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【読んだ】アレグリアとは仕事はできない

おすすめ度 ★★★★☆

津村さんの作品3作目。
ちょっと主人公のアクが強いので、初めて読むには向かない気がする。

***

私も絶対アレグリアと仕事したくない。

男性社員に頼まれた仕事はスマートにこなして評価されるくせに、女に依頼された単純作業はすぐサボる、無理だとピーピーわめく。
性悪女アレグリアは、大型コピー機だ。

そう、機械なのだ。主人公は全力でコピー機に闘いを挑んでいる。
津村記久子さん独特の緻密さで、全身全霊をかけて悪態をつきまくる。

序盤は「いつまで続くのこんな不毛な機械との闘い…」と思うものの、やっぱり徐々に主人公の気持ちに憑依していく。
わー私も絶対アレグリアに嫌われるタイプだ。そしてなんでこいつの性悪さに気づかないんだ、男どもは!!

話は徐々に、「主人公vsコピー機」の構図から、「主人公vs職場の嫌な人たち」にシフトしていく。

同じ仕事をする先輩や、ムカつく営業の男、サポートセンターの女性、やる気のないサービス担当…登場人物が多くて名前を覚えられなかったけど、それぞれに言い分があって、人間臭くて、面白い。

結構スカッとした終わり方をするので、読後感も良かった。

***

2つ目の作品、「地下鉄の叙事詩」はひどかった。
作品としてのひどさではなく、作品の中で起きる事件がひどい。
狭い満員電車の中で、痴漢事件が起きる。それを乗り合わせた人物それぞれの視点で描いている。

しょっぱなに性格最悪の男がでてきて、読んでいてムカムカする。
自分以外のすべてが悪い、俺は悪くない、みたいなやつが、延々思考を垂れ流すような展開なのだが、よくもまあこんな表現ができるなと感嘆する。
人の脳内をパカッと開けて、中身を書き写してるとしか思えない。

さらにその後、制服の女の子が(別の男に)痴漢にあう描写が出てくるのだが、これもリアルすぎて辛い。私は田舎育ちなので、電車で痴漢にあった経験はないが、我が子がこんな目にあったらと思うだけで血管が2,3本キレそうになる。

こちらも、犯人はそれなりに制裁をうけることになるけど、スカっとまでは行かない。それに物足りなさを感じる自分の脳内に、ここにでてくる人達のような性格の悪さを感じるのも多分計算のうちなんだろう。

本当に上手いなあ。



津村記久子さんの作品を初めて読むならこっちがおすすめ。


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