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【本】D.O 「JUST PRISON NOW D.O獄中記」

D.Oについて知ったのは、リンカーンが放送されていた頃で、番組は見ていなかったものの、色々話題になっていたので、「キャラの濃いラッパーがいるな」ぐらいにしか思っていませんでした。そんな感じで曲もまともに聴いたことがなく、逮捕されたときにネットニュースで見る程度でした。

興味を持ち始めたのは本当にここ最近で、YouTubeに上がってる漢a.k.aGAMIと絡んでる動画や芸人との対談動画などをきっかけに、ジワジワと脳内を侵食されていきました(笑)そこから曲にも関心を持ち、過去のアルバムや出所後に発表した曲などを聴き漁り、甲高い声で抑揚をつけずにラップする独特なフロウや、自分の日常生活とはかけ離れた内容のリリックと、語りのうまさに引かれ、好きなラッパーの1人になりました。

そんなD.Oが刑務所内の生活の様子や感じたことを日記形式で書き記したものがこの本。読んで知りましたが、刑務所の中で書いたものを手紙で編集者に送り、それをnoteにアップしてリアルタイムで連載していたそうです。

刑務所内のシステムについてやルールなどが書ける範囲で分かりやすく紹介されており、D.Oの執筆動機である「喜連川版のガイドブックを作りたい」という思いに添った内容になっています。
ラジオを聴いたり本を読んだりする中で、ほかのラッパーが活躍してる姿と今の自分を比較して悔しがる気持ちや、いわゆるJポップのアーティストの曲を聴いて、素直にリスペクトする気持ちなど、その時その時の心情なども率直に語られています。お笑い芸人に対してもそうですが、同じエンタメ業界の一員として、リスペクトできるものはリスペクトするというD.Oのスタイルは本当に素晴らしいし、それを堂々と語れるところに、ラッパーとしての自信も感じます。

印象的なのが夏の暑さと冬の寒さで、本の中でもそのつらさについて言及する場面が度々あり、しんどさが伝わってきます。コロナ下ということもあり、猛暑の中冷房がない環境で、独居房なのにタオルマスクを着けて過ごさなければいけないところなど、いくら刑務所とはいえさすがにちょっとイカれてます。

また、お菓子やきな粉パン、頭を刈ってもらえるガリの日、テレビが観れる時間が増えるなど、本当にちょっとしたことや自由に喜びを感じる様子が分かります。
この本を読んで改めて思ったのが、コンビニやスーパーで何でも手軽に手に入り、ボタン1つでテレビやネットフリックス、YouTubeなど見れる今の環境が、かえって映画や音楽、食事に対する感性をかなり鈍らせているんじゃないかということ。刑務所というかなり生活に制限があるからこそ、ちょっとしたお菓子をありがたく食べたり、普段なら見ないようなテレビや映画を真剣に見たりするD.Oの姿から、物や娯楽に溢れ過ぎている今の生活を見直し、一つ一つの作品に丁寧に向き合いたいなと思いました。

終盤になると仮出所に向けてのカウントダウンが始まりますが、ここで下手を打てないという不安感からか、イラつきを感じる記述が増えていくのもすごくリアルで、無事に刑務所を出れたという結果を知っていながらも、緊張感を持って読めました。

この本を読み終えてから、出所後のD.Oが出演している丸山ゴンザレスのYouTubeチャンネルの動画を見たり、「FLY9」「Rhyme to heaven」といった楽曲を聴くと、より色々感じるものがあるのでお勧めってハナシ。

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