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ほめ上手なドイツ語? ドイツ人?

補習校で教えて1年目の年、日本人学校の先生の授業を見させてもらう機会があった。
しかも私のクラスに入って、授業をしてくださるという研修。
 
その先生が大変褒め上手だった。
音読一つにしても、「声が大きくていい」「元気でいい」「丁寧に読んでいる」「間違えがなかった」「読んでいるときの姿勢がいい」「いい声ですね」「表情がいいですね」・・・
誰一人に同じことを言わずに、1クラス分褒め切った。
たったそれだけのことだけど、音読が終わったときに、子どもたちはその先生への信頼を示し、静かに、期待を込めて見上げていた。
とても勉強になった。
 
私はそれまでどちらかというと減点方式で人を見てきたと思う。
親切なつもりでも、ああしたら、こうしたらと助言をするというのは、まだ不足があるという指摘に他ならない。
というか、その本質は変わってないけど、それ以来、授業のときは相手が誰で何才でも、いいところをたくさん褒めるようにしている。
 
もちろん、ドイツ語で授業をしているときも同じように肯定的に反応する。
ドイツ語では、「(sehr/とても)gut!(いいです)」「(sehr)schön!(お見事です)」「Prima!(すばらしい)」「Klasse!(抜群です)」「wunderbar!(奇跡的です)」「Spitze!(最高です)」「super!(すごい)」「toll!(すごい)」「Perfekt!(パーフェクト)」などの一言コメントに枚挙に暇がない。
ドイツ語を学んでいたときにも、先生たちから惜しみなく賛辞をもらっていたので、たくさん覚えた。

同じような短くコメントできる日本語は「いいですね」「上手です」「よくできました」くらいしかない。
 もちろん長くコメントできるなら、「読み方が丁寧ですね」などのようにいえるが、初級クラスでは難しい。

日本人は褒めないのか?!と思ってつらつら考えた。
まあそれもあるのかもしれない。
でも、それだけじゃなくてドイツ語には敬体と常体の区別がない、または垣根が低いから、いいやすいのかも?

上記で出した例のうち、tollとかsuperなどは若い人が友達同士でもいうようなフランクな言い方だ。
でも、教員が言ってもおかしくない。
日本語なら、「やるじゃん」とか「かっけー」みたいなのを先生は言わないだろう。
(ドイツ語でも、私はさすがにgeil(鬼やべー)とかkras(マジすごい)とかは言わないし!)

あるときドイツの電車の中で日本人の親子をみかけた。
子どもはまだ幼稚園に入るか入らないかくらい。
お母さんは、座席にそう座るな、ものを食べるな、そういう言い方はしない、あなたはいつもそうするけど・・・と降りるまでずっと注意していた。

ドイツ人だったらどうだろうか。
そもそも日本人レベルでの注意をしない。
もし注意をすることがあっても、それはあくまで注意であって、くどくど小言のように言わないだろう。
そして、注意したことが聞き入れられたら褒めるかもしれない。

私の娘たちがまだ小さいとき、道端で何かを見ていて、移動している家族から遅れた。
私の父は「早くこないとおいてくぞー」と言った。

また、別のとき、同じようなシチュエーションでドイツ人の義父は
「危ないから、走ってこないでいいから。待ってるから、ゆっくりおいで」と言った。

もちろん人にも因るだろう。
私の父を日本人の代表にしてはいけない。
でも、私も普段そういうと思う。
日本人の方がせっかちなのかもしれない。

ドイツ人の方が余裕があって、気が長くて、びっくりするほど子どもの好きにさせていることが多い。
でも、しつけをしないというわけではなく、もちろん必要なことは指導やアドバイスをするけど、上から引っ張り上げる、押し付けるというより、後ろからそっと支援してあげるような感じかも。

そんなわけでこれからも子どもたち、生徒たち、学生たいを見守って、後ろからそっと寄り添っていきたいと思う。

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