火の鳥

火の鳥

人間は、生きているうちに生まれ変わることができるのだろうか。

手塚治虫の『火の鳥』は、黎明編からはじまり、鳳凰編、太陽編、宇宙編、ギリシャ・ローマ編など様々な地域、時代の人類の営みを追っていく。

何度読んでも、作者手塚の想像力の凄まじさに舌を巻く。いまだにこれほどのスケールを持つ作品にお目にかかったことがない。

登場人物の中で唯一、火の鳥だけが「人智を超えた存在」としてすべての時代を行き来する。火の鳥は100年に一度、自らの体を炎で焼き尽くして蘇るのだ。そうして、永遠に生き続ける。

今回の『魂と繋がる歌の唄い方®︎』〜男が「男になる」ときは、当初からこの火の鳥をイメージしていた。

炎の中で身を焼き尽くし、再生したい。
僕自身がそんな気持ちでいたのだ。

そして、それが必要なのが、僕だけではないことも徐々に分かってきた。

いま、人は、特に「男」は、自らの内に内燃する炎を「ないこと」にしている。

いい人のフリをして愛想笑いしたり、
声の中にある芯を抜いてやわらかくしたり、
嫌だと思ってもうなずいてみたり、
怒っているのに「ありがとう」って言ってみたり。

そうやって、嘘ばっかりついている。

怖がられたり、嫌われたりするのがイヤだから「やさしい人」のフリをしている。そうして「すいません」と言いながら、社会の中で「男だか女だかわからない人」として死んだように生きている。

「やさしい人」は好かれるだろう。
「やさしい言葉」は感謝されるだろう。

なにより、誰も傷つかない。

でも、そうして男は、自分の違和感を殺し、息の根を止めていることに気づいていない。

それが他人にも向かっていることにも。

僕がはっきりとそのことに気づいたのは、結婚生活を通してだ。

僕の奥さんは、僕よりもずっと「男」で曲がったことを許さない。

彼女に語った絵空事や自分の弱さを隠すための大風呂敷は、剣のような口撃によってことごとく断ち切られた。

言われたことはひどかったが、狙われたポイントは性格だった。そこに確実に僕の不誠実さがあった。不誠実とは、文字通り「誠」がないことを言う。その「誠」に、彼女はとてつもなく敏感で精密だった。

「やさしい人」のフリをして、相手の話を共感的に聞いても意味はなかった。「ひどいことを言うな」と理屈で押さえ込もうとしても無駄だった。優位に立とうとしてアドバイスをしてみてもウザがられた。それらの応答は、彼女の怒りの炎を増すばかりだった。

局面が動いたのは、僕が怒った時だ。

信じられないほどの炎が噴き出した。ここには書けないようなことを言ったし、した。彼女以上の罵詈雑言も浴びせた。

その後、凄まじい罪悪感に襲われた。
「やさしい人」として、あるまじき行為だった。
「理想の結婚生活」は崩壊した。

「やさしい人」としての僕は、あそこで死んだのだと思う。

でも、それで終わるわけではない。

昨晩、僕は自分で開催しようとした「男が『男になる』とき」に女性を受け入れようとした。七名満席にしたかったからだ。

そのブレを師、本郷綜海さんは許さなかった。
すぐさま、コメントが届く。

「ダメでしょー、それ!
 女人禁制ってはっきり書いてあるもの。
 信用なくすよ。そんなことしたら。
 武士に二言はないって知ってる?」

「それってもう裏切りに近いよね。」

「それこそ男じゃないじゃんって思う人が多いと思う。」

その通りだった。

これが僕だ。

僕はいまだに男ではない。「誠」もない。

「誠」とは、優しそうなポーズのことではない。どんなに振る舞いを真似てみても、分かる人には分かる。

でも、それを指摘されることは本当に少ない。怒ることや叱ることはよくないこととされているからだ。

今回、僕は誰が見ても分かるくらい頑張っていた。
「頑張っている」姿は隠れ蓑になる。そこに「バカヤロウ」ということは本当にやりづらいことだ。

綜海さんは、それをしてくれた。
そして、それをしてくれる人がいるということが、僕が「男になる」場を開けると思う理由だ。

間違っているときに「バカヤロウ」とはっきり言ってくれる人がいれば、こんな不誠実な自分でも「誠」に近づいていける。そういう経験をしてきているから。

不誠実で、すぐにブレる自分だからこそ、あなたにもできると思っている。

人は本当は、火の鳥のように何度でも蘇ることができる。
旧いものを焼き捨て、断ち切り、新しい自分になっていける。

けれど、それには炎が必要だ。自らの身を焼き尽くすための。

僕にとってそれは「誠」を生きて、本気で叱ってくれる人たちだ。
「それは違う」「バカヤロウ」とはっきりと言ってくれる人たちだ。
耳障りのいい言葉よりも、誠実な言葉を伝えてくれる人たちだ。

こういう話を伝えたい。
いろんな失敗を伝えたい。

そしてその向こうにある世界や仕事のことを話したい。

そんな思いで、今日13時からの『魂うた®︎』を迎える。
昨日も間違いを犯して叱られた、一人の「男見習い」として。

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