見出し画像

学校に行きたくない

ミイラ取りがミイラに


 学童からの帰り道は、うつむきながら歩く。家についてもランドセルを置いてしばらくぼけーっと。そして次の日の朝に「頭が痛い」との申し出。
 
この3つから私の頭の中に導きだされた仮説は何でしょうか。
 
そう。「息子は頭が痛いのではなく、学校に行きたくないのではないか。」
 
私の仕事は、教室に入れない不登校傾向の子の支援員。これまでの経験や知識から仮説をもちました。いやー役に立った。
 
そんな仮説を持てても、私は「パパは仕事だから、なんとか頑張って学校行きな!つらかったら先生に言って」と言いかけました。多分その言葉を言えば、息子は登校したでしょう。仕事を休むと日頃関わっている子があわあわしちゃうだろうから(いつもと違うという意味で)、仕事は休みたくなかった。それに息子だってちょっと甘えているだけだ…と。
 
自分の子の不登校の兆候を感じつつも、言葉を選ばずいえば他人の子どもの不登校対応を優先している自分がいたのです。直感的にこれではだめだと思いました。さあ、ここからが勝負。とりあえず息子の学校に遅刻すると連絡し、息子と真剣に向き合うことにしました。そんな私のリアルな出来事です。
 

ラウンド1

まず息子が抱えているのが何かを把握するのが第一課題です。この方向性を間違えると危険というのは重々知っていました。
 
「ちょっとお話していい?」となるべくいつもの感じを変えないように、テレビを見る息子に言いました。しかし、息子は敏感に感じ取ったのか、「怖い話でしょ。嫌だー。」と回答。んー、そうくるよね。でも、負けません。ここは譲れません。
 
以下、私→パ。息子→子で表します。
パ「別に怖い話じゃないよ。〇〇(息子の名前)のことを教えてほしいだけだよ」
子「えー。なにー。早く終わってね。」と言いながら目はテレビ
パ「一旦消すね。ちゃんと教えてほしいから」
息子、もじもじソファーに隠れる
パ「今日、休んでもいいよって言ったら、休みたい?」
子「うん」
パ「頭はすごく痛い?」
子「んー、ちょっとだけ」
パ「ちょっとだけなら勉強できそうだね。大人になるためにも勉強はしてほしいんだ。だから学校を休むんだったら、お家で時間割通りやるってなっても休みたい?」
子「うん。おうちがいい。」
パ「勉強してもお金もらえないよ(我が家はドリル等をしたらお金がもらえるシステム故)。それでもいい?」
子「うん」
パ「じゃあ、分かった。今日はお休みにしよう。」
 
一旦、勉強をするということで、お休みとしました。私も覚悟を決め、仕事を休みにしました。ここまでで、単なる甘えだけではないことがなんとなくわかりました。つまり、何かに苦しんでいる可能性が高いです。そしてさらっと流していますが、私は、頭が痛いことをなかったことにしようともしています笑。
 
でも、ここで行きたくない理由が、友達関係なのかなという不安もでてきました。さあ、次は実際に勉強をしてみます。
 

ラウンド2

1時間目は国語。漢字ドリルを進めます。普段なら嫌がる国語も自分で言った手前、文句を言わずに漢字や文章読解もすすめます。多分今日授業でやるであろう漢字ドリルのページもやります。特に問題なく1時間目終了です。
 
2時間目は算数。今は九九の8or9の段なので、8の段の九九を覚えます。そして、ここで問題が発生します。九九カードを使って覚えるのですが、8×3と8×4で何度もつっかえるのです。一度確認してすぐに問題を出しても全然答えられないのです。15分が過ぎても、先に進めません。そして泣き始めます。泣きながらも九九を唱えようとします。
 
一旦落ち着かせてから再度取り組もうと思いますが、九九を言い始めると途端に泣き始めるのです。できないとすぐに泣きあきらめる長男の癖です。いつもは遊びとかゲームとかなので、「別のやつやろっか」と気持ちをそらす対策をしてきましたが、今回はそうはいきません。
 
泣いてはやめて、落ち着いては再開し泣く。これもまた5分くらい続きます。さすがにここままではと思い、抱きながら言います。
 
「うんうん。よしよし。くやしい?そっか。悔しいね。できなくて悔しいっていう気持ちはとても素晴らしいことだよ。いいんだよ。もしかして学校でも分からくて悔しいってときある?そっかそっか。他の教科も?うんうん。だから勉強がやだなってこと?
 
