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もし「仕事をやめてほしい」と言われたら ―解雇予告手当を受け取りたい場合―

はじめに

このレポートは、実際に筆者が職場で経験した事を基にしたレポートです。

タイトルのように、職場で上司などから「仕事をやめてほしい」旨の発言があった際に、その会社を辞める前提で、会社から解雇予告手当を受け取るまでの手順を解説しています。

詳細は後ほど述べますが、解雇予告手当とは、一言で言えば、解雇通告を突然受けた労働者に対して会社から支払われる手当(お金)です。

正社員だけでなく、アルバイトやパート先で急に店長から「シフトに入れることができない(仕事をやめてほしい)」と言われた方にも参考となる記事です。

ただし、あくまでこの記事は、職場を辞めるケースを想定しています。
よって、解雇通告などを受けても職場に留まりたいと望んでいる場合は手順がまた違うと思われます。

ですので、もしかしたら、どうしても職場に留まりたいという方にはあまり参考にならない記事かもしれません。

また、この記事は、正社員・アルバイト・パート・契約社員といった企業に直接雇用されている方を対象に想定しています。
企業に直接雇用されていた際の筆者の経験ですので、派遣社員やフリーランスなどといった雇用形態の方には合わないかもしれません。

この記事は、有料ですが、無料部分を読んでも、勉強や参考になるように心がけて記事を作製しました。
無料部分は、解雇予告手当の解説と、職場で解雇通告を受けてから解雇予告手当を受け取るまでの手順を解説しています。
不特定多数の方を対象にして、できる限り、読めば誰でもそのまま実践できるように、普遍的なノウハウとして書きました。

そして、有料部分は、筆者の詳細な経験談となっています。
職場で「シフトに入れることができない」と店長に言われてから、労働基準監督署に相談へ行き、会社を円満退社するまでの過程を描いた経験談です。

無料部分は、不特定多数を対象としているため、どうしても参考にするには限界があります。
有料部分では、無料部分よりもさらに具体的に経験談を記入していますので、より参考にしやすいと思います。

解雇予告手当とは

それでは、まずは解雇予告手当の解説をします。

解雇予告手当とは、企業が30日以上前に解雇の予告をせずに、従業員を解雇する場合に支払うことが義務付けられている手当です。
解雇予告手当は、解雇した日に企業から支払われます。

労働基準法に基づき、企業が自社の労働者を解雇するには、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。
もしくは、解雇の予告を企業が行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金=解雇予告手当を支払う必要があります。

また、解雇予告の日数が30日に満たない場合であっても、その不足日数分の平均賃金=解雇予告手当を受け取ることができます。
例えば、9月15日に解雇予告を受けて30日に退職する場合、解雇予告の不足日数分として15日分の平均賃金(解雇予告手当)を受け取ることができるというわけです。
解雇は、労働者の生活に影響を大きく及ぼすため、事前に解雇予告を行うか、平均賃金を支払うか、のどちらかが法律で義務付けられているのです。

それでは次に、解雇予告手当の受け取り方の手順を解説していきます。

解雇予告手当の受取手順(フローチャート)

①勤め先の会社で上司などから「会社に来なくていい」等の発言があった

②できるだけ早いうちに労働基準監督署(労基署)に相談に行く
(可能であれば、解雇予告手当などの解雇関連の語句や労基署について調べる)

③労基署の職員の方のアドバイスに従いながら、解雇予告手当を受け取れるように勤め先の会社と交渉をする

大まかな流れとしては、以上の3つです。
個人個人の事情によって、細かな手順は異なると思いますが、不特定多数の方が、解雇予告手当を受け取るまでの流れは大まかにこのようになります。
この流れを頭に入れていただければ、解雇予告手当を受け取るまでに大きな支障はないと思います。

大まかな流れだけでは詳細がわかりませんので、①~③を具体的に解説していきます。
この①~③の具体的な解説までが無料部分です。
有料部分は、個別の一事例として筆者が経験したことを詳細に記しています。
無料部分だけでも参考にしていただければ幸いです。

①勤め先の会社で上司などから「会社に来なくていい」等の発言があった

勤め先で上司などから「会社に来なくていい」「シフトには入れられない」「クビだ」「解雇だ」などの発言があってからが、解雇予告手当を受け取るまでの流れの始まりです。
初っ端からですが、ここがこの後の流れを決めるうえで一番重要な部分です。
この段階で気をつけないと、会社と交渉することが全くできず、労基署に駆け込んでも無駄足となります。
では、何に気をつけないといけないのか。
それは、会社側に言質や文書での証拠を与えないことです。

