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昭和のひな祭り

もうすぐひな祭りです。女の子の成長と幸せを願うお祭りです。

あかりをつけましょぼんぼりに お花をあげましょ もものはなぁ~。

二月の半ば、桐の箱から出したお殿様、お姫様(内裏雛)の顔を覆っていた和紙を外します。虫よけのしょうのうの匂いぷう~んとします。少し和らいだ日の光が障子越しに内裏様の顔を包みます。

決まって母は、「本当にきれいなお顔!」と毎年判を押したようにつぶやきますが、小さな私は細い目の真っ白い顔が怖くてあまり嬉しくもありませんでした。

金屏風を背景に雪洞と内裏雛。二段目は三人官女
三段目には五人囃子。その順番は祖母が「こっちから大きな楽器から並べてごらん」と言ったことをきっかけに年に一度の事でも間違えることはありません。
四段目には右大臣、左大臣。右大臣は若くて、左大臣は老人。
二人の間にはお目当ての菱餅と雛あられを置きます。

「とよす」の花あられは白やピンク、若草色でひとつの袋に3個ほどチョコレートをコーティングしたのが入っています。貴重です!ちゃんと確認しました。器の中のあそことこことピンクの下!

五段目は、泣き上戸、笑い上戸そして怒り上戸のトリオでなんだかコミカルで好きでした。

最後の段にはタンス、鏡台、お針箱などお嫁入り道具を飾り、最後は籠や御所車。なぜかこの小さなお道具たちだけ残っています。

半日かけて飾っても「お嫁に行き遅れてはいけない!」とひな祭りが終わるとそそくさとしまってしまいます。


そんな短い時間だけ床の間に飾られてすぐさま暗い箱の中って。なんだか蝉のようで、「かわいそうだからもう少し」と思うのですが聞く耳持たずの2人は手際よくササ―としまいます。

まあ私は焼いた菱餅を砂糖醤油につけて食べるのとチョコレートの貴重なあられを一つずつ口に入れるのが楽しいだけでそれ以上に関心はありませんでした。あっさりしたものです。

その前にほぼ無理やりに晴れ着を着せられてひな壇の前で家族写真を撮ります。そうそう、夕ご飯は必ずちらしずしにハマグリの澄まし汁でした。いつもゆがいた三つ葉を2本まとめて結わえるのが私の仕事。

娘の時には義母が彼女のために作った木目込み人形の内裏雛を飾ってお祝いしました。

姑は娘の顔を見ることもなく逝ってしまいましたが、女の子が出来たらと着物の布選びからたいそう熱心でした。それを飾ることが供養だと思い、娘にもその気持ちを話しました。

コツコツと布を人形の原型の溝に入れ込んでいくのですが、根気のいる作業です。身体が丈夫とはいえないのに何日もかかって作ってくれました。

二年前に生まれた孫娘にはさっさと娘が用意して写メを送ってきました。
積み木でできたお雛様は、マグネットでお団子みたいに重ねるとちゃんと人形になります。しまいやすくて普段も遊べる、場所も取りません。それはそれで今風のお雛様。娘らしいなあと感心しました。

いろんな時代のいろんなお祝いの仕方がありますが、それぞれ親が子供の幸せと健康を願うことに変わりはありません。日本の伝統行事を大切にする母となった娘をちょっと褒めたくなりました。

今日もいい日にしましょう!

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