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【日アニおしごと図鑑 Vol.3】仕事の幅が広すぎて一言では説明できない!?企画から放送までアニメの全工程を見守るプロデューサーのお仕事

カーディガンを背中に羽織って、業界人っぽい雰囲気が強い。プロデューサーにそんなイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。テレビのイメージが強いプロデューサーですが、アニメ制作でもプロデューサーの方々が活躍しています。【日アニおしごと図鑑】の第三回では、プロデューサーの出久根かすみさんにお話を聞きました。

メディア部 プロデューサー 出久根かすみさん(2019年12月入社)

【仕事内容】

〇仕事内容を教えてください

出久根:
新作アニメの企画が主な仕事です。人気のある作品の傾向などを調べて次にヒットする作品を予想し、その中から日本アニメーションらしいファミリー向けのテーマを選んで企画を提案しています。私はビジネス面のプロデュースを担当しており、制作のプロデューサーと連携を取りながら仕事をしています。

提案する作品は、大きく分けると原作がある作品とオリジナル作品の2種類。個人的には原作がある作品の方がやりやすいです。ある程度はファンの方の人数や熱量が見えているので、“この作品の魅力を映像としてファンの方に伝えることで、ビジネス的にもこうやって成功できます!”っていう目論見を入れた企画書を作ります。オリジナル作品は縛りがない分、足がかりもないので、ゼロから考えて企画を練り上げます。

企画が出来上がったら、製作委員会を組成するために色々な会社に提案していきます。私が所属しているメディア部の企画では幹事を担当することが多いので、製作委員会の運営や資料作成、配分等の事務作業はもちろん、シナリオ会議、アフレコ、V編※1等のアニメ制作でメインとなる場面に立ち合い、出版社(原作者)とのやりとりやアニメのクオリティ管理もしています。

※1 V編…スタジオに入っての映像編集作業

〇企画から放送までの全工程に関わっていて、仕事の幅が広いですね。

出久根:
そうですね、アニメ作り全体にちょこちょこ顔を出して、裏で何かやってる人たち、みたいな仕事です。作品によっては宣伝会社とのやりとりもしていて、PR方針も決めています。最近の作品だとキャッチコピーも考えました。

アニメスタッフと原作者はお互いにこだわりを持っているので、直接やりとりをすると衝突してしまうことも多いです。だから間に入って、それぞれの意見を取りまとめ、作品にとって良い落としどころを探ります。あとはロケハン※2に行ったりもしますよ。

※2 ロケハン…ロケーション・ハンティングの略で、テレビや映画の撮影場所を探す作業。アニメ制作では、実際に現地を見ることでイメージを膨らませたり、実在の街を登場させることもある

〇部署名だけだと何している部署なのかわかりにくいですが、実際に仕事の幅が広くて、一言じゃ片づけられないですね。

出久根:
何してるのって質問に答えるのが一番難しいと思っていて。(笑)謎な部署って感じです。

〇ロケハンにも参加されるのですね。

出久根:
基本的にはビジネス面のプロデュースがメインなのですが、製作委員会の幹事かつ制作部門を持っている会社なので、制作の管理も必要になってきます。進捗を確認して遅れを防いだり、映像を見て修正の依頼をしたり。制作のプロデューサーと連携しながら二人三脚でやっていく感じです。

【これまでの経歴】

〇日本アニメーションに入社する前はどんなお仕事をされていたのですか?

出久根:
日本アニメーションは3社目で、前職もアニメ関連の仕事をしていました。1社目はアニメの制作会社で制作進行※3を、2社目はアニメのプロデュースをしている会社でアシスタントプロデューサーをしていました。

※3 制作進行のお仕事は【日アニおしごと図鑑 Vol.2】へ!
https://note.com/nichiani_koho/n/nbeea46961a20?magazine_key=mfa189552d30e

1社目には6年ほど在籍。車でアニメーターさんのところまで行って素材を回収する車両班からスタートしました。家にいるかどうかを確認するためにメーターを見るとか、探偵ドラマみたいなこともしましたよ。(笑)車をひたすら飛ばし続ける下積みの1年を過ごした後に、制作としてアニメ作る仕事をして、最終的には制作進行・デスクの仕事をしました。そして、次のステップとして企画の方に。

〇以前から企画に興味があったんですか?

出久根:
いえ、企画をしたかったというよりは、純粋にモノを作る仕事がしたくて。両親もモノを作る仕事をしているのもあって漠然とものをつくりたいなと思っていました。アニメが好きっていうのもあったりして、アニメの世界に入りました。実は音響の学校出てるんですよ。でも制作の方がいいなと思って。スタジオ周りの仕事を覚えて、さらに違うフィールドの仕事に挑戦してみたくなったのでビジネス面のプロデューサーになりました。

〇アニメはずっと好きだったんですか?

