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The Doors 全アルバムレビュー!

週6労働がエグすぎて先週はおやすみしてました。腹痛ついでにダイエット中の龍垣です。

さて、今回で全アルバムレビューは第5弾。
前回はピンク・レディーを取り上げたのですが、やはりアルバム単位の芸術はバンドだろってことで、ロックバンドにただいまします。

QUEEN以降ボリューミーなレビューになりがちだったので、今回はコンパクトを心がけてみようかなと思います。
そして今回は聴くのにおすすめの季節や時間帯も書いてみました。もちろんこんなもの私の主観でしかないので、各々のベストコンディションがあればそれも凄く素敵だと思います。

久しぶりの独自の採点基準として、

サイケ度
(どれだけ幻想的か、芸術的か)

ポップ度
(メロディのキャッチーさ、とっつきやすさ)

ブルース度
(どれだけブルージーか)

ロック度
(ロックをどれだけできているか)

クオリティ(アルバムとしての質)

の5つを基本星5つで評価していきます!例の如く少数点は✮で!
いくぜ!!(ジム・モリソン死亡以降のアルバムは除く)


ドアーズの魅力

まずは皆の衆ドアーズ聴いとるかね。
日本人に人気かどうか私の中で定かではないのだが、一応聴いたことない人もいるかもなのでザックリ良さをつらつらと。

1965年結成。

左からジム・モリソン(Vo)、ジョン・デンズモア(Dr)、下段がロビー・クリーガー(Gt)、上段がレイ・マンザレク(Key)。

ではその順に紹介していこう。

ジム・モリソンはハイトーンや音域を楽しむボーカルではなく、ボーカルセンスを楽しむべきタイプ。感情の波の表現、語りとメロディの微妙なせめぎ合いなどが絶品。
そして何より優れているのが作詞能力。メロディに反さない歌詞をハメられるのはもちろん、彼の描く混沌として破滅的な美しい世界を味わって欲しい。私も英語がネイティブだったならもっと味わえるのに!とこの男とボブ・ディランに対しては日々感じている。

ドラムスのジョン・デンズモアはピンク・フロイドのニック・メイスンのようなセンス系のドラマー。引くところはおとなしく、気持ちいいフィルをちょうどいい量提供してくれる。かといってまったく地味ではない。ちゃんと華やか。その素晴らしさは聴けばわかる。
現代の歌モノバンドのドラマーもかくあるべきだと思うのだが、まあ、アイデンティティがパンク(笑)なら厳しいか、、、。

ギターのロビー・クリーガーはフラメンコギター出身とかいう珍味で、そもそもこの時代ロック出身のミュージシャンなどいないのだが、ブルージーなことをやらせてもロックをやらせても変なことやらせても超一流。
一応サイケデリック・ロックのバンドではあるので、その一端を担う際に東洋的なフレーズを弾くことがあるのだが、フラメンコをやっていただけあって他のサイケバンドとはどこか説得力が違う。ガチのエスニックな雰囲気をしっかりロックとして感じられる。


キーボードのレイ・マンザレクは正しくサウンドの要。ベースの役割もするし、前に飛び出してきてリードの役割もするし、世界観を形作るサウンドエフェクト的な役割もしている。そしてそれらは全て独特で、音色もフレーズもダサさキワキワの瞬間があったり、芸術的だったり、とにかくアーティストとして優れている。ジャズもキーボードも嫌いだった私をこの人は大好きだと唸らせたジャズ出身キーボーディスト。

そして全員の魅力、さしずめドアーズの魅力とはそのアンサンブルだと言って過言では無い。
全員が引き算をできるし、足し算もできる。そして重厚な掛け算も演奏してみせるのだ。
一つの素晴らしい楽曲を織り成すためにそれらをわきまえている匠の技がッ!一貫したドアーズの素晴らしさ、普遍的な価値を生み出しているッ!


1.『The Doors』(1967)

いつ見てもヤバいジャケ。
名邦題、『ハートに火をつけて』。


69年に並んでロック史に名を刻むアルバムが連発される大事件が起こった1967年。
その筆頭格に挙がる歴史的大名盤のファーストアルバム。
捨て曲などもちろんなく、曲順もたまらない。
さらに全11曲の44分とちょうど良い長さで、アルバム体験のデビューにも、うってつけだ。

とてもロックバンドのアルバムの始まりとは思えない1曲目のドラムイントロからバラエティ豊かに短い曲が続き、スネア1発で代表曲“Light My Fire” (ハートに火をつけて)に突入。催眠作用さえ覚える変態的イントロに野性的なインプロヴィゼーション(即興演奏)。ロックの最大風速の一つだろう。プログレでもないのに代表曲の音源7分超え。

そしてレコードで言うB面一発目の7曲目“Back Door Man” のスロースターター感もトビそうになるくらい気持ちいい。そしてここからの流れに共通しているのはどこか不穏さがあるのだ。特にラスト直前の10曲目“Take It As It Comes” なんかは躁状態の焦りのようなものさえ感じさせる。
その緊張は芸術的マスターピース“The End”でゆるやかに爆発していき、文字通り終わりを告げる。

