ランドセル

「ねぇみて!ママ!!これがいい!!!」

6年間使うランドセル選び。僕は薄ピンクの可愛い色したランドセルを抱きしめながら言った

「そんな色、恥ずかしい。浮いちゃうよ。」
「なんで?恥ずかしくないよ。」

「今は可愛いけど、6年生のお姉さんになった時に、恥ずかしくなるの。皆に、虐められるよ。それでもいいの?」

「いじめられる…?」

「うん」
「嫌だ。」

「これはどう?」
母は濃いピンク色のお花の刺繍がたくさん入ったランドセルを見つけてきた。

「かわいい、かわいい!!!お花がいっぱい!!珍しいね!!!!」
僕はみんなと同じ色のランドセルを背負うのが嫌だった。自分のランドセルは自分だけしか持ってない、特別なものにしたかった。

「これなら、お姉さんになってもいじめられない?」

「うん。大丈夫。可愛いね、みんなと違うのは色じゃなくてもいいと思うよ」

こっそりピンク
こっそりお花の刺繍

一見みんなと同じに見えるけど、
よく見ると違うこのランドセルが気に入った

みんなと違う。僕だけのもの。

「これにする!!!!」

決めた


小学二年生。

友達がランドセルの色でいじめられてた。
男の子で、オレンジ色のランドセルだった。

カッコイイなとずっと思ってたんだけどなぁ
なんでいつも、“みんなと違う”はこうなるの?

「僕はそのランドセルの色、素敵だと思うよ」

帰り道、みんなにバレないよにこっそり一緒に帰って、こそこそって言うの

一緒にいたら一緒にいじめられるから

教室に入れば手拍子が響く
その子の名前と一緒に
いじめられっ子ご入場の合図

手を叩かない奴が次のいじめられっ子

なんの儀式だよ。

その子のありもしない悪い噂が
広まってはみんな信じてその子を避ける。
おかしい。なんでみんな手を叩く

僕は手を叩くふりをした。
音をならしたくないから“ふり”
これ以上に響いて欲しくない手拍子

その子は僕のお隣の席に座る。

「あの子の隣なんてかわいそ〜」
なんて声が聞こえてくる

何言ってんの。めちゃくちゃ楽しいよ?

ランドセルの色ごときで。

ギターが上手いってそれだけで。

僕のプリキュア好きがバレたらやばいな。

その人だけにある素敵なものをどんどん悪いものに変えちゃう皆が怖かった。
皆の言葉でどんどん自信をなくしてく人を見ているのが痛かった。

敵に変えるのが上手だね。ほんと。

もったいない、
こんなに素敵なのに気づかないなんて

その子へのいじめがおさまっていった頃、
僕は堂々とその子の隣を歩けるようになった

笑っちゃうくらいにおかしい。
みんなこっちに目もくれない。

だって次のターゲットがもういるから
笑ったときの、えくぼがかわいいあの女の子。

もう、なんで。

もう、やめてよ

笑ってよ

とかやってる間に親の転勤が決まり
僕は転校した。

最後に、あのかわいい女の子の
素敵な笑顔が見れなかった
今でも後悔してる。


母の言っていたことは本当だった。

皆と違うものは標的にされやすかった。

素敵なものが変なものになる瞬間

悲しくなっても何も出来ない

僕はこっそり「ぼくはすきだよ」
って伝えることしか出来なかった

手拍子の鳴り響く教室

吐き気がするほどに飛び交う陰口

なにがどこが楽しいの

そんな毎日が終わった小二の夏

ランドセル

薄ピンクにしなくて良かった。

6年間、大切に背負った。
これを「変なの」って言われてたら
僕は怒ってたかな、怒れないかな

新しい学校は平和でした

みんなみんな違う色の
ランドセルを背負って歩く

薄ピンクも緑もオレンジも水色も
茶色も黒も赤もたくさんの色で溢れかえる

そこに
素敵なものを変なものに変える人は
居なかった。


十人十色

僕の好きな言葉



みんな

もう一度ランドセルを選び直せるとしたら
今度は何色にしますか








#いじめ
#十人十色
#ランドセル

いつも小さい頃の話になっちゃうなぁごめんね

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