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自主学習について考える

今年は、3年生を担任しています。宿題は、基本メニュー(漢字、計算ドリル、音読)を出していますが、それにプラスして、やりたい子は自主学習をするように呼びかけています。言われたことを言われた通りにやる宿題とは違う自主学習にはどんなねらいや効果があるのでしょうか。そして、保護者としてはどう関わっていけば良いでしょうか。今日は、自主学習について、教員の立場と保護者の立場から考えてみたいと思います。

自主学習を強制する矛盾

自主学習は、自主的に行うから「自主学習」と呼べるのであって、「自主学習を必ずやってきなさい」ってなんだか矛盾しているように感じますよね。ある先生から、「それは自主学習ではなくて、自己選択学習と呼ぶべきでは?」と言われたことがあって、確かにそうだなぁと思いました。

保護者の方の中には、「自主学習が宿題になっているけど、我が子は全然自主的にやろうとしない。どうしたらいいんだ。」と頭を悩ませる方もいることでしょう。確かに、「自主学習が宿題なんだから、何か考えて必ずやってきなさいよ」では困ってしまいますよね。

私も自主学習は、やるかやらないかも含めて自分で決めた方がいいなぁと思うようになりました。今、担当している子たちにも、やりたい子がやりたいときにやるという原則にしています。

なぜ自主学習を宿題にするのか

では、なぜ自主学習を宿題にするのでしょうか。私は2つのねらいをもって行っています。

①自己調整力を身につける

まずは、自己調整力です。新しい学習指導要領の「主体的に学習に取り組む態度」では、自己調整力が重視されています。自分の学びの特性を理解し、それに合った学習方法を選択できるようにすることが自立した学び手を育てることにつながります。

例えば、漢字の練習の仕方一つ見ても、1人1人に合う学習方法は異なります。塾に行っていて、漢字を覚えるのも得意だけど字が雑になりがちな子なら、少しの量を丁寧に練習する方がよいでしょう。なかなか覚えられない子は、テスト形式で練習し、どこを間違えたか意識化しながら繰り返し練習するのがよいかもしれません。100点を目指すのが難しい子は、目標を50点にしてもよいのです。

言われたことを適当にこなす習慣をつけるための宿題になってしまっては、本末転倒です。基本の宿題も含めて、子どもの実態や放課後の過ごし方に合わせて、量や方法を選択させること。また、この取り組み方が自分に合っているか振り返る時間を作り、サポートすること。どちらも大事にしている点です。

②探究的な学びの楽しさに気付く

自主学習では、「何をテーマに学習するか決める」というステップを踏みます。よく参考として挙げられる、新聞の切り抜き+コメント、国旗調べや都道府県調べなども、続けるには本人の意欲が必要になるはず。はじめは、大人からの提案でスタートするのもよいですが、いずれは自分で決めさせたいものです。 

好きなことをしていると、あっという間に時間が過ぎていきますよね。探究的な学びにはそういった楽しさがあります。遊ぶように学ぶ姿は、教育の理想だとも言えるのではないでしょうか。

多忙な子どもたちに大人な理想を押し付けるのは嫌なので、自主学習はやはり強制したくはないですね。でも、「遊びと学びはつながっているんだよ」ということは伝えたい。自主学習がうまくそこをつなぐきっかけとなるように、やり方を工夫したいものです。

遊ぶように学べる子とそうでない子

「自主学習やってみたい人はぜひやってね」と言うと、水を得た魚のように、自主学習を楽しんでやってくる子と、何をしたらよいかわからず困惑する子が出てきます。この差は何なのでしょうか。

私は、子どもの生活に自由な時間があるかどうかではないかと感じることが多いです。

まあ、当たり前ですよね。1日中仕事に追われて、帰ったら寝るだけの生活をしている人が、趣味に没頭したり、他のことを学んだりすることはなかなかできません。
それと同じです。放課後、塾や習い事で忙しい子どもたちの生活に自主学習の入る余地などないのは当然のことで、そこに無理に入れ込んでも、誰も得をしません。

子どもに自分で決める力や課題を見つけて自己探究する力をつけたいならば、自由な時間を作ってあげることが必要だと私は思います。それには、子どもを待つことや信じることが求められます。これは、かなり忍耐力のいることかもしれません。

『「自主学習をやってもやらなくてもよい」では、うちの子はやらない。先生からやるように言ってもらいたい。』『全員必ず取り組む宿題として課してほしい。そうでないと不公平。』という声もあるかもしれません。でも、それでは上記の目的(①自己調整力②探究的な学びを楽しむこと)がどちらも身に付かず、勉強が嫌いになるだけだと思います。学びを自走していける子を育てるには、本人の意思を尊重する必要があると考えています。