ビートルズの“Lucy In The Sky With Diamonds”がサイケデリアの極彩色の「陽」だとしたら、ドアーズの“The End”はサイケの暗黒の「陰」だろう。編曲も頭おかしく、全楽器隊が狂気的で、東洋的なパッケージングをされてはいるものの、アヴァンギャルドでない無秩序に、聴く者は圧倒される。

親父を殺して母親とヤリたい。

歌詞までどうかしている。
約12分の凝縮された「何か」にあなたも狂って欲しい。

レコードで聴くとA面とB面の終わりが長めの曲になっていて大変気持ちがいいので、可能ならばレコードでの体験もオススメする。
真夏の真夜中に聴いて頂きたい一枚。

サイケ度★★★★☆
ポップ度★★★★☆
ブルース度★☆☆☆☆
ロック度★★★★★
クオリティ★★★★★★★(こんなもん5で済む訳ねェだろバカが!)


2.『Strange Days』(1967)

まったく意味不明のジャケット。
邦題『まぼろしの世界』

ファーストアルバムと並んで人気の高い二枚目。前作は生々しい魅力があったのだが、こちらはよりサイケデリックに仕上がっており、幻想的だったり良い意味でヘンテコな瞬間が多かったりする。捨て曲なんぞ勿論ないのだが、この本格的なサイケデリアは聴く人を選びそうだ。
ジャケットの色合いの如く全体的にダウナーさや湿り気があり、ブリティッシュな瞬間もちらほら。

曲単位で特筆すべきはまず、
7曲目“People Are Strange” 。
確かにサイケなのに冷静で、前作より洗練されたポップさに指を鳴らしたくなる。

そしてこのアルバム唯一の大作、11分ある“When The Music's Over” には、やはり触れざるを得ない。
同じくアルバムの幕を引く“The End”と比較してみると、全パートがより音楽的に洗練され、「楽曲」に近付いたことがわかる。こちらの方が好きな人もいることだろう。

Music is your only only friend
Until the end
Until the end
Until the end

という歌詞で終わるのも感慨深い。“The End” に比べて面白いのは静と動の振れ幅である。より音楽的になったことで、ある種迫力は増していると言えるかもしれない。
最後の語りがOK,Let's do one moでブツッと切れて終わることは何を意味するのだろうか。こちらも紛うことなき本物の芸術だ。

サイケや湿ったロックが好きなら絶対必聴のアルバム。
雨の日や陰鬱な午後に聴いて頂きたい。

サイケ度★★★★★
ポップ度★★☆☆☆
ブルース度★☆☆☆☆
ロック度★★★☆☆
クオリティ★★★★★


3.『Waiting For The Sun』(1968)

随分と普通のジャケになった。
邦題『太陽を待ちながら』

ジャケットが普通になっても音楽的な攻めは健在で、不協和音が鳴っている箇所がちょくちょくあったり、歪な三拍子や面白いサウンドエフェクトも。

そして映画栄えしそうな楽曲が多く(実際ドアーズの映画でも印象的に使われていた)、
様々な種類のポップさを味わえる面白い一枚。
もちろんこの豊かなバラエティにロックもちゃんと含まれており、それがこのアルバムっぽい形で表出したのが1曲目の“Hello, I Love You” で、比較的ストレートにかっこいい形なのがラストに置かれている“Five To One” だろう。

捨て曲はと聞かれれば、バラエティが豊か過ぎて人の好みが如実に出る故なんとも言えないと答えてしまう。が、このアルバムは絶対に貴方のお気に入りの一曲を見つけられると確信を持って言える。
季節を問わず夕方や早朝に聴いて欲しい不思議な一枚。

サイケ度★★★☆☆
ポップ度★★★★★
ブルース度★★★☆☆
ロック度★★☆☆☆
クオリティ★★★✮☆


4.『The Soft Parade』(1969)

遠い。なんか悪い予感のするジャケット。

それだけで1本の記事にしたくらい全てのロックが爆発した黄金の1969年、

ドアーズはなんと賛否両論の問題作を投下した。なんともドアーズらしいじゃないか。

さて、私は賛否どちら側なのかと言うと、ついこの前まで圧倒的否定側だった。とにかくホーンセクションとドアーズの楽器隊(ドラム以外)の相性が悪くてダッセェ〜!!だったのだが、
この間久しぶりに聴き直した所、1、2曲目が私にとっておっさんピンク・レディーって感じでダサいだけで、それ以降の楽曲はなんと普通にかっこよかったのだ。

前作同様バラエティが豊か過ぎる故に生じてしまったダサい(言い切らせてくれ頼む)一面が冒頭にあるだけで、それ以降は真面目にサイケデリック・ロックをやってたり、面白いカントリーがあったり、7曲目“Runnin' Blue” のホーンセクションなんかは普通にめちゃかっこいい。

さらにさらにラストの表題曲が9分半あり、セカンドぶりの大作エンド。今までの大作とは違うアプローチで、プログレも勃興したこの時代に相応しい起伏のある展開を見せてくれる。プログレ好きなら絶対楽しめるはず。