言質や文書での証拠はどういうものかをそれぞれ詳しく解説していきます。
言質とは、口頭で「会社を辞めます」と上司などに対して言ってしまうことです。
実は、口頭でも退職が認められています。
退職届や退職願を提出しなければ退職できないと思っている人が多いかもしれませんが、実はそれらを提出しなくても口頭で辞意を表明すれば、退職が認められます。

ですので、事実上の解雇通告があったとしても、安易に「辞めます」や「はい、わかりました」等と退職に同意したような事を言わないでください。
もし、言ってしまったら、会社側に「退職に同意をした」という言質を与えてしまい、その後の会社との交渉が不利になります。
その場では、曖昧な言葉で返答をして、はっきりと「退職をします」という言質を与えず、後日改めて正式な返答をするなどして、のらりくらりとかわしてください。

さて、ここで注意が必要なのが、上司などが「解雇」という言葉を使ったか否かです。
もし「解雇」という言葉をはっきりと使ったのであれば、それは正式な解雇となり、解雇予告手当を受け取る正当な理由となります。
しかし、「会社に来なくていい」や「シフトに入れられない」といった風に、「解雇」という文言が入っていない場合は、グレーです。

というのも、解雇予告手当は、会社側が正式に「解雇」したことを認めて初めて受け取ることができるからです。
頑なに解雇と会社が認めない場合は、解雇にはあたらず、解雇予告手当を受け取ることができません。

ただし、「解雇」の文言が入っていない解雇通告を受けた場合でも、諦めずに労基署に駆け込むことが吉です。
個人個人の事情にもよりますが、交渉によっては会社から解雇予告手当を支払ってもらえるかもしれません。

ただ、筆者の場合は、勤め先から解雇予告手当を支払ってもらえないという結果に終わりましたが、別のお金は支払ってもらえましたので、円満退社しました。
その過程を詳細に記録していますので、気になる方は、有料部分をご覧ください。

なぜ事実上の解雇であっても、会社側が「解雇」という言葉を使わないのかというと、正式に解雇をするには手続きを踏まねばならないからです。
アルバイトやパートであっても、法律で保護をされています。
労働基準法で労働者は保護をされているために、解雇の手続きが煩雑となっているため、「労働者が自発的に退職した」という形に会社側はしていきたいのです。
自発的に退職したという形であれば、会社が解雇予告手当を支払わず、また、煩雑な解雇手続きもしなくて済みます。

解雇関係の詳細に関しては、この記事の趣旨に反し、筆者が労働関係の専門家でもないため、解説を割愛します。

口頭の次に気を付けなければならないのが、文書です。
会社が解雇通告をする場合、口頭または文書で行います。
文書で解雇を通告してきたり、口頭で解雇通告後に退職届などの文書にサインを求められたりする場合があります。

そういった場合、その場では絶対に、会社から記入を求められた文書や書類に一切、自分の名前をサインや押印をしないでください。
もし、サインをしてしまったら、口頭以上にこの後の交渉が難しくなる可能性が高いです。

何故ならば、解雇通告として会社が出してきた文書の文言には、労働者の損になるものが含まれているかもしれないからです。
例えば、解雇通知書と思ってよく文面を見たら、解雇通告書ではなく、退職届だったということがあるかもしれません。
もし、解雇通告書ではなく、退職届にサインをしてしまったら、それは「解雇」ではなく、「労働者による自主的な退職」という扱いになってしまいます。

「労働者による自主的な退職」の扱いになってしまったら、自主的な「退職」のため、「解雇」には該当せず、解雇予告手当を受け取ることができなくなります。
そして、退職届などの書類にサインをしてしまったら、文書として明確な記録が残ってしまうため、証拠として労基署などの第三者に対して自分の正当性を主張できにくくなります。
それゆえに、解雇通告を受けたその日には、文書にサインをせず、上記の口頭の場合と同様に、その場でサインをすることをのらりくらりとかわしてください。

もちろん、会社側から急に解雇通告をされたら、動揺する人が大半だと思います。
中には、頭が真っ白になってしまう人もいるかもしれません。
ですが、それでも退職に同意と見られる返答や退職届などの書類にサインをすることだけは絶対にしないでください。
もし、上記をしてしまった場合、「全てがパーになる」と労基署の方に筆者は言われました。
解雇通告を受けても、世界や自分の人生が終わるわけではありませんので、動揺をしても、前に進んでいくのを意識していくことがベストです。