自主学習を盛り上げるには

①教室での取り組み

さて、ここからは、今年取り組んでいる「教室で自主学習を盛り上げるポイント」をご紹介します。

それは、自主学習をやってきた子のノートを毎日みんなの前で開いて紹介することです。これが効果絶大で、自主学習のテーマ探しやモチベーションを高めることにつながっています。しかも、ノートにコメントを書く手間が省けて教師としても楽です。ただ、自主学習をやってきた子のノートみんなで見て、楽しむ!それだけでいいのです。

Aちゃんは毎日自主学習をしています。隣の席のBくんが「オレもやってみようかなー」とつぶやくと、Aちゃんが、「いいじゃん、やってみなよ。」と励まし、やり方を教える。最近の教室の風景です。

自主学習をやってきた子は、紹介されるのが嬉しくて、ポジティブ発言を連発します。私も良いところをどんどん話します。平均して毎日10人くらいが自主学習をやってきますが、紹介にかかる時間は5分程度です。

発達に凸凹がある子や、学習に苦手さがある子も自主学習は好きでやっているという子がけっこういます。自分のやりたいことがやりたいときにできる。がんばったことをみんなの前で紹介してもらい、自信が付く。そんな効果があるから、取り組みたくなるのかもしれません。

自主学習をやってこない子については、一人一人の状況に合わせて対応しています。子どもの気持ち、保護者の要望、時間的なゆとりなどを考慮し、必要に応じて声かけをします。

②家庭での取り組み

学校で自主学習が宿題になっている場合、保護者は本人のやる気に合わせてサポートするのがよいと思います。あまりやる時間がない、楽しさを見出せない場合も、「これならいいかも」と本人が思えるものを一緒に探してあげるとよいです。(あまりにも負担が大きいようなら、宿題の量や内容について担任に相談するのもよいと思います。)

「早くしなさい。決めなさい。」と言われても、思いつかない子にとっては難しいので、例を示して、本人に選んでもらう方がよいと思います。また本人が何か自分でやってみようと言い出したら、どんなことでも肯定してあげたいものです。

自主学習が学校の宿題になっていなくても、探究学習が好きそうな子には、家庭で1冊ノートを作って自主学習をするよう提案してみてははいかがでしょうか。

我が家では、何かに関心をもったら、ノート1冊をその専用ノートにして、探究する習慣がついています。自由帳や1㎝方眼ノートに、気に入った新聞記事を切り抜いて貼ったり、本を読んでいておもしろいと思ったことをメモしたり、写真を撮って貼ったりしています。

そういった遊びの延長にある学びの習慣がついていると、いざ自主学習をやるというときや夏休みに自由研究をするというときにも、やりたいことがたくさん出てくるようになります。

家庭で取り組む場合は、学校で宿題になっているときのように友達や先生の反応をもらう機会ないので、家族が積極的にその内容に興味をもち、楽しみながら声をかけたり、メッセージを書いてあげたりするのがよいと思います。また、遠方に住むおじいちゃんおばあちゃんにコピーして送ると、たくさん褒めてもらえてやりがいが感じられるかもしれません。

自主学習に関する書籍

最後に、少し自主学習に関する本を紹介しておきたいと思います。

まずは、教員向けの2冊。伊垣尚人先生の本です。とても分かりやすく書かれています。初めて自主学習に取り組む先生も、これを読めばやり方がよく分かります。(毎日取り組ませることを念頭に置いた指導ですが、私はこれをアレンジしています。)
実践編では、具体的なノートの例がカラーで載っているので、とても参考になります。私は、教室の本棚に置いておき、子どもが自分で手に取ることができるようにしています。


次は、保護者が読むのに適した本。秋田県が学力テスト全国一位になったとき注目された学習法について書かれています。家庭学習で自主的にノート作りをする意義について知ることができ、ノートの例もたくさん出ています。

NHKスペシャルで取材を受けた梅田明日佳くんの自学ノートが書籍化されたものです。この番組を見て、衝撃を受けました。明日佳くんの自学ノートの美しさ、ノートをもってどこへでも出かけていく行動力…学ぶ楽しさにあふれていました。番組では、本人の生きづらさやお母さんの葛藤も扱われており、ものすごく心を揺さぶられたのを覚えています。子どもの可能性を信じ、応援できる大人でありたいと思いました。

終わりに

今日は、自主学習について書いてきました。宿題には、賛否両論あると思いますが、自分を振り返って考えながら学ぶことや学びを楽しむことは大切だなぁと思います。宿題によって子どもを苦しめることなく、子ども自身が納得して取り組める宿題の在り方を今後も模索していきたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!