見出し画像

越えるべき2つのハードル〜受賞する小説のつくり方(1)

崖っぷち作家のニジマルカです。

たまに「受賞するにはどうすればいいですか?」と聞かれることがあります。

答えるのはなかなか難しいのですが、ある程度の仮説は立てられそうです。

そういうわけで、今回から何回かに渡って、受賞する小説を書くにはどうすればいいか解説していきます。

今回は1回目「越えるべき2つのハードル」です。


前提

まず前提を書いておきます。

私が受賞したのはエンタメ小説の新人賞なので、他のジャンルの新人賞にも当てはまるかどうかはわかりません。

ですが、ある程度は別ジャンルにも適用できるはずです。

あくまでも仮説ですので、おおざっぱな指針として読んでもらえればと思います。

それでは話を始めましょう。


出版社が欲しい作品

最初に「どうすれば受賞できるのか」に明確に答えておきます。

答えは簡単です。

出版社が欲しい作品を出せば受賞できます。

では「出版社が欲しい作品」とはどういったものでしょうか?

ごくごく単純に言えば、「これから売れそうな作品」です。


では、これから売れそうな作品とは……?

……そこまで考えるのはまだ早すぎです。

「売れそうな作品」を考える前に、知っておくべき作品があります。

それは「普通の作品」です。


普通の作品とは

みなさんは「普通の作品」がどういう作品なのかご存じですか?

大したことない作品でしょうか?

それとも、特にすごくない作品?

……ぜんぜん違います。


作家を目指す人たちが知るべき「普通の作品」とは、自分が目指しているジャンルで「売れている作品」のことです。

「売れている作品が普通の作品?」

そう思うかもしれませんが、受賞するには、いま売れている作品と同じか、それ以上の作品を書かなければなりません。

なぜかというと、出版社は「これから売れそうな作品」、つまり「いま売れている作品以上の作品」が欲しいからです。

要するに、売れている作品が「普通」であり、最低基準なのですね。


越えるべき2つのハードル

上で書いたとおり、「普通の作品」とは、目指すジャンルで売れている作品です。

「売れている」というのは「受け入れられている」ということです。

受賞するには、受け入れられることは当然として、その上で新しさがなければなりません。

なぜなら、出版社が欲しいのは「過去に売れた作品以上の作品」であり、「これからの未来に売れる新しい作品」だからです。

ですから、受賞するために越えるべきハードルは以下のように2つあることがわかると思います。

1.受け入れられる
2.かつ、今までなかった


2つを同時に満たすと受賞できます。

ですが、まずは1つめのハードルに注力するのが簡単です。

1つめのハードルは、過去の作品を知ることで越えることができるからです。

「受け入れられている作品」、つまり「売れている普通の作品」を知りましょう。

普通の作品を知らずに、それらの作品を越えることはできないのです。


受け入れられる作品とはどういうものか?

受け入れられた作品を知るには、それらの作品を調べるしかありません。

ですが、調べる前に、普通の作品(=受け入れられた作品)とはどういう作品なのかを知っておきましょう。

統計的に捉えておくのがいいです。

まず、本を買う人の分布を示しておきます。

図にすると、こんな感じでしょう。↓

画像1

縦軸は人口、横軸はこだわり具合のようなものです。

見てわかるとおり、すごくこだわりのあるマニアックな人も、まったく興味のない薄すぎる人も多くはありません。

多いのは常に「こだわりが強くもないけれど、興味がぜんぜんないわけでもない」人たちです。

こういう人たちを「普通の人」と言います。


「普通の作品」はなぜ売れたのでしょうか?

それは「普通の人」たちに受け入れられたからです。

つまり「売れる」というのは、人口の多くを占める「普通の人」に受け入れられることを言うのですね。


いま売れている普通の作品は、色の濃い部分に位置する作品です。↓

画像2

みなさんも、この辺りの作品を書く必要があります。

また、プロになってから相手にするのも、この辺りにいる「普通の人」たちだとわかっておきましょう。

ところで、普通の人は小説を書きません。

ましてや10万字を越える長編を書くなど、正気の沙汰ではありません。

小説を書いている人というのは、普通の人から見れば完全な変人なのですね。

ですから、単純化すると、作家を目指すみなさんがいるのはこの辺りになります。↓

画像3

変人は変なものを書きたがります。

すると、「普通の作品」からはどんどんズレていくのです。

「普通の作品」との差を理解しましょう。

小説への愛やこだわりが強ければ強いほど、普通の人が受け入れられない作品を書いてしまいがちです。

そのこだわりは上で書いた

1.受け入れられる
2.かつ、今までなかった

の2つ目のハードルを越えるために取っておくといいです。

まずは「普通の作品」「標準の作品」を知ることです。

今後、付き合うことになる「普通の人」を理解すると言ってもいいですね。

実際に「普通の作品」をどう調べるかは、次回に続きます。


今回のまとめ

受賞する小説のつくり方1回目「越えるべき2つのハードル」でした。

1.受賞するには出版社が欲しがっている作品を出せばいい
2.出版社が欲しいのは「これから売れそうな作品」
3.売れそうな作品を考える前に普通の作品を知る
4.普通の作品=いま受け入れられている作品
5.受賞するには「受け入れられる」+「今までなかった」
6.売れる=人口の多い普通の人に受け入れられること
7.小説へのこだわりがあればあるほど、普通の作品からはズレる

次回は「売れた作品を調べる方法」です。↓

それではまたべあー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?