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「間奏曲」の作曲⑤ 命名と第二部前半

命名

 絶対音楽として命名を避け、曲の種別であるINTERMEZZO(間奏曲)で通そうかと思っていましたが、かねてより好きな詩があり、今私が感じている心持ちと同じだな、それが曲に反映されているな、と気付き、素直に名付けることにしました。曲名は…

INTERMEZZO
"Über den Bergen"

です。
 Über den Bergenは、所謂カール・ブッセの詩、すなわち「山のあなた」上田敏訳詩(海潮音)ですね。

 日本語では、

インテルメッツォ
「ウーバー・デン・ベルゲン」

或いは、

間奏曲「山の彼方(あなた)」

ということになりましょうか。

 参考までに、この項の最後にドイツ語の原詩と、上田敏による素晴らしい日本語訳を記載しようと思います。
 おそらく、どこかで読まれた方が多いかもしれません。

第一部の完成

 前回は第一主題の終止まででしたが、それに結尾句を付け第一部としました。結尾句…コデッタ…小さなコーダという意味ですね。

 8小節間続き、変イ長調であることを定着させて終わります。

第二部前半

 第二部は変イ長調の下属調である変ニ長調で始まります。ここで出てくるフレーズは、第一部で使われたものがほとんどです。すなわち、展開部とすることもできるでしょう。
 イタリア語で、“fresco, pero poco triste” と指定しました。「清々(すがすが)しく、しかし少し悲しく」という意味を持たせています。

第一部の下降するバスと主旋律の特徴的なリズムを利用しています。

 すぐに変ロ短調で対位法的フレーズが続きます。

対位法部分のフレーズは第一部最初の2~3小節の動機です。

 そして再び変ニ長調の第二部冒頭のフレーズが出てくるのですが、今度はト短調に移り、劇的に係留和音を経た後、増六の和音に到達したところで今回は終わりです。

 空の高みを疲れた心持で見上げる心境といいましょうか、いろいろご自由に想像していただけたらな、と思います。 

音源(Finaleのプレイバック)

Über den Bergen

         Carl Busse

Über den Bergen, weit zu wandern,
Sagen die Leute, wohnt das Glück.
Ach, und ich ging im Schwarme der andern,
Kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen, weit , weit drüben,
Sagen die Leute, wohnt das Glück...

山のあなた

    作:カール・ブッセ
    訳:上田敏 訳詩集『海潮音』より

山のあなたの空遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。
噫(ああ)、われひとゝ尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。

あとがき

 この回で5回目ですが、実は1~4回分の出来上がりの長さと、今回5回の長さはいっしょです。前回まで2分30秒のあたりまでを頑張っていたのですが、今回で5分を超えました。一気に進めてとてもよかったと思います。

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