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長い長い旅の途中

日升庵は、お煎餅の手焼き体験が出来る体験型のカフェとして筑波山に2015年にオープンしました。

当時、筑波山にその地域出身で無い人が新しくお店がオープンすると言うのは大変珍しく、体験型のお店とあってか、TV等のメディアの取材も受けるほどでした。

滑り出しは順風満帆のような雰囲気でしたが。。
その後、長い暗闇のトンネルをくぐることになります。。
今回はそんな話を書きたいと思います。

そのオープンの1年前、僕は某家電量販店で生活家電の販売員をしていました。実績を評価して頂いて、他の販売員さんに研修講師として全国の店舗を回っていた時期もあります。
それは今の自分を作ってきた成功体験の1つです。
その時の話も別の機会に書きたいと思います。

何を目的に独立したか

独立当時、茨城県の魅力度ランキングが47都道府県でワースト1位でした。実は今も変わっていません。。

そこで、一般的になぜ魅力が無いと思われているのだろうと考えたところ、元々の地域の魅力を住んでいる人が当たり前になり過ぎて気づけていない。
そもそも、情報が無さすぎて知らないのだと仮説を立てました。

実は、47都道府県で唯一民放のテレビ放送局が無いのも茨城県の特徴なのです。地元にとって、テレビ等のメディアで取り上げられる事と言うのは、その地域の魅力を第三者の目で見てもらい、「いいね!」と言って貰うこと。
つまり、他者から褒められる事によって、気づかなかった自分の良いところに気づき、自信を持って他の地域の人に伝えられるのだと思います。

しかし、茨城県の場合民放局が無いので、自分達が他者にどう見られているかわからず、自分達も魅力に気づかず、うちの県には何も無いからなぁとボヤいていたりします。

そこで、ミッションの1つに「自分達のふるさとの魅力に気づき、歴史を知り、伝える仕事をすること」を目的にしました。

これは、販売員時代に「売りたい商品の魅力を知らずに、人に勧めて売る事なんてできない」と言う教訓がありました。
自分が良いと思って無い商品がなぜ他人に良いと思われるでしょうか。作り手の気持ち、制作された背景、他社商品との比較が自分の中で分析されていないと納得してもらえるようなプレゼンなんて出来ないのです。

その土地の魅力を伝える販売員になりたい。

今でも変わらないミッションです。

何から始めよう。

ミッションを達成させるために何が必要か考えた時に、まず調べたのは「観光地に求められている3つの条件」です。

3つの条件とは
・その土地で作られたものを食べたい(地産地消)
・そこでしかできない体験がしたい。(体験型)
・地元の人と話したい。(コミュニケーション)

この条件をバランスよく提供できるのは、カフェのスタイルだと思い、
地元つくばの観光地で飲食店が出来る場所で、何か始めようとしたのが始まりでした。

飲食店のアルバイト等はありましたが、料理人でも、経営をしたこともない素人でしたので、最初に多くのメニューを作りだせるはずもなく、ドリンクメニューも最小限、食事のメニューは無く、一番の売りは「地元のお米と醤油を使用したお煎餅の手焼き体験」でした。

なぜお煎餅の手焼き体験だったかと言うと、筑波山麓のお米は昭和初期に皇室の献上米だった歴史があり、お醤油に関しても本来はつくばの隣、土浦の地の名産だったのですが、江戸時代に筑波山の方から来る醤油は美味しいと評判だったので、筑波山の別称、「紫峰」が江戸前寿司で、お醤油の事を「むらさき」と呼ぶ語源になったという話を知り、お米とお醤油で出来る日本の伝統食は何かを考えた時に、「お煎餅」のワードがふと頭によぎりました。

ゆっくり地元産のお米100%のお煎餅を焼く体験をしながら、地元の紹介をする話が出来れば、始めに書いた観光地の3つの条件をすべてクリアできると考えた訳です。しかも、日本の伝統食の体験は、その当時言われ始めたインバウンド政策にもマッチするだろうとも思いました。

一つの柱が出来れば、少しづつメニューも増やしていけるだろう。まずは、やってみよう!と思い、メニューの作成と並行してお店の場所を探し始めました。
この時、11月下旬だったと記憶しています。

最高の夕焼けに感動したお店との初対面

店舗候補地を探すのは、比較的簡単でした。
見つけた場所は、観光案内所の隣。駐車場スペースはお店の隣に1台だけの場所でしたが、バス停のすぐそばで、市営の駐車場も目の前の立地でした。

実は、この場所以外空いている店舗に出来る土地がなかったので、迷う事はありませんでした。7年くらい空き家だったので外壁の塗装はボロボロでしたが、和風の古民家みたいな建物で趣があったので初めて内見に行った時にすぐ気に入りました。
ちょうど、秋の紅葉の時期だったので、山の雰囲気も良く、道路側の窓から差し込む夕日も最高に綺麗で、こんな素敵な場所で仕事が出来る事がその時から楽しみで仕方がなかったのを覚えています。
そして、つくば市の前身、旧筑波町出身の人以外で、筑波山にお店を出すのは30年ぶりだと言うのはオープンしてから近所の人に教えてもらいました。

この場所が、オープン1年目に悩みの種になるとは思いませんでした。

始めて気が付いた立地条件の大切さ

前項で書いた、観光案内所の隣、バス停のそばで、市営の駐車場も目の前の土地は条件のイメージでは、本当に良い場所だと思う人が大半だと思います。

しかし、だいたいの人が山の上を目指す立地なので、バス停から下に行く人の流れは少なく、観光案内所に隠れてお店は山から下りてきても目立たなく、市営駐車場の車の入り口と人が歩いて出る場所は別だったのです。

それでも、オープンした3月は筑波山梅まつりが開催される事もあり、一年を通してその時だけはバス停から下に降りる流れがあり、新しいお店だったという事もあり、最初の週末は行列が出来るくらいの集客だったので、幸先の良いスタートだったと思っていました。

梅まつりが終わり、4月になり学校の春休みが終わる頃、いきなりガクッと落ちた集客で事態に気づきました。

そこから、9月までの長い長い低迷期間を迎える事になりました。。

>>>つづく。

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