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本嫌いが本を好きになる話

こんにちは、龍垣です。
クソ寒いし北陸の方はまだまだ地震が続いてて心配です。

さて、今日は本が大っ嫌いだった私が本を好きになる話をしましょう。
本が好きというだけで全くもって詳しいわけではありませんが、本嫌いだよ〜って人や、友だちが本嫌いで、、、という人、そうじゃない人、お付き合い下さいな。


なぜ嫌いだったのか

本嫌いがnoteにいるとは考えにくいですが、私もネットの記事を読むのは好きで、本は嫌いでした。


縦書き。どこまで読んだかを忘れさせる。
縦書き。文字の海に酔わせる。
縦書き。本デカいほど目を疲れさせる。


まあこういう肉体的にきちい部分もございますが、何より

本好きな奴ら、いけ好かない

とかいう理不尽な憎悪もあると思います。
(ボクはどっちもあったよ!)

本読んでない奴を見下し、それだけで頭悪い認定ですよ。
私は卒業論文を書いている時、書き終えた時でさえ本が大っ嫌いでした。(よく書けたね偉いね)


なんで好きになれたん


まず人間的な問題をクリアしましょう。
それは、

本好きな「友人」を見つける

こと。

はいこれめっちゃ大事。重要なのは本好きに話しかけて友人になるんじゃなくて、友人の中から本好きを見つけることです。
どのコンテンツにも言えますが、○○嫌いというより○○好きが嫌いという状態に陥っていること、多いんですね。
なので今いる友人になんとなく本が好きか聞いてみるとか、友達になったやつに聞いてみるとかしてみてください。
もしその人が本好きでも、それは「本好き」から放たれる言葉ではなく、「友人」から放たれる言葉となり、信用度が全然違います。人間バイアスを断ち切ることはクソ難しいですから、これかなり有効なんです。

それからどんな本が好きなのか聞いてみてください。
読んだことなくても気になるジャンル、嫌いなジャンル、あると思います。
それが自分の気になる、読んでみたい、読めるようになりたいジャンルであれば、おすすめを聞いてみましょう。初心者向けということをちゃんと強調して!!

それと間違いないのは、自分の好きな、本以外のコンテンツの雰囲気を伝えてみること。
本嫌いだけどマンガは好き、、、なんて人は好きなマンガを伝えてみると、そのルーツになるような傑作を教えて貰えることがあります。
映画もそう。原作が小説の名作映画なんて滅茶苦茶あります。
音楽でもいいでしょう。ミュージシャンの自伝本では本嫌いを突破できるとは言いづらいですが、音楽史とか、硬派な雑誌とか、好きな音楽が流行った時代を象徴した文学とか、入り口結構あります。

ネタバレを喰らっちまえ

日本の近代文学が気になるって人、いるよなあ!?
芥川とか、太宰とか、三島とか賢治とか、好きな友人や先輩、絶対います。見つけられます。
さっきのところで先輩を抜いたのは、先輩を尊敬していると、何かそれが高尚なものに思えてしまうからです。またまた本嫌いが加速しちゃいます。
ここでやって頂きたいのは一度、青空文庫で読んでみる、ではなく!!
もうネタバレをくらっちまえ、ということです。
どうせ読まねえくせに何をネタバレ気にしてんだと思うんですね。面白いかどうかわからない文を、長さも分からず読もうとする。これ変態の所業です。
それに日本人だから味わえる、深みのある日本語。これはネタバレできないです。作家にもよりけりですが、日本の作家は昔から現代まで、パンチライン大好きな人が多いですよ。
さて、一度ネタバレを食らうとしましょう。


「どんな話なん、それ?」
向こうが気を遣ってあらすじしか話してくれない時もあります。いい友人ですそいつは。でもここではそれを踏みにじりましょう。
あらすじだけ聞いたら全然おもんない傑作かなり多いです。(芥川の『藪の中』とか)


「ふーん、結局どうなるん?」
そもそもオチがない、というのが純文学には多いですが、雰囲気はなんとなく掴めます。ここでおもしろくなさそうであれば別のを聞いてみるべきですが、面白そうであれば、


