見出し画像

三井住友銀行の外貨預金金利が5%になったと聞いて驚いた時に読む話

三井住友銀行が、外貨預金(ドル)の金利を5%台に引き上げるというニュースが話題を呼んでいる。
今まで0.01%だったものをイキナリ500倍に引き上げるとのニュースに色めき立っている人も多いかもしれない。しかし、もしあなたがこのニュースに驚いているなら、ハッキリ言ってあなたは情弱だ
気を付けた方がいい。


外貨預金≒情弱向け商品

円預金以外の資産運用商品というと外貨預金を思い浮かべる人が今も多いようだ。
しかしハッキリ言うと、外貨預金は情弱むけの商品だ。

為替手数料がボッタクリ

メガバンクなどの大手銀行で外貨預金をするとドルから円、円からドルに両替する度に「ボッタくり両替手数料」が徴収される。最近はだいぶ安くなったとはいえ、預入時に50銭、円に戻す時に50銭程度の手数料が取られる。合わせて1円だ。今の為替レートで換算すると元本の0.7%程度にもなる。

税金が雑所得

次に注意した方がいいのが税金だ。外貨預金の場合、金利は20%(+復興税で20.315%)の源泉課税だが、為替差益が生じると雑所得扱いになる。
他の雑所得と合算で20万円までなら申告不要だが、これを上回ると確定申告の必要が生じる。
また為替差損が生じた場合には、雑所得内でしか損益通算できない。給料や年金、また株など他の金融資産とも損益通算できない
所得がある程度ある高額所得者の場合、雑所得が原因で税率が上がってしまい元も子もないことがある。

健康保険料が増える可能性

外貨預金をする可能性が一番高いのが、年金世代の高齢者だろう。しかし高齢者は注意したほうがイイ。
というのも外貨預金で下手に差益が出ると「雑所得」の「総合課税」になるため課税所得が膨らんでしまい、住民税非課税世帯から外れてしまう可能性があるからだ。その場合には、国民健康保険や高齢者医療制度の保険料がいきなり跳ね上がる場合がある。住民税非課税世帯雄場合には、国保の保険料は、年間2万円程度だろう。しかし非課税世帯を外れるとイキナリ年間の保険料が20万円弱になるケースがある。

インフレ対策にはFXが最適

それでも外貨預金をしたいというニーズはあるだろう。その場合には、外貨預金ではなくてFXを利用するのが正解だ。

レバレッジ1倍でOK

FXと言うと、レバレッジを掛けて元本の何倍もの取引を行うギャンブルの様な取引を想像しがちだ。しかしレバレッジを掛けない(レバレッジ1倍)で取引しても問題ない。レバレッジ1倍なら実質外貨預金と同じだ。

為替手数料が実質なし

外貨預金では、往復で75銭から1円程度の為替両替手数料が徴収される。しかしFXの場合は、業者間の競争が激しく、為替手数料は片道0.1銭が普通だ。如何に銀行がボッタクリ商売をしているか分かるだろう。

金利は元々高い

金利も元々高い。メガバンクの三井住友銀行が金利を引上げたのが話題になって居るが、そもそもFX取引では、金利に相当するスワップレートは年率で5%を超えていた。メガバンクの利上げはFXをやっている投資家からしたら「何を今更騒いでいるんだ??」という感じだ。

売から入れる

FXが外貨預金に比べて遥かに有利な点の一つが、売りから入れることだ。今は歴史的な円安局面だが、各国の金利瀬策次第では逆目の円高に振れる可能性もある。FXであれば、円高局面でも利益を上げることが可能だ。

税金は分離課税

FXの税金は外貨預金の総合課税と異なり分離課税で確定申告が必要だ。20.315%の税率で課税される。日経平均先物などのデリバティブ取引とは損益通算可能だが、株などの有価証券とは損益通算できない。この点は注意が必要だ。高額所得者には、分離課税が有利だが、住民税非課税世帯の場合には、健康保険の保険料に注意が必要なのは外貨預金と同じだ。

FXが嫌なら外貨MMF

FX以外の外貨運用の手段としては、外貨建てMMFがある。外貨建てMMFは投資信託の扱いとなるため、譲渡所得扱いで、申告分離課税だ。また株式との損益通算や繰り越しも利用できる。
金利も、ドルならFFレートなどの政策金利に連動している。銀行の外貨預金のように市場金利が5%越えの時に0.01%金利を付けないというボッタクリは、そもそもない。
また米国株や海外ETFなどに投資しているなら、外貨MMFのドルをそのまま決済に利用できる。
株式や投資信託を利用しているのなら、使い勝手のいい外貨MMFが外貨投資の正解だろう。
だたしFXと異なり購入時に外貨手数料が徴収される(通常は25銭の証券会社が多い)。頻繁に売買を繰り返す場合には、手数料分不利になる点は注意が必要だ。

国内キャピタルフライトの可能性

資産運用としては、さして魅力の薄い外貨預金だが。円で預金をしていた情弱の高齢者の多くが、今回の金利引上げを受けて外貨預金に取り組む可能性が高いのも、また事実だ。
現在、日本国内の個人金融資産は2000兆円を越える。そのうち約半分の1000兆円弱が円預金として銀行に預け入れられている。
例えばこのうち10%が高金利に惹かれて外貨預金となった場合には100兆円単位のドル買いが生じることになる。もちろん外為市場は超巨大なため、この程度のドル買いは吸収可能だが、それでも大きなドル高要因になることは間違いない。
またこの預金は、国内のローンや融資の原資になっている資金だ。もし大規模なドル預金への流出が発生した場合には、国内で資金不足が発生して、最悪「貸し渋り」のような事態が生じかねない。
現在の物価高の状況で、この国内での資金不足が生じた場合には、「円金利の大幅な引き上げが必要」な事態になりかねない」。
これは一種の「国内キャピタルフライト」と言える状況だ。

日銀の無理な金融政策も限界か?

足元では大幅な円安と40年ぶりのインフレが発生している。
にも拘わらず、今のところ日銀は、植田新総裁になってからも現行の超々金融緩和政策を継続している。しかし、この三井住友による外貨預金金利引上げが切っ掛けとなり、20年続いた緩和政策が終焉を迎えることになるかもしれない。政府日銀にとってもこの展開は予想外だろう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?