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映画『さくら』が犬と家族のハートフル映画に見せかけたヤンデレ暗黒映画だった件~考察ってほどでもないけど感じた違和感や恐怖ポイントをまとめてみた

Twitterで「アリ・アスター映画が好きな人とか特に見てほしい」というのを見かけて、映画『さくら』観たのですが、いやぁ凄かったです…。

宣伝画像とかを見ると、一見して犬と家族のハートフル映画のように見えるのですが、その実態は、とんでもないヤンデレ暗黒映画でした…。

このビジュアルで「ありふれた家族の、きれいごとじゃない物語」と言われて、アリ・アスターばりの暗黒が待っているとは思わないですよ…。
(狙ってやっているのか、結果的にそうなったのか分からないですが…)

この映画ヤバイと思ったのは、以下のようなポイント。

  • 家族が不幸な出来事に見舞われ、それを乗り越えていくみたいな流れではあるのですが、その不幸な出来事が尋常ではなく、しかもビジュアル的にも強烈なものがありました…。

  • 家族の中の妹(小松菜奈)が、ざっくりいうとお兄ちゃんが大好き過ぎるヤンデレな妹なのですが、小松菜奈さんの演技があまりにも凄すぎて、いわゆるヤンデレみたいな枠には収まりきらない超絶キャラになっていました。どんどん様子がおかしくなっていきます。
    時々する、なんか捉えどころのないような表情に不安になります…。

 「少しわがまま」??
 いやいやいやいやいやいや、そんなもんじゃなかったです…。

  • いろいろと強烈な出来事が起こる割に、主人公の穏やかな口調のモノローグ主体で話が進んでいき、そのギャップに妙な不安感を覚えます…。


考察ってほどではないですが、感じた違和感や恐怖ポイントを以下にまとめてみました。


【1】開始2分ぐらいからもう変な感じ

映画冒頭、主人公が実家に帰ってきて、「犬(さくら)に会いたかったんだよな」みたいなことを独白するシーンがあるのですが、そこでやけに悲しげなBGMがかかっていて、内容と音楽合ってなくね?って感じがします。
映画冒頭から微妙な違和感が付きまとってきます…。

その後にある回想シーンでも、お母さんが子供たち(兄弟が小学生、妹が幼稚園ぐらい)にSEXの説明をするシーンがやけに長尺で繰り広げられたりとか、なんか妙な映画だぞという感じが続きます。

【2】ずっと穏やかな語り口調なのに急展開がきてびびる

この映画は全体的に、主人公のモノローグ主体で穏やかな語り口調で進んでいきます。
中盤ぐらいで凄く辛い出来事(兄が交通事故に遭って顔半分と下半身が動かなくなる)が起きるのですが、そこも穏やかな口調のモノローグから病室で兄が包帯ぐるぐるのシーンにするっと移行して面食らいます。
起こる出来事は激しいのに語り口調はずっと穏やかという、なんだか妙なテンション(妙に低いテンション)の映画です。観ていて不安感が付きまといます…。

【3】前半と後半で対になるシーンがあるけど、どういう意味なのか謎…

この映画では、前半と後半で対になると思われるシーンがいくつかあります。
フェラーリのシーンとかは分かりやすかったです。
(対になる両シーンとも雨が降っていましたし)

ですがその一方で、対になっているのは分かるけど何の意味があるのかよくわからないシーンもありました。

前半の兄が交通事故に遭うところの「スピードを出し過ぎたタクシー」と終盤の「さくらを動物病院に連れていくため信号無視する父の車」は対になっていると思うのですが…。
終盤のシーンの人影が出現して、ああここで轢いてしまうってことなのか?と思いきや、横を通り過ぎていきます(人影も幻影でした)。

対になっていることに意味があるようでいて、しかし何だかよく分からず、モヤモヤします…。

【4】兄の死を乗り越えるシーンで、急に神様論に…??

