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創作Q&A 文章表現によるアクションや戦闘シーン

フォロワーの方のご質問やお悩みに答えるシリーズ。

今回は「文章表現によるアクションや戦闘シーン」です。



Q.文章表現でアクションの描写は難しいでしょうか?

今回のご質問はHさんからいただきました。

いつもコメントありがとうございます!

ご質問はこうです。

「文章表現によるアクションや戦闘シーン」について、ニジマルカさんのマイルールはありますか?
子供向けアニメのような小説に、戦闘シーンを入れることを想定しています。
ですが、あんまり手数が多いと、読むのに時間がかかりますよね。それだと、アクションが失速し、スローモーションなのかと錯覚されるのではと思い、悩んでいます。
文章表現で、アクションの描写は難しいでしょうか?
それとも、手数が少なければ、なんとかセーフでしょうか?


とても具体的なご質問ですね。

今回は直接の回答というより、私が戦闘シーンを書くときに気をつけていることをご紹介しようと思います。


戦闘シーンで気をつけていること

私は男性向けのエンタメ作品を書いているで、戦闘シーンを書くことも多いです。

その際に気をつけていることがいくつかあります。

  1. 構成:戦闘シーンの全体構成

  2. 見せ場:見せたいのはどこか

  3. 表現:できるだけ簡単にする


以下からそれぞれ説明していきましょう。


1.構成:戦闘シーンの全体構成

1つ目は戦闘シーンの構成を理解しておくことです。

戦闘シーンはもちろん多種多様ですが、ものすごくおおざっぱにいうと、以下のような流れが典型的だと思います。

戦闘シーンの典型的な構成


  1. 最初の一合
    主人公と敵が戦闘を開始します。
    最初の小手調べで互いの実力がわかります。

  2. 仕切り直し
    離れて再び対峙するなどして、仕切り直します。

  3. Aの攻撃ターン
    Aが優勢なターンになります。
    Bが凌いで仕切り直します。

  4. Bの攻撃ターン
    Bが逆転して優勢なターンになります。
    Aが凌いで仕切り直します。

  5. 3に戻って繰り返す

  6. 逆転して勝利
    最後はどちらかが逆転勝利して戦闘終了です。


バリエーションはいくらでもあるのですが、ひとまず以上のような展開を頭に置いておくと書きやすくなると思います。


互いの攻撃ターンは、

  1. Aがすごい技を出す

  2. Bが圧倒される

  3. しかし、Bがさらにすごい技を出す(逆転)

  4. Bのターン

  5. Aが圧倒される

  6. しかし、Aがさらにすごい技を出す(逆転)

  7. Aのターン(1に戻る)

のように、すごい技→さらにすごい技→さらにさらにすごい技……とエスカレートさせるのが基本です。

つまり逆転しながら進んでいくわけですね。


繰り返しが多ければ多いほど戦闘は長引き、すさまじい戦いになっていきますが、あまり長くすると読者が疲れるので調整は必要です。
(戦闘シーンを読むのは、普通のシーンを読むより疲れます)


また、当然ですが、主人公と敵の実力によって展開は違ってきます。

たとえば、主人公がめちゃくちゃ強くて無双する場合は、ずっと相手が圧倒される立場になりますね。

  1. 相手が技を出す

  2. 主人公が軽くねじ伏せる

  3. さらに相手が技を出す

  4. 主人公が軽くねじ伏せる(1に戻って繰り返す)

最後は、相手が卑怯な手を使い(薬物を使うとか、仲間を大勢呼ぶとか)、ピンチになったと思いきや、主人公が本気を見せて勝利する、といった感じが定番でしょうか。

無双する場合でも、多少のピンチを演出し、最後にひっくり返す(逆転してやっぱり圧勝する)とうまくいきます。


また、主人公が負ける場合でも、

  • 全力を出し切って負けるが、相手に一目置かれる

  • ボコボコにされるが、最後に一矢報いる

  • 大口を叩いたくせに敗れるが、自分の弱さを認め奮起する

といった風に、主人公を下げっぱなし(負けっぱなし)にしない方が無難です。
(もちろん完全に負ける場合もあるでしょうが)


