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伴走型のクライアントワークを成功させるための5つのポイント

rootでは、クライアントワークを中心としたUI/UXデザインを行っています。クライアントの事業に継続的に関わりながら事業成長を支援しており、いわゆる納品型の制作会社よりも事業会社内のチームとフラットな関係性を構築するという特徴があります。

こうした伴走型の関わり方は、今後デザインに限らず重要になっていくと考えています。これまでrootのメンバーも様々なクライアントとの関係性やコミュニケーション方法など試行錯誤しながら伴走してきました。今回は、どのように関係性を構築してきたのかをご紹介していきます。

なぜ、伴走しなければいけないか?

クライアントとの関係性に変化が生まれています。納品型から伴走型へとなぜ変わってきているのか。

元来クライアントワークでは、決まった成果物を作ることをゴールにしてきました。デジタルシフトが起こった、起きている業界においては、その前提が崩れています。デジタルシフトが起きる領域においてはマーケットは非常に変化が激しく、サービスやプロダクトは常に変化を求められます。

外部環境の変化もある中で、クライアント側も明確な答えを持ってプロジェクトを進めることは難しく、より柔軟性を持ったプロジェクトの進行スタイルが求められています。こうした環境下では、従来のように納品物が定まっている状態でスタートし、納品に向けてプロジェクトを進行することは難しい。

では、パートナーとして外部から関わる私たちに求められる役割はなにか。それは、一方向的に決まった企画や仕様に合わせた制作を行うアプローチではなく、戦略や設計と制作を行ったり来たりしながら進めるプロセスが必要になると考えます。

不確定の部分を決めていくために伴走しながら、随所でクライアントの意思決定や実行をサポートすることが求められている。そう考えて、rootは様々なプロジェクトに携わっています。


伴走型のクライアントワークの5つポイント

では、伴走をするクライアントワークとは、どういった取り組みなのか。伴走のために必要な条件や具体的なアプローチとはなにかを紹介していきます。

1. 伴走や共創は互いのコミットメントが重要となる

クライアントワークでは時に、担当者の熱量が低く内部の意思決定やプロセスが円滑に進まないケースを見かけます。変化に応える柔軟性を持ったプロジェクト進行を行うためには、クライアント自身の熱量を引き上げることが重要です。

そもそも、熱量の低いクライアントと仕事をしないという選択もありますが、すべての人が仕事を自由に選べるわけでもないため、そういった場面に出くわした場合のアプローチ方法をご紹介します。

初めて仕事をする相手とは、スコープを最小にとどめトライアルを実施する。

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コンペ方式のプロジェクトなどでは、はじめて一緒に仕事をする相手にも関わらず、大型のプロジェクトをはじめてしまうケースがあります。プロジェクトの規模が大きいということは、その分予測不可能な要因が増えることになり、その時点で難易度は高い。

こういった場合、スコープを段階的に区切ることで、トライアル的に小規模なプロジェクトや期間を限定した関わり方を通して、熱量や特性を把握するアプローチが有効です。小さく動くことで互いに担当者の主体性やモチベーションを把握でき、プロジェクトを進行していくにあたりどんな問題が顕在化してくるかを把握できます。

顕在化した問題に対して体制やプロセスを変更することもできますし、プロジェクトを成功へ導ける可能性は十分にあります。担当者の熱量を引き出すために関わる期間も設けられ、受ける側としてもコミットしやすくなります。


2. 前提の認識、期待値をすり合わせる

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伴走型といっても、要件がまったくないわけではありません。要件定義が大切であることは言うまでもなく、合わせて相手から見た時に自分や自社に対してどのような期待を抱いてくれているのか? を把握することが大切です。それはコミュニケーションや進行プロセスに関係してきます。

例えば、クライアントからの要件に「デザイン上これはやらないほうがよい」という要件が入っていた場合も、最初から否定や対案をぶつけるのではなく、相手の要望にまず応えたものを示します。その上で代替案も添えて提示するなどすることで相手の要望を組んだ上で、よりよい解決策の提示を行うことができ、信頼関係の構築を行うことが可能となります。

一見、課題がはっきりしているのであれば、ストレートに正解を出すことが正しいように思えます。ですが、チームで問題に取り組んでいくという視点から見ると、お互いに納得感を持って課題解決ができているかが重要です。クライアントと同じ目線で議論し、課題解決を行えたかでその後の取り組みが円滑に進むかは大きく影響していきます。


3. 事業の成長に向いやすい契約形態、関係性を選ぶ

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そもそもの契約形態や商流も重要な観点です。納品型の契約では、いわゆる請負型の契約形態が一般的であり、成果物を納品することを取り決めた契約を行うことが前提となります。

