見出し画像

#オリンピック 8日目 #TOKYO2020 #サッカー 女子日本代表対スウェーデン代表レビュー

TOKYO2020 サッカー女子準々決勝 日本代表対スウェーデン代表は1-3でスウェーデン代表が勝ちました。


日本代表とスウェーデン代表のゲームプラン

この試合のポイントは、日本代表が採用した戦術の完成度が低く、スウェーデン代表の弱点を攻めきれなかったことです。

日本代表はボールを持つ時、3-2-5のチームオーガニゼーションを採用しました。DF3人の位置に左から北村と南と熊谷、MFに中島と三浦、FWの位置に左から杉田、岩渕、田中、長谷川、清水という5人が並びます。スウェーデンが4-4-2のチームオーガニゼーションを採用していたので、スウェーデンのDF5人と日本のFW5人がミスマッチを作ることができます。

スウェーデン代表の狙いは日本代表がボールを持つことを想定し、日本代表を自陣に引き込んだ上で、ロングパスを活用してDFの背後を取り、スピードとパワーの勝負に持ち込んで、シュートチャンスを作り出すことでした。4-4-2をペナルティーエリアの幅で保ち、中央からボールを運ぼうとする日本代表からボールを奪い、ロングカウンターでボールを運び、サイドからのクロスで高さによるミスマッチを活かす。人数のミスマッチか、高さとスピードとパワーのミスマッチを活かすか。プレーから両チームのゲームプランを読み取ることができました。

再現性がない日本代表の戦術

日本代表はボールを保持していないときは4-4-2、ボールを保持しているときは3-2-5というチームオーガニゼーションを採用しているのですが、ボールを奪われた後、奪った後にチームオーガニゼーションを変更する時間が必要です。この変更する時間に発生したミスをスウェーデン代表につかれて先制点を奪われてしまいます。

15分過ぎからはDFがボールを持てるようになったこと、スウェーデンがカウンターを重視した戦術に切り替えたため、3-2-5のチームオーガニゼーションの優位を活かして、ボールを運んでいきます。

特にスウェーデン代表の左サイド、日本の右サイドはスウェーデン代表の左MFの選手が相手ゴールよりにポジションを取るため、左MFと左DFの間にスペースが生まれていました。このスペースをカバーしようと左DFの選手が前に動くと、左中央のDFとの間にもスペースが生まれます。この左DFと左中央のDFとの間のスペースを上手く活用できた時、日本代表はスウェーデン代表陣内にボールが運べていました。田中の同点ゴールはこの場所を見つけていた清水がワンタッチで長谷川にパスを出したことで生まれています。このスペースは「ハーフスペース」と呼ばれるのですが、このハーフスペースを清水は活用しようと、何度も相手MFやDFを引きつけたり、自らランニングしてハーフスペースでボールを受けようとアクションを繰り返しました。

ところが日本代表の問題は、このハーフスペースを攻略するプレーに再現性がないことです。本来なら右ハーフスペースを担当するのが長谷川、左ハーフスペースを担当するのが岩渕という役割分担のはずなのですが、長谷川がハーフスペースから外れて中央に移動したり、右の清水が担当するスペースに移動したり、横に動いてしまうことで、スペースを消してしまう場面が何度もありました。

岩渕も左が担当のはずなのに、右に動いたり中央に動いてボールを受ける動きを繰り返します。横に動いて味方のスペースを消し合う、という選手がいるため、せっかくプレー開始時の配置は整っていても、時間が経つにつれて崩れていくという場面が何度もありました。

右の清水はFWの位置を保って牽制しているのに、左の杉田は中央に入ってしまう。岩渕と長谷川は左右に動いてお互いのスペースを消してしまう。中島はランニングしているように見えるけど、岩渕や長谷川のスペースを消してしまう。それぞれの選手は頑張っているのですが、個人の基準で判断したプレーの連続でどうにか成立しているだけで、自分がどこで、どうプレーするか、チームとして明確な基準がないのです。

この試合のスウェーデン代表のプレーを観ていて、どっしりしているという印象をいだいた人もいるかと思いますが、どっしりしているように見えたのには理由があります。スウェーデンは左右の選手のポジションチェンジはなく、上下に動いていたからです。左右の入れ替わりが多いとグチャグチャとかガチャガチャした印象を受けますが、スウェーデンは上下の入れ替わりなので、基本的な形は崩れていないため、どっしりとした印象を受けるのです。そして上下に動くことで相手も対応しようと動くので、スウェーデン代表の選手の動く量は少ないけど、日本代表は動かされてスペースを与えてしまいます。2失点目と3失点目はスウェーデン代表の上下の動きに、日本代表の選手が対応できず、背後を取られたことが要因で生まれた失点でした。

