止まった時間

さよならを告げることもなく
飛び去ったあなたの声が
今も胸の中にこだまして
悲しみの波がまた打ち寄せる

あの水面を揺らしたのは
とめどなく流れた涙
遅すぎた歌は届くこともなく
虚空に響くばかり

寒空の下ひとり砂浜を歩く
あなたと歩けなかったこの場所で
波打ち際にこぼれたのは
遠く離れたあの日の記憶

あなたを思い出す時
思い出の中の時間は
流れを失ったままだから
どうしても美しく見えてしまう

信じてもなかった永遠は
たしかに胸の奥底にあって
定期的にぼくはそこに飛び込んだ
少しでもあの面影に近づきたくて

あの日あの時あの瞬間に
たしかにあなたは生きていた
ぼくはそれをたしかめるように
今日も止まったままのあの日をたどる

(2023.12.4.14:08)