そこで判明したのは、勉強が分からないときがあるとのこと。そしてそれが苦しいことです。しかし、素直モードのここを逃すわけにはいきません。チャンスです。
 
「休み時間は苦しいことある?そっか。学童は?うんうん。」
 
休み時間も学童も大丈夫でした。本人の中で友達関係では苦しい感じではないことがわかりました。これは一安心。とはいえ、九九から逃げるわけにはいきません。なんとか前を向くようにしなくてはいけません。
 
パ「勉強ができなくて苦しいんだね。そうだね。パパは〇〇が笑っていてくれればいいんだ。だから九九ができなくても別にいいやーってなるならパパは別にいい。でも、できなくて悔しくて泣くなら九九できるように練習したほうがいいと思う。〇〇はどっちがいい?」
子「練習する」
パ「大丈夫?がんばる?」
子「うん」
パ「よし、じゃあ一緒にがんばろうね。」
 
結局、2時間目では8×4まですらクリアできませんでした。でも、非常に有意義な時間で、この出来事のために仕事と学校を休んだといっても過言ではないくらいです。
 

ラウンド3

3・4時間目は図工だったので、家にあったラキューをしました。これはもう集中そのもの。休み時間をすっ飛ばして、ずっとやっていました。
 
お昼休み。ご飯を一緒に食べながらなんとなーくの流れを装いながら話をしました。何かというと、そう明日からのことです。毎日これでは仕事ができませんから。
パ「こうだったら、学校で勉強がんばれるなーってのはある?」
子「うーん。新しいドリルが欲しい(今は100マス計算しかなく、あとは教科書準拠のもの)。」
パ「え?それだけでいいの?」
子「うん」(多分意味を分かっていないなー)
パ「じゃあ、今日の時間割が終わったら買いに行こう。ドリルが欲しいってことはお金も欲しいってこと?じゃあ今、学校行って宿題やったら30円のやつ、60円にしてあげる。ママにもパパがお話しする」
子「え?いいの?」
パ「うん、だって〇〇はいつもがんばってるもんね。明日は学校行けそう?」
子「うん」
 
ここで休んだらお小遣いが増えるという間違った学習をしてしまう可能性もありますが、それよりも勉強を頑張っているのはすごいよという認識をしてほしいからそうしました。とりあえず、学校に行けば気分も変わるだろうし、気持ちも変わるでしょうから。
 
昼食の後は、掃除。階段の掃除機をお願いしました。「肩痛い」とか言いながらもやってくれました。
 
そして5時間目。時間割は国語ですが、本人は算数を選択。わざわざ「授業(科目)が変わること学校でもあるから」という理由も添えるほど。九九を頑張ろうとしていて、涙・・・(実際には出てませんけど)。
 
さあ勝負の九九。ただこちらも教育を専門とする身。ただの繰り返しだなんてプロの名がすたります。記憶は繰り返しも大事だけど、5感を使って覚えた方が速い。そこで、計算ドリルをコピーして、①8の段をかく、②心の中でテスト、③読みテスト、④私のテストという順で取り組ませました。
 
ただ、5時間目始まってもまだ、できないと涙が出てきます。落ち着く→涙を繰り返してようやく8×6まで進みました。ただ5時間目で終わりそうもない感じを察した私は、長期戦になることを見越し、1から4までをやれたら動画15分見るという休憩時間を設けました。そして動画の後は、8×6だったものを8×7に伸ばして再度チャレンジ。ある程度できなければ、いったん休憩で動画もありにしました。8×7あたりで、涙を流すことはなくなり、何度も何度もチャンレンジするようになりました。
 
そして結局、この8の段と動画のセットは夜まで続きました。途中でご飯やお風呂をはさみながら8の段を最後までやりとげました。
 

エンディング

次の日は何事もなかったかのように朝から学校へ行きました。そしてこれを書いている現在までとりあえず休まず学校には行っています(病欠はのぞく)。九九も9の段までとりあえず終わりました。あとは何度も繰り返して長期記憶に移行する段階です。
 
なんか全部ハッピーエンドのように思えますが、きっと同じようなことがまたいずれ起こるでしょう。でも、一度乗り越えたということは本人としても、親の私としてもとりあえずの自信になります。こうやって少しずつ挑戦するレベルがあがり、自己調整できるようになっていくのだと思います。
 
そう思うことで、今回のことが負の経験でなく、正の経験になることでしょう。よくいう失敗は成功の元。ま、結局そう考えた方が前を向けるから、思い込んでいるだけなんですけどね笑
 
最後までお読みいただきありがとうございました。何かの参考になれば幸いです。素敵な一日をお過ごしください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?