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Smart Operation Building |ビル運用の手間を70%削減する5つのアプローチ

後藤 悠
日建設計 スマートプラスラボ
ラボリーダー

少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、都市インフラとしてのオフィスビル運用に大きな影響を及ぼしています。2030年には労働市場全体で約640万人の労働力不足が発生(※1)すると言われており、特にビルメンテナンス業界では2015年以降約80%の現場で人材不足が発生(※2)しています。
※1 出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」, 2018/02/21
※2 出典:ビルメンテナンス情報年鑑2022

これに対し、国ではこれまで義務付けられていた定期、常駐、目視による点検項目など、いわゆるアナログ規制を緩和し、デジタル化による効率改善に取り組んでいます。

これらの背景を受け、日建設計はビル管理業務の手間を最大70%軽減する「Smart Operation Building」というコンセプトを提案しました。建築設計の工夫と最先端のテクノロジーを融合させ、ビル管理の効率を大幅に向上させることを目指しています。

Smart Operation Buildingは、「LESS(モノを減らす)」「EASY(ラクなものを選ぶ)」「ROBOT(ロボットに任せる)」「CLOUD(データを活かす)」「ON DEMAND(必要な時だけ)」の5つのキーワードに基づいています。

「LESS」では、建物内のメンテナンスの手間がかかるものを削減し、設備や可動部の管理点数を減らすことに重点を置きます。例えば、空調や照明の物理スイッチをなくし、WEBやアプリからの操作に変更することや、水回りや喫煙室を削減、集約することなどが考えられます。これにより、故障リスクや清掃の負担の軽減を図ることができます。

「EASY」の概念では、メンテナンスが容易な設備や清掃しやすい仕上げを選択します。たとえば、汚れが付きにくく、掃除が簡単な素材の使用や、設備のメンテナンスポイントをアクセスしやすい位置に配置することなど、日常の維持管理をより簡単に行う工夫がこれにあたります。

「ROBOT」は、これまで人が行ってきた管理業務のうち、長時間作業や広域での作業をロボットで代替する思想です。建物のロボットフレンドリー化を図ることで、清掃ロボットや配送ロボットの効率的な活用を可能にします。日建設計も会員であるロボットフレンドリー施設推進機構が中心となって、ロボットフレンドリー施設の規格化、標準化が進められています。

「CLOUD」の概念は、ロボットではできない人による管理業務も、できるだけ遠隔から複数の建物をまとめて実施しようという考えです。これらは現地でのカメラやセンシングと、クラウドサーバーを利用したデータ連携技術により、実現することが可能です。スマートメーターを用いたリモート検針や地震時の被災度判定などもこれらの技術の活用事例です。

「ON DEMAND」は、どうしても人が現地で行う必要のある業務であっても、回数や時間を固定するのではなく、必要なときのみ現地に行くことで頻度を最適化するという概念です。例えば、トイレの利用状況に応じた清掃頻度や消耗品の補充タイミングを最適化し、効率的なビル運営を実現します。これにより、ビル内の清潔さを保ちつつ、無駄なリソースの使用を削減します。

Smart Operation Buildingの提案は、労働力人口の減少という課題に対し、新しい時代のオフィスビルを構築するための重要なステップです。最初に提案を行った2020年初頭には、実現・実装されていない技術が大半でしたが、それから3年以上、コロナ禍でのリモート技術の進展も経て、多くの技術が急速に実現されてきています。このSmart Operation Buildingのコンセプトは今後のビル管理の将来を大きく変える可能性を秘めています。私たちは、これらのテクノロジーを通じて、持続可能な社会の構築に貢献していきます。

プレスリリース

東急不動産、東急コミュニティー、ソフトバンクおよび日建設計によるロボットフレンドリーな環境の構築に向けた共同研究の成果を発表
施設・人・ロボットの観点から、ロボフレな環境の実現に向けた課題と有効な対策を確認


集合住宅における搬送課題解決に向けロボットフレンドリーな環境構築 〜「令和5年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」の間接補助事業者に日鉄興和不動産、ソフトバンクロボティクス、日建設計、日建ハウジングシステムが採択〜

後藤 悠 
日建設計 スマートプラスラボ
ラボリーダー
機械設備設計者として日本生命保険相互会社東館、京都市役所分庁舎で空気調和・衛生工学会学会賞等を受賞。現在はSmart Operation BuildingやRobot-Friendly Buildingの実現にむけた研究開発、コンサルティングに取り組んでいる。

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