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『起業の天才』が語る、偽物であり続けるということ

 皆さんは、「自分に才能がある」って思ったことはありますか?

 勉強なりスポーツなり文章なり、そういったものについて、自分には才能があるな、という風に思ったことがある人ってどれぐらいいるんでしょうか?

 ちなみに僕はありません。
 
 勉強に関しても文章に関しても何に関しても、自分に才能があるなんて思ったことはただの一回たりともありません。

 ただ、そういう風に言いつつ、僕はちょっと思っていることがあって、才能があるとか、自分は本物であるとか、そういう風に思ってない人間の方が割と成功するんじゃないか、という話でございます。

自分とは何者か

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 こんな風なことを語りだしたのは、最近リクルートという会社の創業者である江副さんの『起業の天才』という本が発売されたからです。ここで書いてあったことが本当に素晴らしい。

 8兆円企業のリクルートを作った男、江副さんとは一体どういう人だったのかという話なんですけど、この人、経営者というものが何か分からないという悩みを、長期に渡ってずっと抱えていたそうなんです。

 例えば何か困難にぶち当たったりした時に、俺はこの会社で一体何をするべきなんだろうか、どういうような形でこの会社を存続させていけばいいんだろうか、そもそも経営者とは一体何なんだろうか、みたいなことをずっと考え続けていたと。考えて考えて考え抜いていた、と。

 それで、多分この人、ずっと結論は出てないと思うんですよ

 結論っぽいものは出たかもしれないけど、それが本当に正しいのかどうかは分からないまま前に進んで、また分からなくなるというのがきっと何度も繰り返されたんだろうなということを、この人の人生を見ていた時にすごく思いました。

 自分が何者なのか分からない、自分という存在に一体どういうような才能があるのかが分からないという状態。

 これがすごく長かったということを書いてあったんですけど、この状態こそが、実は人間を成長させるんじゃないかと思うんです。

偽物であり続けるということ

 僕は、はっきり申し上げて、偽物東大生であるという自覚があります。

 二浪だし、東大生たちと話してても、「うわ、俺この人たちよりも3段階くらい頭悪いな」、という風に思うことが結構あります。

 で、そういう風になった時に、僕は毎回、自分というのは才能がないんだな、偽物なんだなという風に愕然とするわけでございます。凡庸な人間だなあと、才能のない人間だなあと本気で思うわけでございます。

 で、そうなった時に僕は努力するんですよ。だって自分が本物じゃないから。

 つまり、自分とは別に本物がいるという風になっているわけなんだから、自分も本物の人達と同じように頑張らなければならない、という使命感に駆られるわけです。頑張る以外に道はないんですよ。

 だから僕は多分、本物の人以上に努力してるという自信はあるなって思います。

 ……なんて言ってて、ちょっと本当にそうなのかなって不安になってきたんですけど笑、でも、僕は偽物だからこそ本物になるために頑張って、でも本物になりきれないという経験がずっと続いているな、と思います

 きっと江副さんもそうだったんだと思うんです。自分は経営者としてちゃんとやれてるだろうか、経営者とは一体何者なんだろうか、という問いがまずあったはず。

 この問いに対して自分は答えを出せていないんじゃないかという思いを持ちながら、それでも前に歩いていった。だからこそ、江副さんは、経営者として誰よりも大成した、と。

 多分これは、すべての物事において言えることだと思うんです。スポーツでも勉強でもそう。

 自分には勉強の才能がないな、スポーツの才能がないなみたいに思って、思っているからこそ努力するんだと思うんですよ。

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 本物になりたい、だけど自分は偽物である。そういう思いを持ちながら、だからこそ前に進んでいく。これを人間の努力と呼ぶんじゃないですかね

 本物になるために、本物というものをつかむために、偽物であるんだけれどやっていく、と。

 この中で一番難しいのは、いつまでたっても本物になれないってことです。

 というか、本物になったという風に自分が自覚的になった瞬間に、努力というか、成長というか、そういうものは止まってしまう

 自分には才能があるんだ、本物なんだって思った瞬間、その道は途絶えるんですよ。ここがすごく辛いところ。

 だから、いつまでたっても自分は経営者として正しい人間ではないんだって思い続けなければならない。自分は東大生として間違ってるんだって思い続けなければならない。勉強ができる自分にはまだなれていないんだって思い続けなければならない。

 これが難しくて、でもだからこそ人生が面白いのかなと思うんです。

 人生って難しくて、ここがゴールだという所って割とないんですよね。成功するのがゴールとかいう風に言ったりするわけですけど、そんなこと言うんだったら、だって人間死ぬわけですよね。

 人間いつかは死ぬと分かっていながら前に進んでいくということをしなければならないわけで、そう考えた時に一体ゴールってなんだろうという風に考えるわけですよね。

 ずっと手に入れられないものを得ようとして、それで結局は得られないんだけど、その道というのが、綺麗で意味のあるものだったと、後から振り返った時に思う。

 そういうような道程のことを、人生と呼ぶんじゃないかなと思うんですよね。この『起業の天才』という本を読んで僕が思ったのは、そういうことでした。

 多分江副さんはずっと満足しなかったんだと思うんです。多分それは多くの人達が思っているよりもずっと難しいことなんだと思います。

 本当に才能がある人がのびやかに生きていくというのよりも、偽物の人が本物になれないことにずっと苦しみ続けながら前に進んでいくということの方が、100億万倍難しいと思うんですよね。でもそれをやってたんだろうなって思うんです。

まとめ

 皆さんはどうでしょうか?

 偽物ですか、本物ですか、本物になりたいですか、そして本物になれると思いますか?

 多分この問い自体には意味がなくて、こう問い続けていくことにこそ、意味があるんだろうなと思います。

 というわけで、『起業の天才』はとても面白かったので、皆さん読んでみて頂ければなと思います。ありがとうございました。

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