②できるだけ早いうちに労働基準監督署(労基署)に相談に行く
(可能であれば、解雇予告手当などの解雇関連の語句や労基署について調べる)

もし、会社側から解雇通告を受けてしまったら、できる限り早いうちに労基署に行くことがベストです。
記憶が薄れないうちに労基署へ行くことで、職員の方に対して解雇通告を受けた際の状況を事細かに話せることができます。

個人個人の生活状況によって忙しさが違うので、一概にオススメすることはできませんが、あらかじめ解雇関連の語句やエピソードといった解雇関連の事柄や労基署がどういう存在なのかを調べておくと、労基署職員の方とスムーズにやり取りすることができます

なお、よくある誤解として、労基署は労働者側に全面的に味方になってくれる誤解があります。
労基署は、あくまで企業と労働者の間に立つ中立な立場です。
法律に違反していないかどうかを精査することが仕事のため、労働者や企業どちらの絶対的な味方ではありません。

この事を頭に入れておけば、労基署に対して過度に期待を持ってガッカリしてしまうことが防げます。
労基署はアドバイス等々を労働者側に対してしてくれますが、企業との交渉は労基署が関与せず自分でやることになります。

さて、労基署にはできるだけ早いうちに行くのが肝心ですが、どこの労基署に行くのかということも大事です。
労基署は各都道府県の中に複数存在して、それぞれの労基署は地域ごとに管轄をしています。
勤め先の企業の事業所がある地域を管轄している労基署に赴くことが、必須です。

管轄外の労基署に出向いてしまった場合、管轄ではないため、労働相談が受けられないことがあるようです。
もし例えば、企業の本社が北海道で、勤め先の事業所が東京都△△区にあり、その東京都△△区の事業所で自分が働いている場合、東京都△△区を管轄している労基署に出向かなければなりません。
本社が北海道にあったとしても、わざわざ北海道の労基署に出向かなくても良いのです。

労基署のホームページに労基署の所在地と電話番号が掲載されています。
都道府県によって労基署のホームページがそれぞれ分かれていますので、「自分の居住都道府県名 労基署」と検索して、ホームページにアクセスしてください。
管轄の違う労基署に行って労働相談を受けられなかったという無駄足を避けるためにも、事前に電話で労基署にかんたんに相談することがベストです。

さて、いつ労基署へ行くか、どこの労基署に行くのかが決まったら、労基署に持って行く物の準備が必要です。
事前に労基署へ電話相談した際に「持ち物は特にいらない」と言われることがあるかもしれませんが、職員の方とスムーズに相談のやり取りをするためにも、できる限り持ち物は用意したほうが吉です。

個人個人によって状況は異なりますが、概ね以下に記載する持ち物を持って行けば、どの方もスムーズに相談が進むと思います。
・雇用契約書
・給与明細(直近3か月分)
・解雇通告を受けた際の状況を詳細に記録したメモ

雇用契約書はなくても相談をするうえで問題ないと思いますが、自分の雇用条件を確認するためにも、用意しておくのが吉でしょう。
すぐに雇用契約書が見つからない場合は、労基署に持ち込まなくてもいいです。
ただ、解雇予告手当の支給には除外条件があります。
もし、自分が以下の除外条件に当てはまっていそうでしたら、雇用契約書を探し出して確認してください。
以下、厚生労働省のホームページから引用した文です。

解雇予告手当の適用除外
・ 日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用された場合は予告の対象)
・ 2か月以内の期間を定めて使用される者(契約で定めた期間を超えて引き続き使用された場合は予告の対象)
・ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(契約で定めた期間を超えて引き続き使用された場合は予告の対象)
・ 試の使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用された場合は予告の対象)

給与明細は、解雇予告手当の基準額となる平均賃金額を算出するために必要となります。
直近3カ月の給料(給与明細の総支給額)を合計して、直近3カ月の日数を割ったものが平均賃金となります。
つまり、例えば、直近3カ月が8月7月6月であれば計算式は以下のようになります。
(6月給料額+7月給料額+8月給料額)÷(6月の日数30+7月の日数31+8月の日数31)=平均賃金
平均賃金額の算出は、家にいる間に自分で計算できますが、職員のほうがその計算に慣れているので、給与明細を見せて計算をやってもらうのが手っ取り早いです。

