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日建設計・設備フォーラムから生まれたアイデア③「本社オフィス×グローバルデザイン」

もし、IT最大手企業の本社の設計をするならどんな提案?

武田 佳奈子
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ 

浸透する多様な働き方 vs. オフィス回帰論

コロナ禍を経てリモートワークが社会的にも浸透した今日では、一つの拠点に捉われない働き方がこれまで以上に身近なものとなりました。
他方、GAFAMと呼ばれるようなグローバルIT企業の中には、オフィス勤務に重点を置いた業務スタイルを推進する動きも少なくないようです。

こうした中で、新たに本社オフィスをつくる意義とは何でしょうか。世界のテック企業が集積する都市カリフォルニアを舞台に、これからの本社オフィスのあり方を地域課題や環境デザイン、働き方といった切り口から模索してみました。

より広域でオフィスを捉えてみる

近年シリコンバレーでは、大規模オフィス開発により都市の急拡大・急成長を続ける一方で、周辺地域の住宅需要増に伴う地価の急騰、交通渋滞の悪化といった負の側面も生み出してきました。

このような地域課題を解決するオフィスのありかたとして、職住近接のオールインワンプレイスをテーマとしました。本社オフィスに必要な“オフィス外“機能として住宅や商業施設、公園、農地etc.を定義し、敷地内に取込むことで、職住の境界を曖昧にします。

「自給自足」型海上サステナブルプレイス

消費される電力を100%再生可能エネルギーで賄うこと

カリフォルニアは米国国内でも有数の自然エネルギーポテンシャルの高い土地といわれています。そのポテンシャルを最大限活かすことができるのは、日照が十分にとれ、水が無尽蔵にあり、安定した風を得ることができる「海上」ではないかと考えました。

提案するのは、エネルギー・水・農作物を自給自足で賄うことのできる海上オフィスです。高い日照量を生かした太陽光、安定した風向風速による洋上風力、潤沢な海洋資源を生かした海洋インバースダム(※)を主なエネルギー源とし、オンサイトでの再エネ100%実現を目指します。水はつくるだけでなく、生活排水の一部を雑用水として再利用するといった水循環の構築によって資源の有効活用を図ります。さらには魚の排泄物を水耕栽培に利用する次世代の循環型農業“アクアポニックス“もこの立地特性をいかした営みになり得るでしょう。
(※)海中の巨大なダムに海水を流出入させ、蓄電・発電を繰り返すもの

これからのオフィスには”遊び”も重要?

最後に、優秀な人材の確保には魅力的な働く環境の提供が不可欠です。これからは「職住近接」にとどまらない、「+遊」の付加価値がより重要になってくるのではないでしょうか。綺麗な海中空間でリラックスして仕事をすると生産性が向上する、といった体験としての遊びがその一つです。

加えて、今日は天気がいいから公園で会議に出ようかな、とか、オフィスで同僚とコーヒー片手に雑談しに行こう、という個人が自律的に選択できる余地、ゆとりとしての遊びも欠かせません。こうした要素が個人のモチベーションを向上させ、組織の競争力アップにつながるのではないかと期待します。


武田 佳奈子
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
2020年日建設計入社。建物の信頼性、環境性能、ヒトに与える快適性の最大化を目指して電気設備設計に従事している。大事にしている言葉は「よい設計者は、よい生活者から」



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