任されたのである。
昆須(こんす)とは知佳島之昆(ちかしま)のこんの子孫であったはず。」

 さすがに阿津耳(あつみみ)は、高天原の重鎮(じゅうちん)である。
豊浦宮(とようらみや)の創建(そうけん)時代のことだけでなく
奄美西方(あまみにしかた)の昆一族についても周知していた。

                             つづく 31

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