上記のさくらを動物病院に連れていく車のシーンで、兄の死に対して心の整理をつける重要なシーンがあります。

兄が事故後、死ぬ前に「神様は今まで直球しか投げてこなかったのに、急になんでそんな悪送球ばっかり投げてくるんだ…」と気持ちを吐露する場面があります。
それを受けての車のシーンで、主人公は悟ります。「神様は打てないボールなんか投げてきていない。ボールを投げていたのは僕ら(家族)だったんだ」と。
ここまでは分かります。ですが、ここから僕ら家族の兄への接し方について、反省とか後悔とかがあるのかと思いきや、神様は凄いという話に繋がっていきます。

え!?「神様は打てないボールなんか投げてきていない。ボールを投げていたのは僕ら(家族)だったんだ」から、家族じゃなくて神様の方を掘り下げるの!!???

そして「それが愛やで」と(兄に向けて)神の愛について語って締めます。
(あんな事故に遭った兄に対して、そんな諭すようなことを言わんでもと思うのですが…)

これで主人公は兄の死に対して心の整理をつけて。気持ちを切り替えていこうとなったようですが、観客的には正直ポカーンです…。
(宗教に詳しい人とかなら、理解できるのかもしれませんが…)


急に神様論になってびびりましたが、振り返ってみると、その前の墓参りのシーンで前振りがあったような気もします。

  • 兄の墓参りをする家族の後ろに十字架が見えます。

  • 妹がカラスに石を投げているのは、聖書の「罪のない者だけが石を投げよ」を模しているような気もします。

他にも宗教に詳しい人なら分かる振りがあったのかもしれませんね…。

そういえば、母のトンカツとエビフライのシーン(前半のトンカツを捨てるシーンと後半のエビフライを拾って食べるシーン)も対になっていると思いますが、神様論に繋がっていくとしたら「捨てる神あれば拾う神あり」みたいな意味合いなのでしょうか…。謎です…。

【5】それでいいのか妹よ…

妹も同じ車中のシーンで、兄の死に対して心の整理をつけて。気持ちを切り替えていこうとなるのですが、弟はまだしも妹…。

兄が好きすぎる妹…。
兄の彼女から兄への手紙をインターセプトして、偽の手紙で関係を破綻させたりとか、いろいろやらかしていたけど…。
それに対して反省とか後悔とかなしに気持ち切り替えていこうってなるのは、兄が不憫な気が…。モヤモヤします…。

【6】兄の部屋に寝て手紙が降ってくるシーンがよく分からない…

妹が兄の部屋に入ってベッドに寝て、いわゆる自○行為をして、色とりどりの手紙が降ってくるイメージのシーン。映像的には美しいのですが、あの手紙って彼女から兄への手紙ですよね。なんであそこで兄と彼女の愛の証のような手紙が降ってくるのか…。どういう意味なのかよく分かりませんでした…。

妹の中では、インターセプトした手紙は戦利品みたいな認知なのでしょうか…?

※あと、このシーンでいえばくるみ。くるみは序盤から出てきていて、○玉のメタファーかなと思ってはいましたが、まさかあそこまでストレートに使うとは驚きでした…。

【7】EDテーマが東京事変

この映画は最初から最後まで(どんな凄まじい出来事が起ころうと)穏やかなトーンで語られています。映画本編は全体的に超ローテンションです。
なのに、エンドロールに入ったら急に東京事変のアップテンポな曲が…。
いくらなんでも急に雰囲気変わりすぎでは…!?

映画自体は、兄の事故や死を乗り越えて家族やっていこうという前向きさのある終わり方には見えたのですが、いきなり東京事変は急にアクセル踏みすぎだろと思いました…。

正直、素人目にはEDテーマ合っていないような気がしましたが…。


こんな感じで、「モヤモヤする」ばっかり言っていたような気もしますが、これはこれで楽しみました。本当です!

アリ・アスターファンの皆様は、ボーを待っている間に『さくら』を観るのも一興かもしれません。
ヤンデレ好きな方々にも勧められそうですね…。

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