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S団連のSaleに関する指針

むかしむかし、あるところに、一般社団法人 日本Sale団体連合会(略称:S団連)という組織がありました。

S団連は、店舗のSale(セール)情報の氾濫によって引き起こされる『そんなにSaleばっかりだと、買い時がいつなのか分からへんで問題』を抑止するためにSaleに関する指針を作り、加盟企業への周知徹底に努めていました。

加盟企業がSaleの時期や期間や割引率についての指針を守ることで、消費者は「なるほど、買い時は今やねんな!」となります。

ですが、そんなS団連の思惑はなかなか上手くはいかないようです。

ある日のこと、S団連会員の犬山は、S団連トップの猫田のもとを訪ねました。犬山は深刻そうな顔つきをしていますが、どうしたのでしょうか? 

猫田:犬山さん、今日は何用ですか?

犬山:S団連の脱退表明の件で来ました。

猫田:それは急な話ですね。半年前のS団連会合で「一緒に頑張りましょう」って話をしたばかりじゃありませんか? 何があったんですか?

犬山:うちは、今年のクリスマス商戦に勝負をかけることになりましてね。S団連の「クリスマスSaleは12月1日から告知開始」というスケジュールは、11月2週目あたりからクリスマスSaleを始める、奴ら(外資系企業やベンチャー企業を中心としたS団連の非加盟企業の面々)と戦う上で足かせになるんですよ。

猫田:気持ちは分かります。ですが、ここは我慢ですよ犬山さん。S団連の結束力を奴らに見せてやろうじゃありませんか。それにクリスマス商戦で連戦連勝の御社であれば、例年通りの12月1日スタートでも十分に戦えるのでは?

犬山:今年は事情が違うんです。当社が今年に仕掛けるSaleは「あわてんぼうのサンタクロースがクリスマス前にやって来て、ドンシャララン・クリスマスSale」なんです。12月1日スタートでは、あわてんぼう感がないんですよ。あわてんぼうじゃなきゃ、、どこよりも先行してクリスマス始めなきゃ駄目なんですッ!

猫田:こっ、この、あわてんぼうめっ!

犬山:・・・。

猫田:ふむ、そういったご事情であれば脱退もやむなしですね。

犬山:分かっていただけてよかったです。それにしても奴らはやりたい放題ですね。Sale時期の前倒しはもちろん、Saleの頻度が半端ない。クリスマスSaleにカウントダウンSale。新年Saleにウインターバーゲン。バレンタインSaleにホワイトデーSale。そして決算還元Sale。しかも、これらのビッグSaleとビッグSaleの隙間を埋めるように開催されるクリアランスSale。

猫田:奴らのSaleの無限コンボの影響で『そんなにSaleばっかりだと、買い時がいつなのか分からへんで問題』の解決は遠のくばかりですな。

犬山:それに奴らはポイント&クーポン戦略にも長けていますからね。

猫田:ええ。その影響で『そんなにSaleばっかりだと、買い時がいつなのか分からへんで。でも、今だけお買い得とか言ってるし、割引クーポンの期限が近いから、ついつい買っちゃう問題』が新たに出てきて、消費者の財力ゲージは常にカツカツですよ。

犬山:さらに奴らは、ディスカウントも大胆にやりますからね。

猫田:ええ。そのせいで『そんなにSaleばっかりだと、買い時がいつなのか分からへんで。でも、今だけお買い得とか言ってるし、割引クーポンの期限が近いから、ついつい買っちゃう。でもでも、普通に考えて、いっつも安いということは、ディスカウント後の値段が本当の定価なんやろ?問題』が新たに生まれてくる温床になっていて、消費者のSaleに対する信用がガタ落ちですよ。

犬山:奴らのやりたい放題と、そこから生まれる新たな問題。S団連の結束力をもってしても解決は困難。S団連のSaleに関する指針も廃止するタイミングかもしれません。もう、ぐうの音も出ませんね。

猫田:・・・。

犬山:どうしました?

猫田:ぐう。

犬山:出たッ、ぐうの音、出たッ!!

一方、その頃。

都内某所の喫茶店ルノアール。黒ローブを纏った25人の男女が、水晶に映し出された「S団連の猫田と犬山のやり取り」の映像を眺めていました。

???:クソッ……S団連の指針が廃止されるのも時間の問題か……

A団連会長:だがS団連は、我々アルファベット26団連の中でも最弱……

B団連会長:こうも簡単にやられるとはアルファベット26団連の面汚しよ…

総帥:おい、K団連。次は貴様のところの指針がヤヴァイのではないか?

K団連会長:ギクゥッ!!!

おしまい。

最後までお読みいただきありがとうございました!