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【読書レビュー⑨】宮部みゆき「理由」

こんばんは。PisMaです。

本日も「理由」を読んでいきますよ〜。
今回読んだのは

13章「写真のない家族」
14章「生者と死者」。

少し長めの章だったので、文量多めでお送りいたします。では13章から。

13章「写真のない家族」は、小糸夫妻の家に住むこととなった占有屋…砂川一家について。
この家族のことを一番深く知っていたのは、意外にも小糸家の長男・小糸孝弘でした。

小糸信治の作戦のもと、夜逃げののち家に占有屋を入れることになった小糸一家。
孝弘は親に「一度家を空けることになった」と説明を受け、両親と共に別のアパートに住むことになりました。この時点で聡明な孝弘は違和感を感じていて、言った通りのことが起きているわけではないと勘づいていたようです。

家には学校で使う参考書や体操着など必要なものが残っており、それを両親に無断で取りに行ったところ人が住んでいてビックリしたと話しています。
妻である砂川里子は、孝弘が忘れ物を取りに来たと伝えると急いで家に入れ、忘れ物を持ち帰るために荷物の支度まで手伝ってくれたようでした。それからも何度か荷物を取りに行ったりしても、怒鳴ったり叱責するわけでもなく協力してくれる姿勢を見せる砂川里子。
孝弘は「今のアパートだと学校が遠くて大変。学校に通いやすくなるようにしたい」という説明で、ひと部屋返してほしいと里子に交渉してみると…断る理由として、砂川一家の秘密を教えてくれたのです。

「私たちは、実は誰とも血が繋がっていない。
砂川の名前を借りている身。この仕事を紹介してくれた人も居るから、その人のためにもこの家に住まわせるわけにはいかない」

砂川一家の秘められるべき謎は、今回の殺人事件に至ったことで公の場に出ることとなったのです。

14章「生者と死者」は、13章と密接に関わる人物からの描写からスタートします。

「本物の砂川里子」が生活している描写です。

本物の砂川里子は深谷駅周辺にあるサンドイッチスタンド「あしべ」で雇われている人物。
午前3時から目がまわるような忙しさで働いていた里子は、ニュースの情報を手に入れる間もなく開店準備をしていました。
朝のニュースでは「荒川の4人殺し」の身元が判明したという記事が出回ります。
身元は「砂川信夫、その妻・里子、息子・毅、祖母・トメ」というもの。その情報を知った「あしべ」の常連客は、里子に「おねえさんとおんなじ名前の人が亡くなってるよ。嫌な偶然だね」と口々に声をかけます。
何回もそう声を掛けられるため、客足が落ち着いたタイミングの休憩で新聞に目を通します。

15年前に蒸発した夫の名前。自分の名前。
息子の名前。夫の母親の名前。

完全に自分の家族構成と同じ名前が列挙されていたのです。

動揺した里子は、雇い主である伊沢夫妻に手伝ってもらい息子・毅に連絡を取ったり、祖母と確認を取ることに。
祖母のトメは痴呆が入っており、特別養護老人ホームに入っています。急いで老人ホームへと向かい到着したところで、14章は幕を閉じました。

今回印象的だったのは、今まではなかった孝弘の証言が出てきたところと、里子とトメの関係。
小糸家の内情を話す人物は静子だけでしたが…はじめて一番まともな感性を持っているであろう孝弘の証言を聞くことが出来ました。

うちの両親は話が通じない。両親と早く離れたい。両親の敷いたレールが間違っていたのなら自分はお先真っ暗だと感情の乗り切らない様子で話していたのが痛ましく、自分の話をまともに聞いて返してくれる砂川の人たちには少しだけ好意的で、その人たちが全員亡くなってしまったことに対してもやるせなさを感じているようでした。


14章で言及される信夫の母・トメは、信夫を強く叱責し、嫁にやってきた里子に対しては「こんな息子の嫁に来てくれるなんて」と、肩を持つような変わった性分の人物。常に自分のことを悪く言う母に愛想が尽き、信夫は出て行ってしまったのだと里子は考えていたようです。

里子とトメは気が合い、蒸発した信夫の代わりに二人で息子を育てていたようで双方共に必要としている間柄でした。
ある日トメが脳梗塞になり重い障害が残ります。一緒に住むのが難しくなってきた頃トメの希望もあって老人ホームに移動することに。
そこでの生活でトメにどんな心境の変化があったのか、「今まで信夫を一度も探そうとしないなんて、なんて冷たい人間なんだ」と「信夫の肩を持ち、里子を強く叱責する」という今までのトメと真逆の言動をするようになりました。
戸惑いつつも里子はトメの様子を見に行く、というなんともやりにくい状況になっていたところでこのニュースです。

息子が死んでいるかもしれない。

この情報がトメにどんな影響を与えるのか、里子には恐ろしいことでしょう。今後どうなっていくのでしょうか。

本日はここまで。
すごく長くなってしまいすみません。また読めたら続きを書きますね。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
ある日、自分ごと家族が死ぬ報道があったら貴方はどうしますか。

おやすみなさい。

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