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日経平均33年ぶり高値! 典型的「もうはまだなり」か?

5月19日(金)の日経平均株価は7日続伸。終値は3万808円35銭と、2021年9月14日につけたバブル経済崩壊後の高値(3万670円)を上回り、1990年8月以来およそ33年ぶりの高値となった。17日(水)に終値で3万円の乗せたときには、大台達成感から「もういったんは一服だろう」という雰囲気が漂っていたように思うが、週後半に向けてむしろ加速する動きをみせている。

「“恰好イイおじさん”銘柄が増えている」

「“キレイなおじさん”銘柄、“恰好イイおじさん”銘柄が増えている」。
19日(金)、日経CNBCに出演したレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼最高投資責任者に控室で日本企業の最近の印象について聞くと、こんな答えが返ってきた。「少し前は、褒章やゴルフの話ばかりが多かった日本の経営者だが、このところは真剣に企業経営を考える経営者が増えている」(藤野さん)という。背景には、東京証券取引所が株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業に、改善と説明を求めていることもあるのだろうが、必ずしもそればかりではない。シンプルに経営者の若返り、代替わりが進むとともに、投資家に評価されうるような経営をする企業が増えているのではないか――。一部の先進的企業や新興企業にとどまらず、歴史のある伝統的な企業の間でも、注目に値する変化をみせる企業が増えているように思う。

“代替投資先”としての注目も

日本を巡る地政学的な環境の変化も見逃せない。21日(日)に閉幕したG7広島サミットはある意味で象徴的だったが、中国、ロシアなど覇権的国家が投資対象になりにくくなっていることもあり、“代替投資先”としての日本の位置付けが世界から注目されている。これは必ずしも、マネーの世界だけの話ではなく、半導体産業、あるいは不動産などにもみられるように、リアルな投資が相対的には地政学リスクが小さく、安定的な政治体制を持つ国としての日本が浮上している。

“アベノミクス並み” の海外投資家買い

これらの内外の情勢変化の結果として、海外投資家の買いが日本に向かっている。東京証券取引所によると、海外投資家は5月第2週(8~12日)まで7週連続で日本株を買い越し、この間の累計額は2.8兆円を越えた。7週間の買い越し額としては「アベノミクス」初期の13年以来の規模となる。4月に12年ぶりに日本を訪れたバークシャー・ハザウェイのバフェット氏が商社株の買い増しや日本市場の魅力を語っていたこともあり“バフェット効果”を指摘する声も多い。確かにそうなのだが、もちろん日本株を買っている海外投資家はバフェット氏だけではない。ある外資系運用会社の日本法人トップは最近、こんな風に話していた。

「海外から日本を見るとね、ランチもホテル代も不動産も株も、」何もかもが安く映るんだよ。日本にいると分かりにくいけれど……」
為替相場の円安進行も大きな背景だろうし、先進国の中ではもはや極めて希少といえる金融緩和政策を続けていることも日本の割安さを際立たせる。ちょっと切ないところがあるのは否めないが、確かに日本は「安い」のだろう。

少々分かりにくいのが、「なぜ“今”、日本株買い→強い上昇が始まったのか?」ということだ。フィデリティ投信の鹿島美由紀副社長運用本部長は4月下旬のメディア・ブリーフィングで「日本株の動きそれ自体が、海外勢の注目を集めるきっかけになり得る」と指摘していた。すでにアベノミクス以降の日本株のパフォーマンスは海外先進国と比べてそん色ないと言っていいような状態だが、加えてPBR1倍割れ企業の再評価のような要素が加わり、今現在は“独歩高”の様相だ。日本の金融機関の米国駐在の友人に聞いたのだが「バフェット氏の訪日や日本市場への注目も、日本株それ自体のパフォーマンスも、このところ連日のようにメディアではゴールデンタイムに報じられている」という。こんな雰囲気は久し振りだ。

もちろん、米国をはじめとするグローバル経済の先行きは極めて不透明。肝心の日本企業業績も、今期は思ったよりも慎重なところが多い。何より日本の機関投資家、個人投資家の多くが足元の相場上昇を懐疑的にみている。だが、正直言って相場格言でいうところの典型的な「もうはまだなり」にもみえる。もう天井だろうといって売っている投資家が多い間は相場が上がり、早くに売ってしまった、買いそびれたと焦る動きがさらに相場上昇を加速する展開?急ピッチな上昇だけに、荒っぽい展開を伴いながらではあると思うものの、多くの人が感じるより強い相場は、まだしばらく続くのではないか――。

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