読書記録『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

「悩み相談を請け負っていた雑貨店」。
あらすじのこの部分に強く興味を惹かれて読んでみようと思った。

人間だれしも大なり小なり様々な悩みを抱えて生きている。
その悩みを自力で解決する人もいれば、
人に話すことでスッキリする人、
お金で解決しようとする人、
他人にすがって巻き込もうとする人・・・
悩みとの向き合い方は人それぞれだ。

そんな様々な悩み相談に答える「ナミヤ雑貨店」。
寄せられる悩みのほとんどは正解のないものである。
雑貨店の店主はその悩み事に対して真摯に向き合い、相談主がどうすればよいかを必死に考えて返事を書く。

この物語で深く納得できたのが、「悩み事を人に相談するときには、すでに自分の中で答えが決まっている」ということだ。
自分の中で決めた道を、誰かに肯定してもらいたい。
それが正解だと後押ししてもらいたい。
そこには、「悩み相談」という言葉の意味とは裏腹に「最終確認」のようなニュアンスが含まれているということに気づかされた。

しかしながら、その相談がただの「肯定」で終わることは決してない。
回答者から受けるアドバイスが「肯定」だろうが「否定」だろうが、相談したことによって必ず何らかの心境の変化が生まれ、その後の相談主の人生が新たな展開へと進んでいく。

物語上ではそこに「タイムパラドックス」的な要素が加わってフィクション的な盛り上がりを見せるものの、この「相談することで状況が変化していく」という展開は現実世界でもあり得る話なのではないか。
いやむしろ、そちらが「必然」といっても過言ではないのだろう。

自分一人で悩んでいることでも、様々な人に相談して色々な立場からアドバイスを受けることで、新たな解決策が出てくるかもしれない。
この本を読んで、他人に相談し意見を求めるのは自分の人生を良い方向へ導いてくれることを再認識した。

しかし同時に、「最終的に決断して行動するのは他でもない自分」だということも改めて教えてくれた。
そして「回答者のアドバイス」や「相談主の決断と行動」よりも大事なことは、「自分の決断と行動を正解にしていくこと」なのだと思い知らされた。
「アドバイス」も「決断」も「行動」も、あくまで長い人生の中の小さな一つの「点」にすぎない。この点をどうつなぎ合わせて、より良い1つの線=人生にしていくかが重要だ。
「人を頼る」気持ちも、「自分を信じる」気持ちも、両方を強く持ち合わせて生きていきたいと感じた。

最後に、悩み相談に真摯に向き合うことは「自分以外の人生をも生きている」ようだなと感じた。
人間関係が希薄になりつつある現代。自分の悩みを打ち明けるのも、人の悩みを聞くのもしんどいと感じてしまうことも多い。
しかし、悩み相談とは私たちの人生を豊かにしてくれる有意義なコミュニケーションだ。
互いの悩みを共有し、一緒に悩みぬくことで、大切な人の力になっていきたいなと強く感じた。

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