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【読書記録】朔と新

おすすめ度 ★★★☆☆

毎日小学生新聞の書評に載っていて、息子が読んでみたいというので借りてみた。
借りたはいいものの、息子はプロ野球名鑑に夢中で読む気配がないので、私が読んだ。

青春小説としての完成度は高いと思う。事故で失明した兄と、その事故を自分のせいだと思い苦しむ弟が、ブラインドマラソンをする物語。
ストーリーのテンポも良く、わかりやすい。
大きな事件はないけど、文章も綺麗で、視覚障害というテーマも上手く描けている。終わり方も爽やか。
小説好きの中高生におすすめできる。

なぜ母ちゃんは悪者なのか

ここまで書いて、個人的な(というか母親視点の)感想を述べると、
「母ちゃんと、きちんと仲直りせいや!」であった。

主人公の朔と新は兄弟。
優しく大人な朔と、拗らせに拗らせた反抗期真っ盛りの新という構図だ。
そして弟にやたら厳しく、お兄ちゃんには過保護な母親。
どことなくバッテリーを思い出す。あれは兄弟が逆だったけど。

私は母親なので、どうしても、母親目線で読んでしまう。
子どもが事故で視覚を失ったらどれだけショックか。お母さんもきっと落ち込んで悩んできたはずだ。それでも前向きに頑張る息子に優しくしてやりたいと思うのは自然だと思う。人間だもの。

果たして一方の弟は、まあ〜反抗期真っ盛りである。
何かにつけて突っかかり「無理して母親ぶったこと言うな」「俺に関心なんかないくせに」と拗ねまくりである。
母だけではなく誰にでも反抗期で、ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけようとしている。そりゃお母さんもイラつきますわ。

お母さんの言動も確かにひどい。あまりに弟への信頼がない。
でも多分それに至る過去があるんだろうけど、そこまでは描かれていない。

最終的に、お母さんも弟のことを思ってサポートしてきたとわかるシーンが描かれるのだが、、、、物足りないっ!
もっと、お母さんの過去を!心情を!掘り下げてほしいっ!!!

(あとついでにいうなら父親がほぼ出てこない。出てこなさすぎていないのかと思うほどに。それもなんかなぁって思うとこ)


中高生の共感を得るために、「理解のない大人」として親や先生が描かれるのは良くある。私もそういうものを読んで育ったし、気持ちはわかる。
青春を描くための必要悪のようなものだろう。

でも、大人になって思う。
ほんと親って大変なんですよ。
子どもだった頃を思い返して、いろんな人の話聞いて本読んで、めちゃくちゃ考えてる。
だけど、その10分の1も伝わっていなくて、都合よく悪者にされたり、頼られたり、甘えられたりする。
常に、愛しさと切なさと心モヤモヤである。

なんだかなぁ。
親の心子知らず、とはよく言ったものだ。

でも、まぁきっと子の心も親はわかってないんだろう。
反抗しまくる新をみて、共感よりイライラが勝るのがその証拠だ。

できることなら、10年後の朔と新をみたい。
お母さんと、仲良くやっていて欲しい。
(お父さんとも)

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