お勉強447:センチネルリンパ節陽性でも、廓清はしない時代

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2313487

センチネルリンパ節転移陽性例に関する新たな知見というか
最近の流れの「ALNDいらんやろ」論文、また出る。

臨床的にリンパ節転移陰性で、
センチネルリンパ節にマクロの転移を1-2個有する乳癌患者で
腋窩リンパ節郭清の省略は許容できるか?
という非劣勢試験。
放射線治療は前提。
(乳房温存なら必須、乳切後はその国のガイドラインに従う)

対象は比較的広く、
T1~T3の原発性乳がん患者が対象 (T3だと5㎝越え…)
乳切の患者も含まれている。
(ただし、断端陰性は必須)

センチネルリンパ節転移巣が1個または2個の患者をランダム化
(最大径2mm超のマクロ転移。節外浸潤も許容と
 マイクロメタスタシスがほかにあっても許容と)

腋窩リンパ節郭清を行う群
行わない群(センチネルリンパ節生検のみ)に
1:1の割合で割り付けた。

プライマリーエンドポイントは全生存期間であったが、
今回は、事前に規定された副次的エンドポイントの
無再発生存期間についての報告。

2015年1月から2021年12月の間に、
5カ国で(ほとんどデンマークとスウェーデン)
合計2766例の患者が登録。
1335人がセンチネルリンパ節生検のみを受ける群に、
1205人が腋窩リンパ節生検を受ける群に割り付け

放射線治療は
センチネルリンパ節生検のみ群では89.9%に、
郭清群では88.4%に施行
であった。

海外の試験にしては珍しく75歳以上が15%ぐらいいる
中央値は61歳
腫瘍径は中央値2cm T1/2/3は55%/40%/5%程度
8割ぐらいが1個のみのマクロメタ 1/3程度が節外浸潤+
乳切が35%程度

luminal typeが85%程度と大勢 TNが4%程度
全身治療としては
アジュバントケモは65% アジュバントホルモンは93%
抗Her2治療は9%

追跡期間中央値は46.8ヵ月の時点で
全体で191例が再発または死亡した。
廓清なし群の5年無再発生存率は89.7%
(95%CI、87.5~91.9)
郭清群では88.7%
(95%CI、86.3~91.1)

ハザード比は0.89(95%CI、0.66~1.19)で
非劣性マージンを有意に(P<0.001)下回った。
(むしろ廓清しない群のほうが上に来ている)
再発・死亡原因は大きな差なし

廓清群では4個以上の転移を13%ぐらい認めている

腋窩リンパ節郭清の省略は、標準的廓清と比較して非劣性であった。
腋窩郭清を省略しても、全身治療と放射線治療を適切に併用すればOK

従来の試験よりも幅広い患者層
(高齢者、T3腫瘍、乳房切除例、節外浸潤陽性など)を含む
のがポイント。
OSも非劣勢が証明されるのではなかろうか…

もう臨床的にLN陰性なら、廓清しない(RTは前提)というのも
今後正当化される時代が来るかもしれない。
(試験は走っているらしい)

臨床的にリンパ節転移陰性例での
リンパ節廓清は「全身治療(化学療法)の必要性」を判定する
サロゲート的な意味合いに限るようになるかもしれません…

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