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プロトタイピングの規格が欲しい

レゴのマインドストームが販売終了するらしい。と聞いて驚いたが、EV3が販売終了するだけで歯車やモーターがなくなるわけではないらしい。

夢が叶ったMINDSTORMS

MINDSTORMSは思い入れのある玩具だ。
大学時代は文系学科で過ごしたが、社会人になったらモーターを組み合わせられるレゴのような玩具を生み出せる会社か、ネットの仮想空間上で生活するゲームを作れる会社のどちらかに入社したいと考えていた。
結局それは叶わず、別の業種の会社に入った。入社後しばらくして仕事にも慣れ始めた時、ネットでMINDSTORMS発表を知り、これこそ自分が作りたかった玩具だとすぐに個人輸入した。
MINDSTORMSはそれぞれのパーツがよく考えられており、歯車やリンクの構造など、ハードウェアの学習教材として非常に優れたものであることは間違いない。
EV3はなくなるが、こういったエレメントは別のブランドとして残り続けるようでひとまずは安心である。

物足りなさを感じたが救世主が現れた

MINDSTORMSさえあれば十分と感じたかといえば、自分はそうでもなかった。本体となるRCXのサイズが大きすると感じたり、プログラムのソフトがあまり良いものだと感じられず、すぐに不自由さを感じるようになった。
しかし、数年後にArduinoが発表されたことでその不満も払拭された。今度こそ本当の自由を手に入れたというな気持ちになり、そこからは本格的にロボット開発を趣味として楽しんでいくことになった。レゴの組みやすさとArduinoの開発環境の相性もとてもよいように感じた。(接続部分を自作する必要はあったが当時はそれも楽しめた。)

タミヤの工作シリーズの再評価

レゴはプロトタイピングにはとてもよい。
ロボットを作る時にリンク構造を検証したり、ブロックをちょっとしたスペーサーなどに使うことはいまでもよくある。
プロトタイピングの自由さや、動くものをよりしっかりとプロトタイピングしていくという方向で考えていくと、タミヤの工作シリーズの規格はさらに良いと気づく。
タミヤのユニバーサルプレートは5mm間隔で3mm径の穴が並ぶ規格であるが、これがほどよい。自作の部品を組み合わせることも容易だし、3mmのネジであればホームセンターで好きな長さのものが選べる。
他の資材に穴を開ければねじ止めができるし、段ボール紙や粘土と組み合わせることもウェルカムな自由さがタミヤにはある。
子供のころはレゴの規格を数学の世界のように完璧で美しいものと感じていたが、外界と容易につながるタミヤの規格を見ると、レゴの世界観は閉鎖的で時代遅れなものと感じるようにもなった。…というと言い過ぎかもしれないが、レゴがレゴにしかくっつかないデザインであるのに対し、タミヤの工作シリーズが日常のどんなものとでもくっつけられるというのは事実である。プロトタイピングのための社会基盤としてふさわしいのは後者であろう。子供の頃から販売されていて、それがずっと販売され続けているという信頼感も大きい。

5mm間隔で3mm径の穴が並ぶタミヤ工作規格

オープンソース版の真に自由なMINDSTORMS

話が横道にそれたが、MINDSTORMSの電子やソフトウェアをより外の世界に開かれた方向へ進化させていくと、ArduinoやScratchといった環境にシフトしていく。同様にハードウェアを外の世界に開かれた方向へ進化させると、タミヤの工作シリーズのような形になるだろう。
Arduinoとタミヤの工作シリーズを組み合わせたものはとても理想的なプロトタイピング環境になり得ると考えている。

求めるのものは工作のデファクトスタンダード

タミヤが完璧かというと、もちろん高望みの不満はいろいろとある。
電子回路用のユニバーサル基板や電池ケースとの相性がイマイチでマウントが難しく、惜しい。
また実際に工作をしていくと、もう少し小さい間隔、たとえば2mm穴用の間隔の規格もほしくなる。
ミニ四駆では2mmネジ関連のパーツも充実しているので工作マニアとしてはそれだけでもありがたいが、2mm穴用のユニバーサルプレートは販売されておらず、また3mm穴との組み合わせも特に考えられていない。

電子パーツ、モーター、コネクタなどを一気通貫する規格があれば、プロトタイピングはもっと楽しくて楽なものになると思う。
(これは新しい規格が欲しいというのではなく、あくまで既存の規格に合わせて欲しいという希望である。)
しかし、それが今の世の中にあるかと言えば、「ない」というのが現状であると言える。

ゼムネスの顔はレゴを張っただけ

ちなみに自作ロボットのゼムネスやスコブルには、タミヤの工作シリーズを搭載できるように、規格に合わせてマウント用の穴を開けてあったりする。
またゼムネスの顔はレゴであり、張り替え可能である。

ものづくりのハードルを下げるスロープが必要

究極の理想は、絵を描いたり料理をしたりするのと同じように、誰もが作りたいと思ったものを自分の手を動かし、アウトプットできるようになっていることである。
多くの人が、何かを作りたくても、自分には無理と決めつけてしまうことが多いように思う。どうしても工作機械を使いたいという人には、レンタルだったり発注だったりと手段があるが、パソコンやスマホでバーチャルなものをデザインする手軽さと比べるとギャップがあまりにも大きい。

一度覚えれば一生付き合いつづけられるような基本的な規格がそこにあれば、会得したスキルを連続的に積み上げ、好きなだけ新しいことに挑戦できるはずだと考えている。ある程度のレベルまでいけば規格はむしろ創造のジャマになるはずであるが、そのレベルに達するまでは規格は何をつくるにも便利なはずである。

ということで、工作経験ゼロの人が、やがて自分でなんでも創意工夫して作れるようになるまで、そこまで成長する間を、規格という度量衡は強力にサポートできるのではないかと考えている。

われながら取り止めもないことを書いたが、こういった観点で構想しつづけていることをまた改めてまとめられればと思う。

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