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2021年7月

1964年に生まれた。言わずもがな、日本で初めて開催された東京オリンピックのあった年である。言わずもがなと書いたけれど、はたして前回の東京オリンピック開催年をだれもがすぐに答えられるものだろうか。わたしなんぞ長野オリンピックの開催年は、もはや忘却の彼方である。インターネットで検索してみた。そうか1998年だったか。札幌オリンピックは1972年だったそうな。小学校に上がったばかりの年齢だから、そういえばあったな、という程度の記憶しかない。フィギュアスケートで、白いショートヘアに赤い衣装を着た、笑顔のかわいいジャネット・リンが人気になった、あのオリンピックだったっけ。

このたびの東京オリンピックは開催年は2021年だけれど、2020年東京オリンピックである。記載するだけでも波瀾を想起させるじゃないか。いまを生きるわたしたちにとっても、ややこしいオリンピックなのだから、後世のひとたちにはさらにややこしい歴史となるかもしれない。が、2020、2021のこの並びは覚えやすかったりして……。

「今日、開会式あるのかな?」
「新聞のテレビ欄には夜八時ぐらいに番組があったわよ」
「生放送? 録画?」
「どっちだろう。でもさ、本当に、オリンピックやるのかしらね?」
これ、開会式当日の開催地に住むものたち、仕事仲間とわたしの会話である。この期に及んでオリンピックが開催されるか疑心暗鬼になっているのだ。
こんな国民がいる一方で、この日に向けて着実にことを運んでいる大勢の関係者があるわけで、ことを運んでいる側からすれば、中止なんぞありえない。世論がどうであろうと進めなければならない。進めるのが仕事なのだ。体制という言葉が頭をかすめなくもないが、それぞれの仕事を進める個人には、体制の文字など、おもいもよらぬかもしれない。
「おあいにくさま」
あれこれ物申す国民を横目に、ペロリと舌を出すようなオリンピック関係者がいなきゃいいとねがうばかりである。

なんのかんのと言っても、オリンピックは予定通りはじまった。はてな、はてなと疑問符だらけではあるけれど……、感染者数は激増しているけれど……、ひたむきに闘う選手たちには拍手を送る。
ああ、ややこしや、ややこしや。

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