できる限り用意した方がいい持ち物は、解雇通告を受けた際の状況を詳細に記録したメモです。
5W1H形式で解雇通告を受けた際の状況を事細かに記録しておくと、相談がスムーズに進みます。
メモは箇条書きでもかまいません。
筆者は以下のように、5W1Hを基にしてメモを作りました。

誰 上司から解雇通告を受けた
いつ 2020年〇月〇日○○時○○分頃
どこで 勤務先の職場で(東京都○○区)
どのように 口頭で解雇通告を受け、退職届をその場で書かされそうになった
何を 「解雇」という言葉は使われなかったが、事実上の解雇通告だった
就業先の状況 ○○業。従業員は自分を含めて〇〇人。コロナ禍の2月から売上が前年比1割以上減り始める。

上記はあくまでメモの一部で、筆者はそのほかにも詳細を記録していますが、時間の無い方は上記程度のメモでも問題はないでしょう。
メモはあくまで自分の頭を整理して、分かりやすく労基署の方に伝えることが目的なので、絶対に必要というわけではありません。
相談の際に自分の伝え不足があれば、職員の方から質問があると思いますので、正確に返答をすれば問題ないと思います。

また、もし、疑問や不安に思っていることなどがあれば、疑問点を箇条書きにしてメモにまとめておくのも吉です。
筆者もいくつか疑問に思うことや解雇関係で分からないことがあったので、職員の方に質問したいことを事前にメモにまとめておきました。

この章をまとめると、以下のようになります。
1.労基署へ行く日を決め、就業先の地域を管轄している労基署に行く
2.雇用契約書、直近3か月分の給与明細、状況を記録したメモを用意することでスムーズに相談できる

③労基署の職員の方のアドバイスに従いながら、解雇予告手当を受け取れるように勤め先の会社と交渉をする

さて、いよいよ労基署へ行って相談をする段階です。
事前に電話で相談の予約をする必要はありません。
日や場所にもよりますが、待ち時間はあるものの、予約なしに相談をすることができます。
筆者の場合は、待ち時間は10分ほどでした。
労基署での相談はもちろん無料です。

初めて労基署へ行く方も多いと思いますが、緊張をせずリラックスして尋ねてください。
労基署にもよりますが、筆者が行った労基署では職員の方が親身に話を聞いてくださりました。

個人個人の状況や事情により、相談内容や相談を受けた後の行動は異なりますが、一概に言えるのは、「労基署職員の方のアドバイスに従って行動する」ということです。
労基署での相談の際に、職員の方から多くのアドバイスをいただけると思います。
労基署の職員は、何年も労働問題や雇用関係の問題に取り組んでいるプロフェッショナルの集まりです。

労基署の方から受けたアドバイスや指示の中には、自分の意にそぐわないものもあるかもしれません。
ですが、労働問題にほとんど経験がない人が闇雲に行動をしても、会社との交渉でよい結果が得られることはありません。
ですので、労基署の方のアドバイスには従って、勤め先の会社と交渉を行っていくことがベストです。

ただし、労基署の方のアドバイスに従っても、会社側が一枚上手だったり、自分のミスだったり、などの理由で、良い結果を得られない場合もあります。
企業が頑なに「解雇」と認めなければ、解雇予告手当を受け取ることはできません。

筆者も上記のパターンで結果的には解雇予告手当を受け取ることができませんでした。
ただ、その後円満に退職でき、初めて労基署へ行った社会経験に満足をしています。
もし、良い結果ではなくとも、落胆や悲観をしすぎずに、勤め先の会社のことを忘れるように心がけて、次に進んでいくことがベストのように思います。
特に現在のコロナ禍のような経済危機のときは、貰えるものをもらって、次に行くのがベストと筆者個人は考えています。

会社との交渉は、各人の就業状況や職員の方から受けたアドバイスが異なりますので、不特定多数の方に共通することを書けるのは、ここまでが最後です。
筆者の会社との交渉や、その後の円満退職までの詳細な過程は、有料部分に記してありますので、気になる方はご覧ください。

無料部分で不特定多数の方に公開できるノウハウはここまでです。
無料部分で記したノウハウをそのまま実践するだけでも、企業との交渉の土俵に立つことができます。
解雇予告手当の存在自体を知らず、泣き寝入りする方が多いと思います。
ですが、解雇予告手当は労働者にとって正当な権利ですので、胸を張って貰いに行きましょう。

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