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【読んだ】学力を伸ばす家庭のルール

おすすめ度 ★★★☆☆

汐見 稔幸さんの本を読んでみたくて図書館で借りた。
2006年の本なので、内容が古いところはあるけれど、概ね賛同できるし、説教臭さがないので楽しく読める。

タイトルの煽りっぽさが強くて、ちょっとためらったけど良い意味で全然違った。
教育学や発達心理に近い内容で、「こうすれば賢くなる!」みたいな浅はかな内容じゃないのが良い。

ご自身の子育てや、塾長・校長時代の経験を元に語っているので説得力もある。
正論ぶちかまして説教したり、あれがダメこれがダメと上から批評する感じではないので、優しい気持ちで受け入れられた。
きっといいお人柄なんだろうな。

ここからは備忘録。


階級社会イギリスの英語

イギリスでは、階級によって使う英語が違う。バーンシュタインの研究によると、労働者階級の英語は、単語が短く接続詞が少ない。めし、風呂、腹減ったのような。
一方、中産階級の言葉は文章も長く、接続詞や形容詞、副詞が多用されている。
学校で使われる言語は後者なので、労働者階級の子どもには違和感があり、適応しづらい。成績が上がりづらい原因の一つになりうる。
一方で、創造性という面では労働者階級の子どものほうが、発想が豊かで自由という傾向がある。
これは、中産階級の子どものほうが大人からの期待、「こう考えなきゃいけない」「こうあるべき」というプレッシャーが強いためではないか。

つまり、丁寧な言葉使いを意識しつつ、自由な発想を受け入れてあげるとどちらの力も伸びるということなのかな?面白い分析。

家庭内文化がなくなると会話がなくなる

現代は昔よりも家事が減っていて、子どもが家庭で親と共有する文化がなくなっている。
親子で共有するものがないと「今日学校で何やったの?」「どうして汚れてるの」「このまえわからなかったことわかった?」など詰問する形で会話が進みがちになる。
非常に「教育的」な雰囲気になってしまい、子どもは「どう答えればいいのかな、上手く答えなきゃ」と思って疲れてしまう。
どうせ何か言われると思うと、何も言わなくなる。
「べつに」「忘れた」という答えが増えていく。

これは耳が痛い。息子によくこう返される…一方的に聞くんじゃなくて、何かを共有するように会話する…大事や…。

親は子供の家庭教師にならない方がいい

親がこどもの家庭教師になって教えると、自分の子どもに対する要求が高くなってしまい、短気になったり無遠慮になりがち。

さらに、親が参考書代わりになってしまうと、反抗期をうまく乗り越えられず、必要な自立のプロセスにも影響が起きやすいという。
親が示してきた理屈を疑い、自分のことは自分で決めたいと思うこと。親の権威を一度否定(相対化)して、必要なものを自分で考えるプロセスが自立につながる。
親の存在が大きすぎると、それができなくなってしまう。

本ではなぜか「父親」限定で書いてあるのだけど、性別関係なく親で考えて良いと思う。反抗期のプロセスは面白い例えがされていて気に入った。

着物を縫っているしつけ糸を一回抜いて、自分で本縫いをする

親のしつけって、そういうものかもしれないなー。

20年前の教育予想が、現在に繋がっている

本が出たのは2006年だから17年前だけど、いま盛んに言われている学習要項の改革や、これからの子どもに必要な能力とは、という議論でかなり現在に近い思想を語っている。
先見の明がある、というよりは現場のトップであり研究者である著者からすれば必然だったのかもしれない。

あるいは知的体力や好奇心、自己コントロール力、レジリエンスなどは普遍的なもので、今やっと体系的に学ぶ方向に向かっているのかも。

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