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何故、日本には、米国型ディスカウント・ストアーが隆盛とらなかったのか 〜歴史的考察〜

ディスカウントストアー(DS)は、何故、日本では小売業のトップにならなかったのか。

DSとは:食品や日用品など生活必需品を低価格で販売する小売業態。2,000坪以上の大型店のこと。

その理由について、長年考えた結論があります。

DS(ディスカウントストアー)の始まりは、米国の1897年創業からのKmartです。2018年に破産しています。

1994年のピークには、5,000坪標準とした大型店で、合計2323店を展開しています。

それ以前から、当方は、かれこれ30年間近く毎年米国流通業を現地で視察してきました。

Kmartの衰退の原因は、1962年1号店から始まったWALMART(DS)の出現です。

WALMARTは、現在売上額で世界最大の企業です。

2022年決算で、売上高6113億ドル(89兆円)。

日本最大の小売業グループのセブン&アイ・HD 8.7兆円の10倍です。

この投稿の本題は、何故、日本のDSは小売業の王者となれないのかです。

技術的な視点ではなく、経営環境の違いによるものだというのが、当方の結論です。

それは、日本人の住居問題に関係しています。

日本人は、一箇所での平均居住年数が30年間です。

米国は、平均7年間ぐらいです。

米国人は、日本人の一箇所での居住30年間で、4.3回も住まいを変えていることになります。

このように頻繁に、住む場所を変えるという事は、その街に馴染む(近所付き合い含む)という考え方は皆無となります。

そうした住環境から、どこに住んでもDS(ディスカウントストアー)があることは、非常に機能的で便利な生活には欠かせません。

住まいを変える度に、生活環境が変わるので、馴染みの店もありません。

住み替える時に、住まいの必需品やインテリアやDIYの材料など、大量に物を買い換えるきっかけともなります。

DSでまとめて買えるのは、消費者にとって、地域一番の安さもあり、とても便利です。

尚且つ、米国の住宅は、まちづくり自体が、計画的に行われたものばかりで、ショッピングセンター(小売業の集積場所)も必ず併設されます。

そうすると、そのショッピングセンターには核となる店舗が必要になります。

その核になる大型店舗が、食品も日用品も全て揃い「どこよりも安い」DSのWALMARTなのです。

つまり、居住地が頻繁に変わる米国人にとって、どこに行っても馴染みの店があり、便利で安い大型店での買い物は、ストレスもなく短時間での買い物を実現出来ます。

さて、日本の実情はどうでしょうか。

日本は、何千年の歴史のある国(米国はわずか300年)ですから、当然、街づくりや生活環境は長年の時間をかけて型作られます。

尚且つ、30年以上住み続けるのですから、街でのコミュニティーも生活環境も知り尽くすことになります。

当然、よく行く店や馴染みの店も沢山存在します。

食品は◯◯店で買う、日用品は✖️✖️店で買うといった生活様式になります。

近所に大型の店が出来なくても、特別に不自由はしません。

ただ、安さは必要になります。

その安さを売りにして、昭和に隆盛だったのが、かっての総合スーパーです。

ダイエー、イオン、イトーヨーカ堂などの大手や、地方の総合スーパーでした。

しかしながら、その総合スーパーも、店舗の老朽化と共に安値感がなくなり、平成に入り、新興勢力として、「安売り」専門店チェーンのニトリ・ユニクロ・西松屋・しまむら・ホームセンターなどが勃興しました。

非食品は、総合店でなくてもたまにしか行かないので、専門店を回って買い物しても特に不便はありません。

食品スーパーは、中小のローカルスーパーが全国に多数あり、それぞれに特徴があり不自由はないはずです。

今後は、日本経済の歴史的な凋落により、価格訴求型の食品スーパーだけが勝ち残るでしょう。

こうした、米国と日本の住環境の違いこそが、DSが小売業のトップとなれない真の原因なのです。

言い換えると、今のところ、日本にディスカウントストアーは必要ないのです。

さらに重要なことは、DSの必要とする土地(何千坪)の取得が、日本の歴史的なまちづくりにおいて、広さと地価の面で、非常に難しいという経済的な理由があります。

人口急増により郊外の街づくりが活発な時代(昭和)には、広大な用地確保の可能性もありましたが、田舎・郊外の人口減により、都市部への人口集中が極端に進む現状では、街中の十分な用地確保はほぼ不可能な現状です。

専門的な知識で語れば、膨大な理論(学術論文)となるテーマですが、この投稿では、一般向けに、出来るだけ平易に専門用語も多用しないで書いてみました。

これら投稿の内容は、30年近く、激烈な戦いを続けている米国の流通業の視察の実績と、当方が実際に、長年、日本の流通サービス業の創業者や2・3代目経営者たちと交流したきた結果(観察・分析)に基づくものです。

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