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【読んだ】みらいめがね: それでは息がつまるので

おすすめ度 ★★★★☆

ヨシタケシンスケさんのイラストが可愛くて借りてみた、荻上チキさんのエッセイ。
エッセイは多様性を軸に、様々なテーマで描かれている。それぞれに読みやすく、考えさせられる良い内容だった。

何より、章末にあるヨシタケさんのマンガが、可愛くて面白くて、しっかり刺さる中身があって、最高だった。
マンガだけ読んだ息子もプークスクス笑っていた。
笑いを入れつつ、子どもにもわかるように伝えるってすごいことだよなぁ。


4年でも世の中は変わる

エッセイのテーマは、ジェンダー、いじめ、うつ病、国際情勢、親子関係など、多岐にわたるが、重いテーマでも重すぎず、といって笑いに走ることのない、ちょうどよい塩梅。

2019年の本なので、LGBTという言葉が出だした頃だったりして、「たった4年でも意外と世の中よくなってるんだな」と少し前向きな気持になれた。
今ではLGBTQ+。どこまで多様化するんだろう?
名前をつけることになんて、意味がなくなるくらい多様性が当たり前になったらいい。

適度に人を嫌うには

人を嫌うときは、上手に適度に嫌うべき、という話に共感した。
学校では、未だに「みんな仲良く」と言われるが、そんな事ができないことは誰でもわかっている。

人は人を嫌いになるものだ。そして大人になるということは、嫌いな人と上手に距離を取る方法を学ぶことでもある。距離のとり方が不器用だと、人に生きづらさを押し付けることになる。

荻上さんの気をつけている「人を嫌いになる作法」の一つが「その人に付属するものまで嫌いにならないこと」だそうだ。
わー、ホントその通り!今日から使おう!

世の中には、自分がその人を嫌いだということを正当化するため、その人の持つ様々な属性ごと否定する人がいる。「これだから女は」とか「これだから〇〇人は」とか「これだから〇〇出身者は」と言った具合に。
(中略)
ある人が嫌いだからといって、その人と同じ属性の付く人すべてを呪う必要はない。それをした途端、そのふるまいは差別やハラスメントに堕ちる。

本当に、そのとおりだと思う。自分でも気をつけていたいし、子どもたちにもそうならないように、気をつけなきゃいけない。
かなり気をつけていないと、ついやってしまいそう。

よくわからないものを無碍に否定しない

私はゲームをしないし、もともとゲーム否定派だった。親がそうだったというのもあるし、偏見もある。スマホも、最近スマホ中毒の本をいくつか読んだのもあり、冷ややかな目で見ている。

荻上さんは大のゲーム好きで、ゲームがあったおかげでいじめを受けても生きることができたし、「ゲームのすべてが僕のためになった」と言っている。

ソクラテスは文字の発明を、怠惰な技術だとなじった。明治の教育者は、小説は若者を犯罪に走らせると批判した。いつしか活字は教養となり、今度はマンガやアニメがバカにされた。評論家・大宅壮一はテレビ(メディア)を「一億総白痴化」と批判した。

私も、歳を重ねるごとに「若いもんの新しい文化はようわからんわ」と思うようになったし、もともと偏見が強い方なので「ようわからんけど否定したい」という気持ちがむくむく沸き上がってくることがある。
でも、ソクラテスでさえそうだった。今では教養として敬われているものでさえ、批判されてきた。

もちろん、弊害やトラブルはあるだろう。だけど、一面的にものを見ないようにしなきゃな、と思う。誰かを傷つけるかもしれないものでも、救いになるものになるかもしれない。もちろんその逆も然り。

色んな眼鏡をつけて、物事を見られるように、という意味で「みらいめがね」なのか。なるほど。

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