うなぎと参鶏湯
今年の夏は暑い。
暑い時に食べたくなるもの、それはうなぎだ。
職場でうなぎの話に花を咲かせていたら、韓国人エンジニアのYさんがポツリと言った。
「参鶏湯食べたいです」
聞けば韓国では、夏の暑い時に精をつけるための食べ物と言えば参鶏湯で、日本人にとってのうなぎと同じようなものらしい。
Yさんはもう2年以上も帰国できておらず、母国の味恋しさで、ついに会社の寮で韓国料理を作りだしていた。
そんなYさんは当然、韓国料理の味にうるさく、韓国料理店に行っては「違う」「あまりおいしくない」を連発していたのだが、ついに口に合うお店を見つけた。
Yさんが前日に予約してくれた「ヨギヨ」の参鶏湯はやさしい味だった。
体が弱っている時にでも、食べられそうなくらいだ。
「韓国にはうるしの参鶏湯もあります。かゆみが出ることもあるので、食べる前には薬を飲みます」とYさんはスマホで黒い参鶏湯のような写真を見せてくれた。
「食べる前に薬を飲むの? 何でそこまでして食べるの?」
「体にいいから」
「・・・・・」
「強烈だね」
Yさんと仲がいいMさん(日本人)の一言で、この話は締めくくられた。
Yさんはお父さんの東京赴任の為、小学校3年から5年間を日本で過ごした。
その後、韓国へ帰り、上智大学入学のため再び東京に戻った経歴を持つ。
大学在学中に韓国男子の義務である兵役2年も勤めた。ジャングル(韓国のジャングルってどこ?)で1週間過ごした訓練を、あれは地獄でしたと淡々と話すYさん。都会的でスマートなYさんからはあまりにかけ離れた話だ。
韓国男性の悲哀
わたしとMさんで焼酎を1本空けた頃(Yさんは焼酎を飲まない、なんで?)、Yさんの親しい友人が離婚した話題になった。
結婚式に出席するために帰国してまで祝ったのに、半年で離婚となったらしい。お相手が婚家との家族付き合いを一切拒否したのがその理由(あくまで男性側の話)だそう。
「結婚前に同棲するのもありだよね。価値観が分かるし。」
「韓国で結婚前の同棲はありえません。」
わたしの親世代(団塊の世代)の感覚が、現在の韓国ではまだあるようだ。
「結婚するのに家を準備するのは男性です。女性にお金を出してもらうことはありません。今、ソウルで家を借りることは本当に大変です」
男たるもの、の価値観が今なお色濃く残る韓国。
Yさんが日本で生活を続けるわけが、少し分かるような気がした。
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