出久根:
そうですね。ずっとドラえもんが好きで。子どものころから。それで子ども向けのアニメが作りたくて業界に入りました。

〇実際入ってみてアニメ業界はどうでした?

出久根:
1社目はアニメ業界の中でもハードな方だったので。(笑)でも、すごく成長できたと思います。あれがあったから今の自分があるなと思ってて。今思うと楽しかったと思ったりもするんですよね。お祭り騒ぎっていうか。文化祭の前夜がずっと続いてるみたいな。

〇みんなでするモノ作りはそんな感じになるかもしれませんね。日本アニメーションに入って変わったことはありますか?

出久根
変わりました!休める、眠れる!(笑)
それは冗談として、すごく思うのはコンテンツを持ってる会社はすごいなと。一つの案件に時間をかけられる余裕があるんですよね。一考するだけの体力がある会社はすごいなって思います。


【仕事へのこだわり】

〇仕事でこだわっていることはありますか?

出久根:
原作がある作品を扱うことが多いので、原作に対するリスペクトは絶対忘れないようにしています。原作って、ぽっと出て人気があるわけじゃなくて。先生と出版社が作り上げて、そこに少しずつファンがついて、応援されてっていう積み重ねがあっての人気原作なんです。それをお借りしているので、アニメが終わってお返しするときにマイナスにして返しちゃいけないと思っています。何かしらプラスにして戻したいなって。施策が作品にとって良いものになるかを考えて、実施するかどうかを上司と話し合っています。

〇話し合える環境があるのはいいですね!

出久根:
本当にありがたいです。やっぱり悩むことも多いので。

プロデューサーは、自分の中に芯がないといけない役割だと思っています。周りの人に色々やっていただく仕事なので、自分の中で考えがまとまっていないと、振り回すだけ振り回して正解が見えない状況に。以前はそういうことがあったりして、迷惑をかけてしまったこともありました。納得がいくまでとことん考えて、自分の中での正解にたどり着いてから人を巻き込まないと。アニメのかじ取り役として目指すものが明確にないと、選んだり、決めたりできないですしね。ヒットさせるために動けるのは自分なので、“この作品のいいところはどこだろう”とか“この作品を応援してきたファンの人たちが見たいのはどこだろう”とか、作品についてとことん考えて、それを形にしていけるのが面白いなって思っています。


【プロデューサーのやりがい】

やりがいを感じるのはどんな時ですか?

出久根:
放送された時や情報解禁した時です。お客さんの反応がダイレクトにわかるので、頑張ってきてよかったなって思うんですよね。

〇自分がやってきたことがみんなから評価されるとうれしいですよね。

出久根:
あとスタッフさんたち、特に現場の方々が頑張っているのを間近で見ているので、そういう方々が報われると嬉しいなって思います。

〇ビジネスプロデューサーだと、現場では応援することしかできないですもんね。

出久根:
そうです!現場の方々が本気で仕上げたものを、ヒットさせるのはプロデューサーの仕事なので。みんなの頑張りを無駄にしてはいけないというか。それが報われるとうれしいです。

【休日の過ごし方】

〇休日の過ごし方を教えてください。

出久根:
仕事っぽいことで言うと、アニメは割と見るようにしています。クールごとにPVとかオープニング・エンディング集とかは絶対見るようにしてて。あとは犬を連れてドッグランに行ったりしています。

〇PVなどを見るのは勉強のためですか?

出久根:
それもありますし、今期何をやっているかは把握しておきたいので。作品の内容、作風、スタジオとかはなるべく頭に入れておきたいなと思っています。

〇そして犬が好きなんですね。

出久根:
2匹飼っていまして。溺愛しているので一緒にいるところは誰にも見せられないです。(笑)

【読者へのメッセージ】

〇これからアニメ業界を目指す人たちに何かメッセージをお願いします。

出久根:
自分なりのこだわりは見つけておいたほうがいいと思います。こういう作品が好きっていうのでもいいですし。辛いことがあった時に踏ん張れるのは、やりたいこととか、目指すものがあるからなので。あと周りの人を大切に。アニメは1人では作れないので、周りの人を大事にしないといけません。うまくコミュニケーションをとる必要があるので、意識しておくとうまくやっていけるんじゃないかと思います。

聞き手:村岡 佑哉

©NIPPON ANIMATION CO., LTD.




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