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【読書レビュー⑤】宮部みゆき「理由」

こんばんは。PisMaです。
本日も読んでいきたいと思います。

今回読み進めたのは
5章「病む女」
6章「逃げる家族」。

5.6章は「荒川の4人殺し事件」の鍵を握る人物たちの、細かな言動が開かれていくパートが続いていきます。

5章では東京都江戸川区春江町に店を構える「宝食堂」に住む宝井一家の話題。
父、母、長女、長男の構成で、長女の綾子はまだ赤子の息子・祐介を育てながら「宝食堂」を継ぐ身です。
長男・康隆の一人称視点で物語が進んでいくなか、康隆は姉が一日行方不明になったことをきっかけに、綾子の様子がおかしいと気づき始めます。帰ってきたと思ったら綾子は高熱で倒れ救急搬送。姉は元旦那とトラブルを抱える身でもあり、心配になった康隆は姉に「なぜこんなことになったのか」と尋ねると「もう死にたかった」と自暴自棄な返答とともにとんでもない言葉が返ってきます。

「荒川の4人殺しの犠牲者のうち、1人を殺害してしまった。他の3人はすでに殺されていてとても怖かった。」
康隆の姉・宝井綾子は人を殺してしまっていたのです。

6章「逃げる家族」では、謎に包まれていた三月以降の小糸一家の経緯が静子の口から語られます。小糸信治の妻・静子は、「派手好き」「女子学生のように泣き喚く」「よく激昂し怒る」という手がつけられないような人物という印象で前章では語られている人物です。
静子は気が強く被害者意識も強い人物ではありましたが、多方面から飛んでくるマスコミのバッシングや家族内の不仲に精神が摩耗した様がありありと描かれていました。人間みんな同じ状態になったらこうなるかと思えるような、様々な視点から見せられる人間味が興味深いです。

ざっくり小糸一家の夜逃げ経緯を要約します。

信治「家のローンが払えず滞っていて、家が競売にかけられてしまうかも」
静子「どうすんの?」
信治「心配するな!家は一旦離れて仲介人に間借りさせて、手続きを踏めば家を取り返せる!その間は別のホテルに移動して辛抱しよう!」
静子「それなら任せるけど…」
信治「キャー!元の家で殺人事件!警察から連絡が来た!!逃げよう!妻も息子も一緒!!」
静子「え???なんで逃げるの」
信治「実はいま使ってる手段は法律違反だから、警察に見つかったら捕まる。ヤバイ」
静子「最悪!!!!」
孝弘「…なんでそこまでして必死に逃げるんだろう?もしかしてお父さん今回の殺人に関わってる可能性があるんじゃ…」

信治、圧倒的怯え。
孝弘、丁寧な説得。

信治、出頭。

端折る部分も多いですが、こんな流れでした。
そして、二〇二五号室の買取人の名前で冒頭で保護された人物「石田直澄」の名前がでてきます。
静子は離婚調停中で、もう二度と信治の顔も見たくないとまで言い放ちます。踏んだ手段を全く開示してくれない信治に、全て任せきりにした静子にも非はありそうですが…信治は「荒川の四人殺し」のどこかに一枚噛んでいる可能性が濃厚になってきました。

二つの章を読んで面白かったのは、「荒川の四人殺し」に密接に関わる人物の名前が一つ一つ浮かびあがってきて、殺しの真実が様々な家庭の一場面で開示されていくのが興味深いです。
また、5章で姉の異変に気づく康隆や、6章にて父親を説得する孝弘。大人が愚かで、子供が聡明な描写が多く見て取れます。子供は大人のことをよく見ていて、冷静な視点で核心を突いていくところが見ていて面白いですね。


長くなってしまいました、今日はここまで。
今回の章も面白かった〜。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
惑い、踊り怯える大人たち。
若く、賢く鋭き子供たち。

ご機嫌よう。

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