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婆ちゃんの存在に感謝

35年前に脳梗塞で倒れて、後遺症で右半身麻痺になり不自由な身体の中でリハビリを頑張り今までずっと自分のことはほとんど自分でして生活していた婆ちゃん。

今、90歳になり、ずっと右半身をかばった生活をしてきていたので、そこら中がぼろぼろの身体。
そんな身体でも、いつも家族の心配ばかりしていた。
「身体は全部ぼろぼろやけど最後まで頭はボケずにいさせてくれたから、家族の幸せを祈ることができた。だからそれだけでも感謝している」って10年以上前に婆ちゃんが言っていたのをずっと私の心の中に生き続けている。
あんなにぼろぼろの身体でも、常に自分に出来ることで誰かを喜ばせて、役に立とうとしている婆ちゃんの姿に感動し感謝した。

そんな身体がぼろぼろだった婆ちゃんが、先月失明した。

先月急に、緑内障が悪化したのか見にくくなり、治療のために打った注射の後、どういうわけかそのまま真っ暗になった。

もちろん婆ちゃんは不安と悔しさ苛立ちから泣き叫んでいた。
私も、神様はなぜ最後の最後まで婆ちゃんにこんな残酷なことをするのだろうか…って悔しかった。

頭がしっかりしている婆ちゃんだからこそ、今の自分の姿が惨めで仕方ないって泣きじゃくる。
「なんも悪いことしていないのに…」って。

失明してから、しばらくはずっとイライラするし泣くし、情緒不安定だった。
そのせいでか、胃まで痛がって食欲も落ちていた。

それでも、目が見えない中でも、長年の感覚で家の中を押しぐるまで歩き、手探りで着替えていたが、家にいるとしょっちゅう「さゆりちゃーん」って呼ばれるし、精神的に不安定な婆ちゃんと寄り添いきれないことも多かった。

一番しんどくて悔しくて悲しくて辛いのは婆ちゃんなのに、受け止めきれない優しく出来ない自分にもまたイライラする。

それでも婆ちゃんは、いつもいつもちょっとしたことにみんなに「ありがとう」と「ごめんね」を言い、あお君にいつも笑って話しかけてくれる家族想いの婆ちゃん。

そんな婆ちゃんは、今年のお年玉を「今年で最後になると思う」って言って家族全員に配ったあと、通帳とハンコを両親に渡した。

そして、今日多めにおろしておいた手持ちのお金を急に泣きながら手放した。
「もう、婆ちゃんは目が見えないんだし、お金の管理も出来ないし、これからは施設に入ることになるし自分のお金だけでは生活出来なくなって頼るしかないんやから…」「もう全部みんなに任せるしかないんやから…」「もしも…また目が見えるようになったり施設に入ってお金の楽しみ知ったらまたおこずかい少しもらえるならその時はお願いする」って言う婆ちゃんの涙をみて、全てを天に委ねたんだと思った。

今まで、迷惑かけずに必死に一人で頑張り、そして少ないお金を家族への感謝の気持ちと自分が迷惑かけずに元気でいることにしかお金を使ってこなかった婆ちゃん。

お金って言う存在は、ずっとみんなに心配や迷惑ばかりかけているって思ってる人生に、少しでも誰かの役に立てる喜ばれる手段がお金を渡すことだったと思う。

なので、病院に連れていくだけでも「ありがとう…」って言ってお金をくれていた。
要らないよって言っても、いつも「いつもありがとうね。またお願いね…」って言って渡してた。
きっとお金を渡すことで、安心してたのだと思う。

そんな婆ちゃんがお金を手放すことは本当に、全てを手放し全てを委ねたことになると思うと涙が止まらなかった。

婆ちゃんは、本当に生まれたての赤ちゃんのように何も持たず、かすかな光しか見えずに自力ではほとんど動かれない状態になった。

お年寄りは赤ちゃんに戻っていくって言うけど、こう言う事なのかもしれないってふと思った。

お世話出来ることで大きな愛を感じる。
存在全てに価値がある。

全てを手放した婆ちゃんだからこそ、今までは感じなかった部分まで全てが大きな愛に見えてくる。
私は、こうやって身近に老いていく姿を看させてもらって大切なことを教えてもらっている。
生きる姿から学ばせてもらっている。偉大な存在に感謝です。

そして、リアルに感じた有料老人ホームに入ると言うことは莫大な費用がかかること。
有料老人ホームに入って10年長生きしたら、確実に2000万っコースだと思う。

要介護認定③じゃないと、普通の老人ホームに入れないことを始めて知る。
いぇ介護認定③はほとんど寝たきりか認知症の方。

婆ちゃんは頭がしっかりしてて、半身不随でも自力で動けていたので、要支援②だった。

去年爺ちゃんの看取りをして、今婆ちゃんの介護をする中で、介護の世界の奥深い闇もめちゃくちゃ感じている。介護する方もされる方も、色々な感情と向き合っている。
婆ちゃんの辛さも痛いくらい感じるが、35年間介護し続けてきた母親の苦労もわかる。
そして母親自身も、膝が悪いので自分の健康第一になるので、介護出来る体ではない。

子育てと介護は同じようなのに、状況は全く違う。
お金への意識も今までの関係性も全く違っている。

これから、私も同じように両親を看取ることになる予行練習なのだと思っている。
この予行練習で一番思っていることは、【みんなが健康であること】だ。
どんなことがあっても、元気で健康な仲間(家族)がいればどうにかなる気がした。

長すぎる文書。
奇跡的に最後まで読んでくれた方に心から感謝します。

あなたの【健康が第一】です。

#介護 #手放し

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