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波響きの隠し事39(小説)(エッセイ)

< 自転と公転とラナンキュラス > エッセイ・とんぼ

どんなに美しい人より
華々しいラナンキュラスだと思った。
西に傾いた太陽がまるではじめて見るような色彩を光の上に映すので
はっとさせられる。
傾いているのは太陽ではなく地球のほうであると。
イメージすると、我が家から真南を見て左側にまず自転しているのです。
地球の自転は時速1500キロほどらしいので、それぐらいのスピードで常に回っているのですね。
さらに公転しています。
速度は時速11万キロ。こわいくらいに早い速度ですよね。
私たち人間はそんな地球の上に立っていられるだけで奇跡なのですね。
このラナンキュラスは何色と呼ぶのだろう、光が幾重にも色を作り出すので決して一色に留まりません。
傾き出すと早く、さっきより濃い色になりながら段々と影が強くなり、夕暮れの中で一度は色が消えたようにひっそり咲きます。
今度は夜を待つようにもう一度色がはっきり浮かんでくるようです。
そして朝日に向かいまた新しい日の色を見せてくれます。

紅葉していた葉を眺めながら冷たい風の中で思いを馳せていた日から
4ヶ月ほど経ったのだろうか。
もうすぐ桜が咲く。
桜が咲くときっと思う
こんなに美しい景色が他にあるだろうかと息を飲む。
寒い季節をじっと耐え忍びもうすぐ咲く。
満開の桜が待ち遠しい。
ラナンキュラスの蕾もまだいくつか控えているので
両巨頭の美しさを見比べながらゆっくりお茶でも飲みたいものです。

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その時、阿津耳は、沈んだはずの太陽光がひと筋の光となって跳ね上がるのを見た。。。

🌿秋津先生の著書で、難しい漢字や言葉、興味を持った事などは
 辞書やネットなどで調べながらゆっくり読んでみて下さい。
 きっと新しい気づきがあり、より面白く読み進められると思います。

波響きの隠し事39
原作 秋津 廣行
  「 倭人王 」より


 阿津耳(あつみみ)は、豊浦宮にきて、秋津洲の危機をまざまざと肌に感じた。 

 海賊の襲来について、皆々から報告を聞きおえると、阿津耳は、豊浦宮の祭殿に向かい一人佇ずんだ。
はるか西に浮かぶ沖之神島(おきのかみしま)を見やり、その神島で禊(みそぎ)を行っている八潮男之神(やしおおのかみ)に思いを馳せた。

 - 高天原では、若木神(わかきかみ)が、世継ぎとなられた。
父神の金拆神(かねさくかみ)は、なぜにあのように不遇の運命を背負ったお子を跡取りとなされたのであろうか。
ましてや、高天原の行く末を、どのようにお考えなのであろう。

 日が西の海に沈むと、あめつちは紫の気膜きまくに覆われてしまった。阿津耳あつみみには、その薄れゆく光の中から、神島にいる八潮男之神の祈りが聞こえそうであった。

 - 豊浦宮は、楚の追撃軍から無旦王子(むたんおうじ)を守るつもりである。しかし、今、八潮男之神が、楚の国を相手に戦う理由はないはず。
一体、宮は何を考えておられるのか。

 阿津耳は、次第に暗くなる日没の海を眺めてそう思った。
東を向いても、西を向いても、秋津洲の行く末は見えない。
「沈んだ太陽は、明日もまた、必ず現れるとは限らない・・・」と、気持ちは晴れなかった。

  ― しかし、すでに八潮男之神(やしおおのかみ)の腹は決まっているようだ。越(えつ)の無旦王子(むたんおうじ)を豊浦宮で匿うつもりである。

 その時、阿津耳は、沈んだはずの太陽光がひと筋の光となって跳ね上がるのを見た。
その光は、神島の向こうを射した。阿津耳は、ぴくりとして背筋が伸びた。

 まさにそこは、津島(つしま)のわたつみの宮の場所である。

  ― あれは、わたつみの宮だ。
そうか、無旦王子(むたんおうじ)は、まだ、わたつみの宮におられる。

 神島の向こうには津島であり、わたつみの宮がある。
まさに八潮男之神は、無旦王子(むたんおうじ)と向かい合っておられるではないか。阿津耳は、八潮男之神が神島で禊(みそぎ)をなされていることを理解した。

  ― なるほど、八潮男之神(やしおおのかみ)は、越の王子を自らお出迎えに行かれたのであったか。

                             つづく40

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