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【読書記録】脳が壊れた

おすすめ度 ★★★☆☆

脳梗塞で脳の高次機能障害になってしまったルポライターの作品。
一見普通だけど、色んなところに不自由さ・障害がある。
外からは分かりづらいから「気持ちの問題」「怠けてるだけ」と言われることもある。
言葉を仕事にするルポライターとして、この当事者意識を言語化することに使命感を感じ、この本を作ったのだという。

発症〜リハビリ〜その後の生活を通して、当事者以外に理解しづらい困難がわかりやすく言語化されている。簡単にわかる〜とは言えないけど、何となく分かる気がする、イメージできるようになる。言葉のプロはすごい。

例えば、著者の左手指。
痛みもしびれもなく、完全に麻痺しているわけでもないけど自由に動かせないという状態を「この状態で指を動かそうとする当事者意識は、いうなれば『念動力』だ」と表現する。
「使えもしない超能力で目の前の鉛筆に手を触れずに転がそうとする子どものように」ひたすら念じて、ついに指が動かせた瞬間をこう表す。
「ど忘れして、どうしても思い出せなかった歴史上の有名人の名前とかが、ふと思い出せた瞬間」

うん、なんとなく分かる気がする。
文章も随所に笑いを入れていて(ちょっと俗っぽ過ぎる感はあるけど)読みやすい。


身体だけではなく、感情を抑えられなくなる感情失禁や注意欠陥など、精神面での不自由さもくわしく語られている。
大事なのは、これが当事者視点ということだろう。

これまで発達障害やうつ病などで似た症状について読んだことはあったが、大抵それは精神科医や心理学者の視点であって、「なるほど、そういう症状があるんですね」という感じだった。

言語化能力に秀でた人が当事者として語るものは初めて読んだ。
注意欠陥があるとなぜ集中できないのか、様々なシーンで例えを駆使して事細かに説明されているので「おおぅ、そんな気持ちなんですね、それは大変だ」くらいまで寄り添える(気がする)。


そんな感じで7割くらいは興味津々で一気に読み進められた。
外側から分析するしかなかったものが、当事者目線で書かれているのが新鮮で面白い。

ただ、後半は著者自身を振り返って原因や生き方を考える内容で、少し冗長だ。
支えてくれた奥様の話がひたすら続くところが特に…うん、惚気やな、と思いながら飛ばし読みした。
後悔や反省も自分に当てはまらないのでスルーしたけど、当てはまる人には刺さるのかも?ちょっとわかんない。


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