2017-18シーズン Bリーグチャンピオンシップ決勝 アルバルク東京対千葉ジェッツ レビュー

2017-18シーズン Bリーグチャンピオンシップ決勝 アルバルク東京対千葉ジェッツは、85-60でアルバルク東京が勝ち、2017-18年シーズンのBリーグチャンピオンに輝きました。この試合を観て、僕が気になったことを、備忘録を兼ねて書き残したいと思います。

1Q:想定より早かったと思われるチェンバースと石井の交代

1Qで気になったのは、残り5分22秒でチェンバースに代わって、石井が出場したことです。僕はこの交代のタイミングが「早い!」と思いましたし、千葉ジェッツとしては早めに交代をせざるを得ない状況になっているのだということを感じました。

チェンバースを代えた理由は、アルバルク東京の田中とアレックス・カークの繰り出すピック&ロールのオフェンスに対応できなかったからです。

アルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、ピック&ロールというプレーを攻撃で採用するヘッドコーチです。千葉ジェッツの大野ヘッドコーチも、ピック&ロールによる攻撃を好むヘッドコーチなので、この試合はピック&ロールをどちらのチームが上手くつかって攻撃をするのか、注目していました。

アルバルク東京でピック&ロールを使って攻撃を仕掛けてくるのは、田中とアレックス・カークです。田中はスピードがあるわけではありませんが、日本人選手としては体格が大きく、身長も大きい(192cm 93kg)のと、ゆっくりと左右に揺さぶるドリブルから、急激にスピードを上げてペイントエリアに侵入するプレーを得意としています。

アレックス・カークは、211cm 114kgと大柄ながらすばやく動け、スタンディングジャンプでダンクが出来るジャンプ力も魅力です。そして、カークは、ピック&ロールのときにスクリーンをきちんとかけるといった、チームプレーも出来る選手です。田中の左右に揺さぶるドリブルにあわせ、カークがスクリーンをかけ、田中がペイントエリアに侵入したり、ジャンプシュートを決める。もしくは、ペイントエリアに侵入した田中のパスを受けた他の選手が得点を決めるのが、アルバルク東京が得意とする攻撃です。

千葉ジェッツも当然この2人の攻撃は警戒していたはずです。しかし、この試合を通じて、田中とカークのピック&ロールを止めることが出来ませんでした。

原因は、田中のマークについていたアキ・チェンバースが、スクリーンでカークに引っかかってしまい、田中をフリーにしてしまっていたからです。

チェンバースはスピードがある選手で、守備も苦手な選手ではないという印象がありますが、カークがスクリーンに入るタイミングを把握できず、スクリーンに引っかかり続けてしまいます。

仕方なく、大野ヘッドコーチはチェンバースを早めに諦め、石井を出場させます。ただ、アキ・チェンバースがベンチに下がったことで、千葉ジェッツがやりたい「アグレッシブなディフェンスから走る」攻撃のオプションが減ってしまいました。なぜなら、走れる選手の1人がチェンバースだからです。

石井は守備が上手く、3Pシュートを得意としています。石井はスクリーンに簡単にひっかかる選手ではないので、チェンバースと石井に代えると、ピック&ロールの攻撃は止まりましたが、石井が入ったあとに、出場時間管理を徹底しているアルバルク東京は、カークと田中をベンチに下げます。結果的に第1Qは、19-18でアルバルク東京が上回りましたが、僕は得点差以上にアルバルク東京が試合をコントロールしていると感じました。

2Q:千葉ジェッツを悩ませたファウルトラブル

2Qで気になったのは、残り6:12で石井が3つ目のファウルを犯したことです。石井が入っている間は、アルバルク東京のピック&ロールを使った攻撃は止まっていましたが、石井が3つ目のファイルを犯したあと、少しずつアルバルク東京の得点が増えていきました。

石井のことを取り上げるのは、石井が千葉ジェッツの守備の強度を高めるキーマンだからです。相手の2番プレーヤーを抑えるだけでなく、時には小野やインサイドの選手のヘルプに回り、他の選手の守備を助けます。また、攻撃時は3Pシュートが注目されますが、積極的にスクリーンをかけたり、味方をフリーにするための動きをしてくれるので、他の選手の力を引き出せる選手です。

ボールゲームは、ボールを保持する能力が高い選手を揃えれば、勝つわけではありません。石井のように、他の選手のためにプレー出来る選手の活躍が勝敗を左右します。そう考えると、石井が3ファウルで第3Qまでの終盤まで起用できなかったのは、千葉ジェッツにとって大きな痛手でした。

そして、石井のファウルと同じくらい痛かったのが、エドワーズが2Qで2つ目のファウルを宣告されたことです。

千葉ジェッツは琉球ゴールデンキングスとの準決勝で、徹底的にポストアップからの攻撃を仕掛けられ、エドワーズ、ライオンズといった選手がファウルトラブルに陥り、ファウルを恐れて、強度の高い守備が出来ませんでした。

この試合でも、エドワーズが2つ目のファウルを犯したあたりから、少しずつアルバルク東京のビッグマンへの守備が緩み始めます。アルバルク東京には、パワーとスピードがあるカークがいるのですが、エドワーズはファウルを気にして、守備の強度が緩んでしまったようにも見えました。

