見出し画像

読書|上田岳弘「K+ICO(ケープラスイコ)」

単行本:152ページ
読了までにかかった時間:80分

どろどろした醜くて汚いもので満たされているんだ。それで、いつもそこから目をそらしているんだ。私は、ずるくて、汚い人間だから。だからね、夢というと大げさだけど、どういう感じになりたいかといえば、まともになりたい。

上田岳弘「K+ICO(ケープラスイコ)」

聖人君子は別だけれども、誰もが自分の中にひそかに抱えている願望なんじゃないかと思った一節。

ウーバー配達員のK、TikTokerの女子大生ICO、親の期待に応えられない幼いk。交わることのなかったはずのそれぞれが、デリバリーを機に接点を持ち、誰かと繋がっていたいと願う。

淡々と描写される配達員から見た東京の道が、余計に彼らの孤独を浮き上がらせ優しさを際立たせる。

時代(世代)への痛烈な批判もあり、作家と同じ時代を生きてきたことをありありと感じられる。

テンポよく進むストーリーを楽しむことができるのはもちろん、自分の中の無意識を見透かされているようで、共感を覚えるとともに痛いところをついてくる作品。

特に同世代(アラフォー)の方々にぜひおすすめしたい。


上田岳弘「K+ICO(ケープラスイコ)」
文藝春秋 2024年2月9日発売

この記事が参加している募集

読書感想文

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!