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フィルムエスト前史(1/2)

「え、フィルムエストTVってあなたがやってたんですか?」

なんて驚かれることが、少しずつ増えてきた。
きのうまで、勤務先で「仕事上のお付き合い」に過ぎなかったはずの社員が、突然内線をかけてきて「フィルムエストって、にしいさんがやってたんですか!めっちゃ見てますよ!」と、涙が出るほどうれしいお声がけをいただいたことも。

ネット上でも「80年代~バブル期ごろのような映像を作るYouTubeチャンネル」といえば「フィルムエストTV」と名前を出していただける機会が徐々に増えてきました。

でも、「フィルムエスト」がそんな趣向になったのは、2020年の春先から。ここ3年での出来事です。

皆さんはYouTube「フィルムエストTV」のチャンネル概要ページをご覧になったことはあるでしょうか?そこにはこんな表記があります。

「2014/03/06に登録」

そう、フィルムエストが今のようなスタイルに至るまでに、約6年の期間を要しているのです。
そして、その6年の間に公開した動画はほぼ全てが非公開の状態となっていて、今や視聴することはできません。

いろんな方に最近聞かれるようになってきたこと。それは…

「フィルムエストって初めから昔風テイストでやってるんですか?」

その答えは「NO」。実は、フィルムエストが始まったころは今と全然違うテイストだったんです。

そんなフィルムエストが「今のようなスタイルになる前」のお話を、少しだけ。

そもそも、なぜ「VHS風スタイル」に?

2020年3月5日、あるツイートがバズりました。

新型コロナウイルスが〝未知の病〟として、猛威を振るい始めたこの頃。
「出社は控えて」という注意喚起とともに、声高に叫ばれたのが「テレワーク」でした。

まったく新しい働き方!といわんばかりに推奨された「テレワーク」でしたが、どことなく言葉の響きが古い…。そのイメージを文字で表現したツイートがバズったのです。

「今の世界の出来事を、昔っぽく表現したら見たことない映像になるのでは?」

そんな思いから、現在の「VHSテープ録画風スタイル」による表現が始まったのです。

「フィルムエスト」の由来

2013年春、大学受験失敗―。

とにかく勉強に興味がなかった高校時代。センター試験の前日には友人と公園で草野球。平日は放課後になると1人で教室を掃除。
「みんなは勉強頑張れ!俺は掃除して快適な空間にする!」…そら落ちるわな。

そんな高校時代の私が、唯一熱を上げていたのは「映像」でした。

クラスや同学年の仲間と、なんでもありのバラエティ番組を撮って、編集して、DVDに収録してレンタル配布してみたり。

高2の時には、クラスの1年間の様子を写真と映像でまとめたスライドショーを作り、視聴覚室で上映。教室のガラスが揺れるほどの〝割れんばかり〟の笑い声に包まれた経験から、次第にこう思うようになりました。

自分の作った映像で、もっといろんな人に笑ってもらいたい!

高校を卒業し、予備校に通いだしてからも、頭の中は「映像」への思いでいっぱい。

・友人にドッキリを仕掛けて沖縄へ連れていく動画を撮ろう!
・川の源流を求めてさまよい続ける探検動画を撮りたい!
・最終的には映画を撮って、大学生活の卒業制作としたい!

いずれ最高の映画を撮るために、切磋琢磨して、少しずつ技術を習得していきたい。一緒に映像をつくる仲間が欲しい。そんな団体をつくりたい。

ふと目に入った英語の問題集には、こんなような文章が。

「Tom is the tallest in my class.」
(トムは私のクラスで最も背が高いです)

映画はフィルム、最上級形は「-est」。
名詞に無理やりくっつけて「filmest」。

最上級の映画を作る団体、「フィルムエスト」

模試数日前。その言葉は、予備校の自習室で生まれたのです。

誰にも見られないコンテンツを量産

2014年春。なんとか第一志望の大学に合格。
合格発表日から数日後、「フィルムエスト」を正式に立ち上げ、高校時代の仲間を中心に動画制作を始めました。

朝日放送テレビの「探偵!ナイトスクープ」が大好きだった私。「マイクを持って街に出て、不思議なスポットや謎の現象などを調査する」パロディ番組を作りました。

「実態を探る」というフレーズが超好きでした
スタジオ収録も実施。台本まで存在するというこだわり、、

「動画作ってん、みんな見てなあ!」
友人に声をかけ、ツイートし、宣伝。

ところが、動画はほとんど再生されません。

「めざせ!再生数100回越え!」
そう奮い立たせて新作をアップするも、再生数は減るばかり。
ひどいものは40回再生にも満たない有様でした。

原因はなんとなく気付いていました。

当時、YouTube動画はすでにジャンプカット(映像の自然な流れを気にせず、カットとカットを繋ぎ合わせる手法)全盛。
対して、フィルムエストの動画はテレビ的な編集手法を多用していて、ネットで見るにはとにかくたるい。そしてなにより…

ネタが渋すぎる。

当時公開した動画のサムネイルをいくつかご覧いただこう。

工場周辺の人は腹痛になったことがないらしい
当たらなかった
ローカルネタすぎ

渋すぎるッ!!!
神戸ノートなんて、神戸市民以外に伝わるはずもない…。でも、YouTuberの過激路線には迎合したくなかった。(それにしても、もうちょいあるやろ…とは思います)

授業が終わって帰宅したら編集。寝て起きて、バイトして授業に出て、帰宅したら編集…。
苦労の末に作品が仕上がっても、再生回数は100回にも満たない。

〝魔の100回再生〟

まるで呪いにでもかかったかのように100回を超えない。そんな「底辺YouTuber」な日々が続きました。

いつかハネる日が来るのかな…。
撮影に協力してくれる友人らにも、なんか…申し訳ないな。

そんなある日、新作動画を上げると〝異変〟が起きたのです。
動画を公開するや否や、再生数はすぐに〝魔の100回〟を超え、300回以上再生されたのです。
その動画とは……。

(2)に続きます。
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