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小説新人賞とネット小説の勝負どころの違い

新人賞とネット小説(および市場)はかなり違います。

戦うときに力を入れるべきポイントが違うのですね。

その違いが分かると、勝負を有利に進めることができます。

今回は「新人賞とネット小説の違い」です。


小説は2つの面に分けられる

何度か同じことを書いていますが、小説(商品)は以下の2つの面に分けられます。

  1. 中身(コンテンツ)

  2. 外見(パッケージ)


中身は文字通り、小説の本文です。


外見
は市場においては、

  • タイトル

  • あらすじ(あれば)

  • 表紙

ですね。

ネット小説ではタイトルあらすじの2つになります。


この基本を押さえた上で、新人賞とネット小説の違いを見ていきましょう。


誰がどこを見ているか

新人賞とネット小説では、当然ですが見ている人が違います。

  • 新人賞の応募作を見ているのは…

    • 下読み

    • 編集者

  • ネット小説(および市場)の作品を見ているのは…

    • 読者(消費者)


編集者と読者は、作品を見る目的も違います。

ですから、どこを見ているかも自ずと違ってくるわけです。

図にすると簡単でしょう。

どこを見ているかが違う


編集者は「良い作品かどうか、受賞させるに値するか」を判断するために応募作を読んでいます。

ですから、編集者は基本的に中身を見ています。


一方読者は「面白そうかどうか、読むに値するか」を判断するために作品を見ています。

ですから、読者は外見を重視するのです。


従って、力を入れるべきところは当然ながら、

  • 新人賞

    • 中身

  • ネット小説(および市場に出る作品)

    • 外見

となります。


それぞれの戦略は?

勝負どころが違うので、それぞれの戦略も違ってきます。

簡単に見ていきましょう。


新人賞

新人賞は、中身を読んでくれるのが最大の特徴です。

当たり前だと思うかもしれませんが、ネット小説や市場では、中身を読む前に「読む作品を選ぶ」というプロセスがあり、そこで選ばれない限り、中身を読まれることはありません。

ですから、無条件に中身を読んでくれる、というのはとても珍しいことなのです。


新人賞は中身を読むので、当然、中身の良し悪しが主な判断基準になります。

ですが、その際の中身の良さというのは、

  • 端正な文章

  • 巧みな構成

  • 意外な結末

  • リアルな人物

といったことではありません。


もちろん、これらを備えているに越したことはありませんが、新人賞での勝負どころは、

  • 他の応募作との違いを見せること

だと考えています。


超絶上手い作品ならまだしも、普通に上手い作品なら、いくらでも応募されてきます。

ですから、その中で他の作品との違いを見せない限り、選ばれることはないと考えた方がいいと思います。


したがって、新人賞狙いの戦略を一言でいうと、

「ちょっと変な作品を書こう」

ということになるでしょう。


ちょっと変、というのは、

  • 誰も書かなかったニッチなものを書く

  • 奇妙な視点や観点から書く

  • おかしなこだわりを書く

  • 全体に大きな仕掛けを施す

などが考えられるかもしれません。


同じことを何度も言いますが、普通くらいの作品なら山ほど応募されてきます。

その中で埋もれてしまうような作品が選ばれるわけがありません。

何か違いを入れて少しでも目立ちましょう。

編集者の目に留まるためには、やや悪目立ちするくらいでもいいと思います。


ネット小説や市場

一方、ネット小説や市場では、極端に言えば中身は二の次です。

外見に全力を注ぎましょう。

なぜなら、読者(消費者)は外見しか見ていないからです。


外見で主に注力すべきところはタイトルです。

ですが、タイトルに力を注ぐといっても、どうすればいいか分からないかもしれませんね。


こう考えるとわかりやすくなります。

簡単に言うと、読者が欲しがっているのは、今までなかった「新しさ」です。

「新しさ」が他の作品との違いになるわけですね。

ですから、最初に「新しさ」を考え、その新しさをタイトルで表現する、と考えるとすっきりすると思います。


タイトルに「新しさ」が入っていなければ、読者は手に取らないと考えた方がいいでしょう。

今までの作品と同じなら、読む必要がないからです。


ですので、ネット小説や市場での勝負どころを一言でいえば、

  • 新しさをタイトルに入れる

ということになります。


作品に「新しさ」を入れる戦略には大きく2つ考えられます。

  1. 要素を新しくする

  2. 新しい欲望を提案する


「要素を新しくする」は既存のヒット作のどこかの要素を新しくすることです。

ごく単純には、5W1Hのどこかを新しくすると考えればいいでしょう。

ヒット作のバリエーションを作るということですね。


もちろん、上でも書いたとおり、新しくしたら、その新しさをタイトルに入れなければなりません。

わりとイージーな戦略ですが、上手くいけば、ちゃんと売れる(読まれる)作品になります。


「新しい欲望を提案する」は、もっと抜本的な戦略です。

あるジャンルにおいて、読者が好きな物語のパターンというのはだいたい決まっています。

その基本パターンを踏襲しつつ、新しさを導入するのが、前述の「要素を新しくする」でした。


この戦略はそれとは違い、基本パターン自体を提案するというものです。

つまり、読者が欲しがる新しいパターンを一から作り出すということですね。


もちろん作り出すのは難しいのですが、方法は分かっています。

それは、

みんなが「いいな」と思っているけど、まだ言葉になっていない欲望に名前をつける

ことです。


何度か例を出していますが、誰もが「異性から告白して欲しい」と思っていますよね。

ですが、その思いは言葉になっていませんでした。

その欲望を端的に表現したのが「告らせたい」であり、その言葉をポジティブにしてポンコツ恋愛戦略ものにしたのが、『かぐや様は告らせたい』なのです。


他にも同様の方法でヒットした作品がたくさんあります。

これが出来るのが最良でしょう。

ネット小説や市場で勝負するなら、最終的に目指すべきはこの方向だと思います。


今回のまとめ

「新人賞とネット小説の違い」でした。

  1. 小説(商品)は2つの面に分けられる

    1. 中身(コンテンツ)

    2. 外見(パッケージ)

  2. 新人賞は

    1. 編集者が

    2. 中身を見る

  3. ネット小説、市場は

    1. 読者が

    2. 外見を見る

  4. それぞれの戦略は

    1. 新人賞

      1. 大量の応募作との違いが必要

      2. ちょっと変な作品を出す

    2. ネット小説ほか

      1. 新しさをタイトルに入れる

      2. 新しさを出すには

        1. 既存作の要素を新しくする

        2. 新しい欲望を提案する

私もいつかは「新しい欲望の提案」をしてヒット作を出したいものです。

それではまたべあー。


(2023.6.26追記)

おー!

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