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午前0時、インターホンが鳴った。


数日前。

僕はバイトを終え家に帰り、布団の上でゴロゴロしていた。

時刻は午前0時。

明日も朝からバイトなのでそろそろ寝なければ、そう思った瞬間

ピンポーン

家のインターホンが鳴った。

僕はドキッッッ!!!として布団から飛び起きた。

心臓がバクバクしている。


何や、こんな時間に!?

え、まじで何!?

今0時過ぎやで!?

え、誰??

あかん、こわ!!


僕はパニックになった。

もちろん普段こんな時間にインターホンが鳴る事はない。

相手はまだ分からないが

一つ確かなのは

"おそらく何かしらのよくない事が待ち受けている"

という事である。

何せ、こんな時間である。

間違いなく只事ではない。

僕はインターホンに応答する前に相手について想像した。


まず僕はドアの前の相手が近隣住民である前提で考えてみた。

同じアパートに住んでいる人か周りの家の人達か。

別に何か身に覚えがあるわけじゃないが、おそらく何かしらのクレームだろう。

まじで身に覚えはないが。

あるとすれば

2階に住んでるのに床に座る時や布団に入る時など勢いよくドスンと音を鳴らす、割と大きめの声でネタ練習する、深夜に友達や同期と大きな声で電話する、毎日Hなやつ観てる、数ヶ月に一回ぐらい深夜に「何やこの人生!!!」て叫ぶ、、、

あかん、めっちゃある!!!

これ絶対ご近所トラブルや!!!

身に覚えだらけやないか!!!

35年間実家暮らし、一人暮らし歴約2年のおっさん、ついにやってもうた!!!

人生初のご近所トラブルや!!!

うわ、どないしよ!!!


僕はめちゃくちゃ焦った。

おそらくドアの前で待ち受けているのはご近所トラブルである。

一応他に考えられるとすれば

見ず知らずの変な人、ストーカー、幽霊など

ご近所トラブルよりもさらにタチが悪い。

あと「肉じゃが作りすぎたんで少しどうですか?」という線も残っているが、まあ無いだろう。

今の世の中、肉じゃが作りすぎる人はまあいない。

それに午前0時に作りすぎた肉じゃがを持ってくる人が一番怖い。


僕はご近所トラブルを覚悟した。

そして迎え撃つ心構えをした。

自分で言うのもなんだが

僕は"逆ギレ"には自信がある。

え、何でそっちがそんな言えるの!?を普通にやれてしまう人間である。

さらに大阪時代、プールのバイトで毎日の様に揉め事を経験してきた。

ヤンキー、半グレ達と渡り合ってきた。

ご近所トラブルなんて大した事ない。

さあ、こい!

逆ギレで追い返してやる!


僕は意を決してインターホンの前に向かった。

ちなみに僕の家のインターホンは一丁前にモニター付きのインターホンである。

何故かこの部分だけ設備がいいのだ。

通話ボタンを押すとモニターに相手の姿が映る様になっている。

僕は人差し指でボタンを押した。

するとそこに映し出されたのは

困った顔をしたセブンイレブンの店員さんだった。


???


僕の頭の中は?だらけになった。

なぜ僕の家にセブンイレブンの店員が??

ちなみに僕が普段バイトしてるのもセブンイレブンである。

ただ家の前に立っているのはうちの店の店員ではなく、見た事ない顔のおじさんである。

僕は一瞬

「スカウト??」と思った。

僕のあまりに優秀な働きっぷりを見た他店の店長が僕をスカウトしに来たんじゃないか。

ただそれだとしても時間が0時である。

いくらなんでも店長、情熱的過ぎやしないか。


そんな事を思いながら僕はインターホン越しに「はい。何ですか?」と聞いてみた。

するとその店長らしき人物は大きな声で

「わたくしセブンイレブン〇〇店の〇〇と申します!この度は!本当に!申し訳ございませんでした!!」と叫んだ。


何やら謝罪をしている。

少し考えて、僕は理解した。

この人、、、

謝罪する家、間違えてる。。。


おそらく何かしらの不手際があったのだろう。

一番考えられるのは商品の入れ忘れだろうか。

クレームの電話をもらって店長が直接渡しに行く事になった。

そして間違えてにっしゃんの家にやってきた。

いやいや店長さん。。。

ミスにミス重ねがけしてもうてるやん。。。


何でそんな事なんのよ。。。

ミスミルフィーユやん。。。

この人、結構おっちょこちょいなんやろな。。。

とりあえず、家間違ってる事早く言ってあげな。

本来行かなあかん家、まだ行けてないわけやし。

僕は急いでこう言った。

「あ、いやいや、間違ってますよ!!」

すると店長はこう返した。

「はい、私共が間違っておりました!この度は!本当に申し訳ございませんでした!!!」


いやいやいや、そうやなくて。

何でそうなんねん。

そっちの間違ってるちゃうのよ。

やっぱりこの人めちゃくちゃおっちょこちょいやん。


僕は店長の謝罪を遮って訂正した。

「いや、違うんですよ!家間違ってますよ!」

すると店長は

「へ?〇〇さんのお宅では?」と聞いてきた。

僕は

「いやいや違います!間違ってますよ!」と返した。

それを聞くなり店長は

「失礼しました!!!」と叫び、画面上から消えた。


残されたのは無人のモニター画面。

僕はもう一度通話ボタンを押して画面を切り、布団の上にヘナヘナと座った。

ご近所トラブルじゃなくてよかった。

ご近所トラブルだったら今後、相当面倒臭い事になっていた。

店長さん、早く本人の家行けたらいいねんけど。。。

そんな事を考えながら僕は

ふ〜と息を吐き

「何やってん、今の。。。」と呟いた。



と、これで話は終わりで結局何も無かったのだが、ここからは

映画で最近よくあるエンドロール後の映像みたいなやつである。

倒したはずのラスボスが海底で目光る、みたいな。

続きありますよ、的なやつである。



次の日、僕は昨日の深夜の出来事について考えていた。

店長が謝罪をしに来たのはおそらくうちのアパートの誰かに対してだろう。

うちのアパートは全部で4部屋。

という事は僕以外の3人の誰かである。

うちのアパートは表札がなく部屋番号がかなり見にくい。

201なのか202なのか分かりづらい。

という事は、である。

店長はおそらく僕の横の部屋に謝罪しに来たのだろう。

もし部屋番号が101とかだったら2階である僕の部屋には来るはずがない。

そうなると自動的に横の部屋しかないのである。

まあそれはいいのだが、問題は

店長のあの謝罪っぷりである。

そもそも家まで謝りに行くという事がなかなかある事じゃない。

絶対にその日必要な商品を入れ忘れたとかも考えられるが

もしかしたら相当なクレームを入れたんじゃないだろうか。

そうなると横の部屋の人はかなりのクレーマーの可能性が出てくる。

隣人、モンスタークレーマー説。。。

そういえば何か横の部屋からドンッみたいな音が聞こえてくる事がたまにあるような。。。

ああ。。。


もしかすると

ご近所トラブルはここからが始まりかもしれないのである。。。







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