そして恐らくこのアルバムが駄作扱いされているのは歌詞の影響がデカいのではないかと私は踏んでいる。というのも、このアルバムのジム・モリソンの作詞能力は一周まわってしまったのか、なんかめちゃくちゃ浅く感じるのだ。しかし幸か不幸か英語のネイティヴでない我々はそんなことぜ〜んぜん気にならない。
詩人としてのジム・モリソンを期待していた人間にとって駄作と言うならわからんでもないが、このアルバムが実は一番好きという日本人がいても全くおかしいとは思わない。

これが名盤なんて口が裂けても言えないが、
ここまでドアーズを聴いてきて好きになってくれたら絶対に聴くべきアルバムだ。
よく晴れた昼に聴いて頂きたい一枚。

サイケ度★★★☆☆
ポップ度★★★☆☆
ブルース度★★☆☆☆
ロック度★★★☆☆
クオリティ★★★☆☆


5.『Morrison Hotel』(1970)

良い意味でアメリカン。ジャケも中身も。

普通のことをやろうとしても出来ないバンド、ドアーズ。ブルースロックへ。
とにかく明るいドアーズ。
え、あのダークさが好きだったのに…HEY!!!!!
安心してください!
ストーンズみたいな土臭いロックンロールを楽しめる人なら確定で大好きになる上、それがツボな人ならこれをフェイバリットに挙げること間違いなしの傑作。私的には2枚目と張るくらい。

比重的にそれまでより少しキーボードよりギターが前面に出てくる感じで、ロビーのギタリストとしての非凡さをよく再確認できる。

頭から4曲目まではファーストぶりの神曲の連続だと個人的に思っているし、3曲目“You Make Me Real”のドラミングは私の中でジョン・デンズモアの揺るがぬベストプレイで、
4曲目の“Peace Frog” なんかは曲単位ならドアーズの中でトップクラスに大好き。
9曲目“Indian Summer” ではなんと久しぶりにチルいドアーズを楽しめる。

大作がないのがこのアルバムに心地良いリズムを生んでおり、変態的な瞬間を交えながら失速することなくラストまで楽しく駆け抜けていく最高のロックンロールアルバム。
初夏の朝や春風の吹く昼下がりに聴いて欲しい一枚。

サイケ度★☆☆☆☆
ポップ度★★★★☆
ブルース度★★★★☆
ロック度★★★★★
クオリティ★★★★★


6.『L.A.Woman』(1971)

ちょっと?一番右の方はどちら様?
何やそのわかりやすいやつれ方!!
もう!大好き!

このアルバムを最後にジム・モリソンが死亡するので、私の中で実質的に最後の一枚。

前作同様ブルースロックなのだが、より土臭くなり、カラッと乾いていた『Morrison Hotel』とは対になるイメージ。
元から得意だった湿り気も足され、初期とは打って変わってギターが全体的に目立つポジションを担当しているが、その時のレイのキーボードの縁の下の力持ちっぷりには感服する。
いなくていい存在に絶対ならないのが引き算の匠のすげぇ所。
ファースト、セカンドと並んでファンの評価が高いアルバムになるのも頷ける。
そういえばその二枚と同じくA面ラスト、B面ラストが長めの曲になっている!粋だ。

そしてこの頃になるとジム・モリソンがやつれ過ぎてファーストの頃のような美しい声を出すことが出来ず、それが良い渋味になっている。自分の変化を退化にせず武器にする。
かっけえなオイ。全く、見習いたいものだ。
ロビーのスライドギターの上手さにはえげつないものがあるし、ジョンのドラムは力強かったり枯れてみたりでブルースロックを味わい深くしており、レイは相変わらずキャッチーで変。

そしてこの方向性でも大作を作れると示す。
もちろん、ラストに。
レイのキーボードが世界観を引っ張っていく、
傑作と名高い“Riders On The Storm” だ。
冒頭から全体を通して雨音や雷鳴がしており、ルーツ的なロックの中でこんな事をやってのけるのはドアーズくらいのものだろう。
雨の日や静かな夜に聴いて欲しい一枚に仕上がっている。

方向性を変え、レコーディングするのがギリギリなぐらいボロボロになっても、
最後にまた彼らは僕たちに幻想を見せてくれた。
ドアーズはいつも、誰も知らない音楽の知覚の扉を開けて待っている。

サイケ度★★☆☆☆
ポップ度★★★☆☆
ブルース度★★★★★
ロック度★★★★☆
クオリティ★★★★☆


ということで、いかがでしたか?
6枚とも全部違う色なのをアピールしたかったのですが、伝わりましたかね、、、?
スマートを心掛けましたが、読みやすかったでしょうか、、、?

でもそんな事よりとにかく私は貴方にドアーズを聴いて欲しいのです。

QUEENがハードロックの特異点なら、
The Doorsはサイケデリック・ロックの特異点と言うべきでしょう。
どちらもそのジャンルの中に似ているバンドが見当たりません。
つまり聴く価値しかないと言いたいのです。

次あたりツェッペリンでもやろっかな〜。
ドアーズがあなたの季節とともにあることを願って。じゃね。

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