この契約形態においては、決まった期日、決まった要件を満たした成果物を上げることが目標と定義されるため、期日や要件の変動に柔軟に対応できない弱点があります。クライアントとの関係性を柔軟にできたとしても、そもそもの契約形態から柔軟に取り組みにくく、結果的にゴールを納品に置く結果となります。

契約の仕方によっても、同じチームとして伴走しやすいかどうかは変わってきます。rootでは、契約形態については準委任契約の形を取っており、決まった工数を提供していくことでその月におけるスコープの優先度や時間軸を整備していくアプローチをとっています。


4. 計画の立て方を変えていく

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プロジェクトの関係や契約形態を柔軟にしたことで、スコープの変動にも応えられる体制ができたと言えます。しかし、スケジュールについてはビジネス上の計画も含まれるため、柔軟にズルズルと後ろ倒しにするわけにもいかないのが実情です。

何かをローンチするにあたりゴールとなる期限を設定するのが一般的ですが、その期間が長ければ長いほど、見積がズレる可能性は上がっていき、要件が変動する可能性も上がります。そういった状況では、常にかけられるリソースの限界と取り組むべきスコープの優先順位を明確にしていくことが大切です。

例えば、半年後のリリースに向けて計画を立てましょうとなっても、漠然としたイメージができません。 1週間で取り組む内容の計画を立てましょうと言われれば、具体化しやすい。半年の計画を立てる際は、ズレがなく進捗していくかどうかは、1週間の取り組みを見積もったとき実行した結果との差分がどの程度あるかにあります。この差分の合計値が結果的に大きな見積もりのずれとなりスケジュールを大きく変動させる要因になります。

root内では、入社するとはじめに見積の制度についてのお話をすることがあります。まずは依頼されたタスクについて、どのくらいの時間で対応ができるかを週単位レベルで見積ってもらいます。その後、実際に実行した結果を振り返ることで、どのタスクがどの程度の見積とのブレが生じたのかを振り返ります。 またタスクの中のどういった要素に大幅に時間がかかっているのかを分解することでその人自身の苦手意識や時間のかかる要素が何かを紐解くこともできます。

こうした見積と振り返りのサイクルを繰り返すことが結果的に精度の高いスケジューリングにつながり、方向性を定めつつも柔軟に調整しながら進行していく計画を可能にします。


5. 戦略と制作を行き来する

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事業は刻一刻と変化していくものです。昨日決めたことが今日覆るといった、朝令暮改のような出来事も往々にして起こります。そういった状況下では、一度決めたことを通すアプローチよりも変化することを前提としたプロセスの設計やデザイン制作の手段を身につけることが必要です。

ただ、むやみに作り続ければよいという話でもないのですが、こういった問題を扱う時デザイナーは制作者であるがゆえ盲目的になりがちです。依頼を受けた場合には、一旦その状況を冷静に判断するため立ち止まり、実行しようとしているイシューがこの表現で解決できるものなのかを見定める必要があります。また、その思考を巡らせる際に考えるべきポイントとして時間軸を捉える必要があります。

この施策を今実行した場合と数カ月後に実行した場合の違いはあるか?
あるとすればそのインパクトはどちらが大きいのか?  

時には依頼を鵜呑みにするのではなく、作らない選択を取ることを提案することも一つのアプローチです。制作は目的ではなく、事業の成果に最大限寄与するためのアプローチが何かを受ける側の視点からも提示することでよりフラットな議論が可能となり、戦略と制作を行き来することができるようになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?変化の激しい時代だからこそ、クライアントと共に考え課題を解決していくことがより求められているのではないでしょうか。依頼される内容によっても、行うアプローチは異なってきますが課題を解決する手段については、クライアント以上にその領域の専門家として結果につながるアプローチを提案することは重要です。

デザインの領域ではどういった表現やアウトプットにするのかを定めるのはデザイナーの力量で決まるように、クライアントからの依頼をただ鵜呑みにするのではなく、どういった戦略や背景があるかも含め理解し手段を考えることで結果につなげることが可能になります。また、依頼されたタスクにフォーカスするあまり、結果を出すことだけに盲目的になってしまうと同じプロジェクトを行う仲間であるクライアントやチームメンバーとの意識のズレが生まれやすくなります。

重要なのはチームで課題を解決していくことであり、自分自身だけで解決していくことではありません。普段クライアントワークに関わりながら、課題を感じられている方の参考になれば幸いです。

rootでは一緒に働く仲間を募集しています。
少しでもご興味ある方はカジュアルにお話できればと思います。


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