「それ長い?短編?」
これ死ぬ程大事です。
途切れ途切れに消費するより、一気に見る方が面白いのは、この世のコンテンツの鉄則ですよね。
アニメ、マンガのイッキ見。最高。
音楽好きならアルバムを通して聴く達成感や快感を知っていると思います。
映画なんて向こう側からそうするように強要されてるようなもんです。

そのコンテンツの面白さを100%感じるには一気見がベストだと思うんですよね。(精神衛生上それが出来ないこともあるのわかる;;)

文学も当然そうなんです!
クッッソ長いドストエフスキーの『罪と罰』やらトルストイの『戦争と平和』やらを一気に読むことは難しいかもしれませんが、日本文学は短くて面白いものが多い作家、結構いるんです!
私なりのおすすめは最後に紹介いたします、、、


本屋に行ってみよう!

文学を読む想定の話が多くなりましたが、文学以外の本が苦手な方も、ここは参考になると思います。

本屋には我々が想定する以上のジャンルが用意されています。まずは歩き回って目をチラチラやってください。

...あ!まーた雑誌コーナーばっかり!それはナシね!!

満遍なく見て回りましょう!

すると気になる一冊が絶対出てきます。ご縁は動くものを好みますから。
それを手に取ってぱらぱら〜と見てみましょう、文字の隙間がギュウギュウなら縦書きアレルギー発動しやすいですが、意外と歳を重ねると、知らず知らずのうちに縦書きに触れてたりするもんです。縦書き嫌いなんてほとんどエレファント・シンドロームみたいなもんだと思うんですよね、漫画だって縦書きっちゃあ縦書きだし。

あ、エレファント・シンドロームってのは、
サーカスに使われるゾウさんをイメージしてみてください。子ゾウの時に連れてこられて、この子は鉄の鎖に繋がれます。どれだけ暴れてもこの鎖はちぎれませんでした。
すると、成長して大きくなっても、この鎖はちぎれないものだと決め込んでいるので逃げられないのです。
本当はそれが大人のゾウなら簡単にちぎれるものであったとしても。


話がそれましたが、要するに意外と縦書きアレルギー、治ってますよって言いたいんです。

それとその本を読んでいる自分や、この本が家にあることを想像してみてください。それがなんか面白かったり、しっくりきたり、お〜って思ったら買っちゃいましょう。

大事なのは一冊だけ。一冊だけ買うこと。

雑に本を買っても積ん読になるだけです。
愛せそうな一冊を買って、大事に大事に読んでください。

さて、それが文学以外の場合。

こちらもぱらぱらっと読んでみましょう。
こっちの方が好みかどうか、ぱらぱらが有効的ですね。
著者の日本語が自分に合ってたり、読みにくかったりがわかると思います。そこのマッチングが上手くいけば、

目次を読んでください!

これ超絶大事なことです。何かをまとめた本や、主張したいことがある本、お話以外の全てのジャンルにおいて目次が重要でない本はありません。
目次は、めっちゃ丁寧な予告編であり、倍速で全編見てるようなもんなんです。
ここを読んで、おもろそうなことばっかり書いてる!なやつを買いましょう。
日本語って1000種類あんねん。でもその相性はチェック済み、間違いないです。


おすすめ

さて、最後に本嫌いの私が本や文学を好きになれた神作品を2つだけ紹介させてください。


江戸川乱歩/人間椅子(1925)

龍垣は『名探偵コナン』のアンチですが、
江戸川乱歩、最高です。
彼は推理小説だけでなく、怪奇小説と呼ばれる気持ちの悪いものを描くことでも有名です。           僕は未だに推理小説は嫌いなので、彼の推理小説は読みませんが、江戸川乱歩の怪奇小説はかなり好きです。

まず何より短い!
そして日本語がわかりやすい!!