3Q:アルバルク東京がチャンピオンシップにとっておいた「ダブルチーム」

第3Q以降、千葉ジェッツの攻撃にミスが目立ち始めます。

要因はアルバルク東京の守備です。もちろん、アルバルク東京の守備のアクションの強度が高く、千葉ジェッツが攻撃を仕掛けるときには、すばやく自陣に戻って、千葉ジェッツが得意な速い攻撃が出来ないようにしていました。ただ、アクションの強度と頻度が高いだけでは、千葉ジェッツの攻撃は抑えられません。

アルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、基本的には「ダブルチーム」と呼ばれる、1人の選手を2人でマークする守備を好まないヘッドコーチです。しかし、「熱血解剖Bリーグ」で佐々木クリスさんが何度か指摘されてましたが、アルバルク東京はプレーオフを見据えて、ダブルチームを使った守備をテストしていました。

この試合では、小野とエドワーズという、千葉ジェッツのキーマンがボールを持ったときに、ダブルチームを使っていました。小野のポストアップ、エドワーズのペイントエリアへのダイブは、千葉ジェッツの強みです。しかし、2人に対しては、マークする選手が移動する方向を限定し、移動した先には他の選手が待ち受けるという守備を仕掛け、2人を自由にプレーさせませんでした。

興味深かったのは、小野に対しては馬場がマッチアップする時間が長かったことです。

スターティングメンバーには菊地が選ばれていましたが、第3Qの終盤以降はザック・バランスキーと馬場の2人でローテーションし、小野を自由にプレーさせませんでした。ザック・バランスキーも馬場も、身長が高いだけでなくパワーもあるので、小野と互角に戦える守備力を持っています。

そして、馬場は小野とマッチアップするので、スピードのミスマッチをついて、馬場が小野にドライブを仕掛けることで、何度もシュートチャンスを作り出しました。もしかしたら、準決勝の千葉ジェッツ対琉球ゴールデンキングス戦で、琉球ゴールデンキングスの田代が小野にスピードで優位にたったのをヒントにしたのかもしれません。

4Q:アルバルク東京が徹底していた「タイムシェア」

アルバルク東京の強みは、シーズン通して徹底的に出場時間を管理し、選手に均等に出場時間を与え、体力の負荷をコントロールして戦えることです。

出場時間をコントロールする戦い方は、プレーオフも継続。この戦い方を続けた結果、もともと力があった、ザック・バランスキーのような選手だけでなく、馬場、小島といった選手が大きく成長し、チーム力を向上させました。

この試合では、ポイントガードとしてスターティングメンバーで出場した安藤の出場時間は21:08。一方、控えの小島は18:52。ほぼ同じ出場時間です。25分以上出場したのは、田中とカークのみ。出場時間をコントロールしたことによって、強度が高い守備が継続出来たとも考えられます。

一方の千葉ジェッツは、追いかける試合展開とはいえ、富樫、エドワーズ、小野の3人が30分以上の出場時間を記録。特に小野は、3Qに3つめのファウルを記録するまで、ほぼフル出場。特定の選手に頼らざるを得なかったことも、千葉ジェッツにとっては大きな痛手だったと思います。

「セカンドユニット」と呼ばれる、スターティングメンバー以外の得点は、42-17でアルバルク東京が25点上回っています。25点の差は、そのまま試合の得点差を意味します。田中やカークの活躍が印象に残る試合ですが、セカンドユニットの差が勝敗を分けた試合だといえる試合かもしれません。

2016-17シーズンのアルバルク東京は、チームとして足並みが揃っているようには見えませんでした。しかし、この試合では、試合を通じて、ハードな守備だけでなく、成功率の高いシュートチャンスを作り出すためのプレーを出場した選手全員が継続して行っていました。優勝にふさわしいチームだと思います。

千葉ジェッツの攻撃で気になったこと

千葉ジェッツとしては、アルバルク東京の得意な攻撃パターンを抑えることが出来ず、逆に自分たちの攻撃パターンを出せず、よいプレーがほとんどないまま敗れてしまいました。

千葉ジェッツの攻撃で気になったのは、ピック&ロールを得意とするチームなのに、シーズン終盤はピック&ロールをあまり使わなかったり、使おうとしても、スクリーンの精度が低く、守備のズレを作り出せない場面が見られたことです。守備のズレが作り出せないので、小野のポストアップ、エドワーズのペイントエリアへのダイブ、富樫のドリブルといった、個人の力でシュートチャンスを作り出すことで勝利を重ねてきていましたが、この試合は個人の力も封じられてしまいました。

Bリーグは着実にレベルアップしているけれど、世界のバスケットボールはもっとレベルが上がっている

2シーズン目のBリーグが終わりました、各チームのプレーの強度が明らかに上がり、戦術のバリエーションも増え、見どころの多い試合が増えました。

ただ、世界のバスケットボールは、1つのプレーで複数の選手がスクリーンをかけたりといったプレーが当たり前のように行われています。Bリーグももっと緻密に、強度の高いプレーを継続出来なければ、リーグの価値を上げることは出来ません。(最近ユーロリーグの決勝戦を観ましたが、緻密な攻防の連続に衝撃を受けました)

Bリーグもまだまだ課題は多いですが、着実にレベルは上がっています。ただ、レベルが上がっていることに安心せず、もっとブースターは選手に対して、高いレベルでプレーすることを求めてほしいと思いますし、選手もブースターの期待に応えてほしい。そう思います。

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西原雄一

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