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四月になれば彼女は

誰かに恋をしている。今ここに打ち寄せる波のような気持ちは、口にした時から淡い夢ではなく、現実となる。

相手の反応に心が揺れる。悲しい結末を避けたくて、気持ちが混乱する。

つらい。苦しい。

それでも人は恋をする。それはなぜなんだろう?(p170)

四月になれば彼女は

読了後、心が一杯で、次の小説に移行出来ずにおります。今しばらく、余韻に浸らせて下さい。

精神科医 藤代俊先生を取り巻く人々の恋愛観、結婚観のコントラストが実に、繊細に描かれていました。

私も、一医療人として、同じ精神科医の同僚 奈々先生との関わりに非常に共感しました。

また藤代先生のかつての恋人、伊予田春さんを看取った医師 中河先生も優しく、非常に優れた先生でした。

3/22公開の映画では、藤代先生を佐藤健さん、奈々先生をともさかりえさんが演じています。

「生きているという実感は死に近づくことによってハッキリとしてくる。この絶対的な矛盾が日常の中で形になったのが恋の正体だと僕は思う。人間は恋愛感情の中で束の間、今生きていると感じることができる」(p231)

四月になれば彼女は

恋愛小説の真髄を見た気がする一冊でした。

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