気持ち悪いこと書いてんのに読みやすいったらありゃしないですよ。ほんとに凄い。

『人間椅子』は椅子を愛撫する椅子職人の変態が、椅子の中に入って椅子となり、色んな人の座られ心地のレビューを主人公である金持ちの奥様に手紙で伝えてくるというスタイルになってます。        
そしてあなたの旦那さんが私を落札してくれ  た、あなたに恋をした、あなたに最高の安らぎを与える為に皮越しにマッサージもしたとか激キモ告白が止まりません。
そして最後、これはぜーんぶ僕が書いた小説の内容だったんですー!どうでした!?面白かったですかー!?みたいな内容で手紙を締めくくり、奥様は戦慄する、という内容です。

この最後が嘘か本当かわからない系、龍垣大好物なんです。

怪奇小説における江戸川乱歩の凄みはやはり変態の写実的な描写です。

ありえない状況なのに画が浮かぶし、理解したくもない変態共の気持ちを少し理解出来てしまうんですよ。

私の江戸川乱歩の入り口は『人間椅子』でしたが、この路線の最高傑作だと思うのは『芋虫』(1929)です。前者は青空文庫で読めますが、『芋虫』は青空文庫で読むことができません。
しかし、『人間椅子』を気に入って頂けたら、絶対に読むべきだと思います。
気持ち悪さも変態度もワイルド・スピードMEGA MAXなのですが、なんとこの作品は戦争批判や尊厳と愛の形など、面白さが多面的です。キモいプレイずっと見せられてるのになんか切なくて、最後泣いちゃいそうになるなんて、ね、おもろいじゃないですか。


変身/カフカ(1915)

続いては世界文学からのチョイスですね。すみませんこちらもキモい作品です。こればかりは好みなもので、、、ごめんなさい、、、

『変身』はかなり有名なので、話だけ知ってるという方も多いでしょう。
ある朝目が覚めるとザムザという男はゴキブリとムカデを合わせたような、サイズは人間のまま虫になっていた。というところまでがよく知られているところですよね。
 この話、とんでもないところに着地するんです。
虫になったザムザは喋ることもろくに叶いませんが、それまで父と母と妹の家計を支えてきた恩もあってか、「兄さん」と慕う妹から世話をしてもらえます。しかし自分の見た目が気持ち悪いことを知っているので、ご飯や掃除の時間にはベッドの下に隠れるという人としての尊厳を忘れないザムザ。
次第に家計は苦しくなり、家族に心の余裕がなくなってくると、ザムザのせいで起こったトラブルによって、間借りしていた男達が出て行ってしまいます。とうとう一番気にかけてくれた妹は家族に

アレを「兄さん」と呼ぶのはもう辞めよう。おかしいよこんなの。

と発言。人間なら美しく見えるはずの兄から妹への抱擁とキスも、あの姿であることを考えると背筋が凍ります。
扱いは粗末になっていき、衰弱していくザムザ。最期は誰にも看取られず、その遺骸を適当掃除され、そのことをお手伝いさんが家族に報告すると、嫌そうな顔をして、帰るよう促されます。
久しぶりの休暇を取った3人は電車に乗ってお出かけに行き、両親は妹が成長して女になりつつあることに気づくと、そこに未来への希望を見出して、終わる。という内容です。

ヤバくないですかコレ。
激震が走りましたね。物知らずでよかった、俺はツイてるって思いましたよ。
この小説を通して考えさせられるのは障がい者の気持ち。その家族の気持ち。脳死と介護。のような部分もあれば、変身した人間は、果たして中身までも変身せずにいられるか、という話でもあります。
こちらも多面的な面白さ満載です。しかも短いので、一日あれば確実に読めます。
後味はちゃんと悪く、悲しいような、虚しいような、めっちゃフィクションなのに、ノンフィクションよりも現実を叩きつけられているような、この作品でしか味わえない感情があります。

「不条理」を描く代表的な作家として有名なカフカ。どこか現代の日本人にも刺さる内容だと思います。


さて、いかがでしたでしょうか。
短いnoteを書く癖を付けていきたいとこですね。今度はテーマをもっと軽くして、日記みたいなものを書いてみたいです。

本が嫌いな方。ちょっとは考え直してくれたかな。

本が大好きな方。あなたは恵まれてますよ。
嫌いな方だってそうなんです。

無関心が、大好きの対義語ですから。

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