日本代表は失点後も継続してスウェーデン代表の問題である左DFと左中央DFとの間を狙えばよかったと思いますが、選手を入れ替えていくうちに、誰が、どこを担当し、どうプレーするのかを忘れてしまったかのようにプレーするようになります。時間が経てばたつほど、選手が入れ替われば入れ替わるほど、上手くいかないという悪循環に陥ってしまいました。

戦術がないわけではない

この試合の日本代表のようなチームを観たファンは「戦術がない」と表現するのですが、戦術がないチームなんてありません。日本代表は明確にゲームプランを考え、戦術を準備していたことは伝わってきました。ただ、日本代表の選手たちのプレーを観る限りは、選手たちは戦術を実行する上で大切な原則を理解していなかったようにみえます。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするのか。5W1Hが全く分からなかったのです。

ヨーロッパのサッカーではフィールドの横幅を5つに区切り、選手同士が重ならないようにする「5レーン」という工夫をするのが常識のようになっています。しかし、なでしこジャパンに選ばれるほどの選手でも、5レーンのような言葉を知らないし、知っていてもフィールドの上で表現できない。それが現実なのだと思います。

2011年のなでしこジャパンはポジションチェンジが少ないチームでした。選手同士のプレーエリアは明確に定められており、原則は暗黙知ではありますが共有されている状態。つまり「あ、うん」の関係でプレーできる選手の集まりでした。しかし、今の選手たちは「あ、うん」の関係でプレーできる選手は少ないし、プレーできるとしても海外の選手に通用するほどの武器を持っている選手は少ないと思います。

当時のなでしこジャパンの選手たちが現在の日本代表のことを表現する時「気持ちがみえない」といった言葉を用いて批評しますが、気持ちは目にみえないものなので、あくまで主観的な評価です。オリンピックで気持ち込めて戦わない選手なんていません。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするのか問題があるから、日本代表が上手くプレーできていないと表現する人はいません。これが、2011年から積み上げてきたなでしこジャパンの現実であり、暗黙知として共有されていた内容がいかに多かったか分かります。つまりメンバーが入れ替わったら再現性が低い戦い方で戦っていたのです。そして、メンバーが入れ替わったにもかかわらず、監督が替わったにもかかわらず、日本代表の戦い方は変わらなかった。それがこの試合の敗因だと思います。監督の問題でもあるし、選手の問題でもあるし、女子サッカーに関わる人々の問題でもあるのです。

気持ちではなくロジカルに問題を解決しよう

ボールを持てる選手は多いが、立ち位置を考えてプレーできていない。これは日本代表の課題であり、日本女子サッカー全体の課題でもあります。男子サッカーは海外でプレーする選手が増え、海外のサッカーを取り入れたチームが上位に躍進するようになった結果、ポジションを無視して動き続ける選手は激減しました。ヨーロッパでは男子サッカーも担当していたような優秀な指導者が女子サッカーを指導するようになってきています。日本はこのままだとどんどん取り残されていくでしょう。サッカーは気持ちや根性ではなく、頭を使ってプレーするスポーツです。日本の女子サッカーは変化に適応することが求められています。

2021年に開幕するWEリーグが変化のきっかけになればいいですが、現時点での女子サッカーは男子サッカーで上手くいかなかった指導者が担当しているチームも多く、女性指導者も少なく、課題は山積みです。僕は2021年シーズンからなでしこリーグの大和シルフィードというチームの分析をサポートしているので詳しいことは言えないのですが、言えることがあるとしたらこの試合で日本代表が披露したサッカーと課題は、日本の女子サッカー全体の課題をよく現しています。

2021年から少しずつ女子サッカーに関わり始め、女子サッカーの可能性を強く感じています。もっと魅力的なリーグになるし、もっと魅力的なプレーができる選手やチームを増やすことができるはずだと。大和シルフィードも僕が関わり始めてから、平均得点が1点以上増えました。こうすればよい、というのは簡単なのですが、小さくても成功事例を作ることで、違った考えを持ち込み、業界全体の発展に貢献したい。そんな想いを強くした試合でした。頑張ります。

photo by  Ocdp

ここから先は

0字
スポーツのコラムにプラスして、日記を書くことにしました。日記には、お会いしている人の話、プロジェクトの話、普段の生活など、表に書けない話を書こうと思います。

Jリーグ、海外サッカー、ランニング、時事ネタなど、自分が普段楽しんでいるスポーツの楽しみ方について、ちょっと表で書けない話も含めて、4,0…

サポートと激励や感想メッセージありがとうございます! サポートで得た収入は、書籍の購入や他の人へのサポート、次回の旅の費用に使わせて頂きます!