いずれにせよ、おおざっぱな構成を踏まえた上で、そのシーンでどうしたいのか、たとえば、

  • 主人公が圧倒するところ見せたいのか

  • 敵の強さを見せたいのか

  • 実力が拮抗するところを見せたいのか

  • 主人公が奮起するところを見せたいのか

といった意図によって展開を変える、と考えると書きやすいと思います。


2.見せ場:見せたいのはどこか

2つ目は見せ場を意識することです。

戦闘シーンを書くときは、おおまかにでもいので、どこを読者に一番印象づけたいかを考えましょう。


戦闘シーンは、見せ場がうまく伝わればそれで成功です。

そのほかの部分は、見せ場を演出するための段取りくらいに考えるといいでしょう。


戦闘シーンの典型的な見せ場は2つあります。

  1. 主人公または敵の強さが際立つ場面

  2. 主人公が逆転する場面


1の強さが際立つ場面というのは、たとえばこんな場面ですね。

  • 大技の威力がわかる場面

  • 雑魚を蹴散らす場面

  • その強さに人々が恐れおののく場面

  • 圧倒的に無双する場面


また2の逆転する場面というのは、たとえば、

  • 敵が卑怯な手を使ってピンチになるが、(逆転して)圧勝する場面

  • 敵にぼこぼこにやられるが、敵が帰還した後、(逆転して)実は傷をつけられていたことに気づく場面

などでしょうか。


見せ場はアクションの中で起こすというよりは、アクションを止めて(時間を止めて)、もたらされた結果を(周りの反応や説明も含めて)描写することで印象づけることができます。

つまり見せ場は、動いている最中ではなく、止まった場面で起こるということです。


3.表現:できるだけ簡単にする

3つ目は簡単にすることです。

戦闘シーンは細かく書こうと思えばいくらでも細かく書けます。

左足を踏み込み、右腕を引いて、体をひねり、鋭い呼気とともに右の拳を繰り出した——といったように、運動の詳細を逐一描写していくことはできます。


ですが、そういった細かい描写をしても、実際のところ、読者は読んでいません笑

細かい戦闘描写は飛ばし読みする人の方が多いと考えましょう。
(もちろん読者層にもよりますが、私がいるジャンルではそうだと思います)


読者が読みたいのは、あくまでも、戦闘の結果として示される主人公の強さや不屈の闘志といったものです。

戦闘を描写することに注力するのではなく、見せ場をつくり、読者の期待に応えることを優先するといいでしょう。


もちろん、ある程度詳細に描写してもかまいません。

細かい描写はリアリティを底上げしますから、見せ場を効果的に演出するのにも役立ちます。


ですが、上でも書いてきた通り、読者は見せ場を読んで気分よくなりたいだけです。

迷ったら、戦闘シーンを通して、読者に何を見せたいのかを思い出すといいですね。

当然ながら、細かい動きを見せたいわけではないはずです。


ところで、アクション描写のコツとして、修飾語を省くとか、一文を短くするとか、改行を多くして読む速度を上げるとか、そういったものがありますが、これらは検索すればすぐに分かると思います。

ですので、ここではもうちょっとライトエンタメ向けのコツをご紹介しておきましょう。

コツは、動きを描写するのではなく、それらしいワードを使うことです。


たとえば、「掌底を連続して放つ」といったアクションを描写するのはなかなか難しいですし、描写できたとしても読むのには苦労します。

ですので、そんなときは、それっぽいワードをちりばめてみましょう。

こんな感じです。

その瞬間——彼は喉、胸、みぞおちと、人体の正中線に沿って掌底をたたき込んだ。必殺の三連撃が炸裂し、敵の上体がぐらりと揺れる。


動きはほとんど書いていないことがわかると思います。

ですが、何か攻撃が決まったことはわかりますね。


文章から動きを脳内で再現するのは難しいので、動きだけ書くと読者の負担が増えてしまいます。

ですから、どう動いたかは書かずに読者の想像に任せ、その想像を支えるようなワードを出しておくと考えましょう。

すると、シーンは分かりやすくなり、しかも玄人っぽい印象を与えることもできるのです。


動きばかり書いていると気づいたら、動きは書かずにワードに頼ってみてください。

読者の脳内には今まで見てきた動きの記憶があるので、逐一動きを描写しなくてもわりと補完してくれるものです。


今回のまとめ

「創作Q&A 文章表現によるアクションや戦闘シーン」でした。

  1. 戦闘シーンで気をつけていること

    1. 構成:戦闘シーンの構成を知っておく

    2. 見せ場:見せたいのはどこか意識しておく

    3. 表現:できるだけ簡単にする

  2. 構成

    1. 戦闘シーンの構成はだいたい同じ

    2. 基本は、逆転また逆転

    3. 何を見せたいかによって展開は異なる

  3. 見せ場

    1. 見せ場さえうまく伝われば成功

    2. そのほかの部分は見せ場を演出するための段取り

    3. 見せ場は動きの中ではなく、止まった場面で起こる

  4. 表現

    1. 読者は細かい描写を読んでいない

    2. 見せ場をつくって読者の期待に応えることを優先する

    3. 動きを書くのではなく、それらしいワードをちりばめる


これで回答になっているかちょっとわからないですが、いかがでしょうか。

やや抽象的になったかもしれません。

よくわからなかったらまた言ってくださいね。


さて、改めてまして、Hさん、ご質問ありがとうございました!

質問に答えてみると、自分でもいろいろ気づきがあります。


引き続き、お悩みやご質問を受け付けています。

お気軽にコメントやメールでどうぞ。

それではまたくまー。


(2024.3.11追記)

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