見出し画像

#16 冬の山形を巡る-雪に覆われた羽黒山と立石寺-

 冬の山形。

 ほとんどが白と黒の世界。
 
 道路を車で走っても見えるのは空との境目がわからなくなる雪の壁ばかり

 一種の不安を覚えさえしました。

 
 そんな中、羽黒山に到着。

 いざ山中へ。


 お堂も雪に隠れそう!


木が高くなり、曇りのせいもあってか、まだお昼なのにかなり薄暗いです。

積もった雪も深く、道が見えないので常に不安感を抱きながら進みます。



 しばらく進むと建造物が視界に入りました。

 ギュッ。ギュッ。ザッ。ザッ。

 慣れない雪を踏み、少しずつ進むと。


 なんと壮麗な建造物でしょうか!!

 林立する巨大な樹木の隙間で、力強く立っています。

 羽黒山は「生まれ変わりのはじまり」の場所だと言われています。

 修験道になっていますが、江戸時代にはすでに信仰の対象になっていたといいます。

 混乱する世の中で、人々は不安で不安で仕方なかったのだと思います。

 そんな中、雪山でこんな姿を見たらきっと「今を強く生きよう」という気になれたのかもしれません。

 ここが「現在の世を現す山」といわれる由縁がなんとなくわかった気がしました。

 なお、出羽三山のHPでは夏の青々とした様子が映し出されていたので、今度はその季節に再訪したい気持ちになりました!!


 再び雪の壁をくぐり抜けて、向かったのは立石寺(山寺)。


 周知のように、『奥の細道』で芭蕉さんが訪れたところです。

 『奥の細道』には、ここを訪れた際にこんなことを書いています。

山形領に立石寺といふ山寺あり。
慈覚大師の開基にして、ことに清閑の地なり。
一見すべきよし、人々の勧むるによりて、尾花沢よりとつて返し、その間七里ばかりなり。

日いまだ暮れず。
ふもとの坊に宿借りおきて、山上の堂に登る。
岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音聞こえず。
岸を巡り、岩をはひて、仏閣を拝し、佳景寂寞として心澄みゆくのみ覚ゆ。

閑かさや岩にしみ入る蝉の声

松尾芭蕉『奥の細道』岩波文庫より
閑かさや岩にしみ入る蝉の声

 山寺の岩は蝉の声を跳ね返しません。
 
 あの騒がしい蝉の鳴き声を受け止め、沁みこませてくれるのです。

 と、かっこつけて表現しましたが、私が訪れたのは冬なので、
 当然セミたちは眠りについています。

 ただ、芭蕉さんが言われていたように、
 すばらしい景色はひっそりと静まっていて、
 心が澄んでいくのは感じられました。 

 これについては夏でも冬でも変わらないのですね。



 崖に立つお堂は水墨画の世界観が現前したかのようです。


 山寺の眼下を展望します。

 やはり、ここでも白と黒の世界。
 
 他の色を思い出せないくらい、別空間に行った気分。



 山形は完全に初めてです。
 
 しかも雪の降る時期であったため、それ以外の季節をまだ知りません。

 また必ず行きます。

この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?