Secret Garden【400字小説】
桜の木の下には死体が埋まってるんですって。
だからあんなに綺麗な花が咲くのね。
薄いピンクは大地に溶けた赤い血が薄まったせい。
儚く散る花びらは、死体から受け取った気勢の欠片……。
「私が殺したんです」
目の前の刑事は、女の告白に真剣な眼差しを傾ける。
「仕方ないじゃありませんか。綺麗な花を咲かせるためには、必要だったんですもの」
女に悪びれた様子は一切なく、その顔には微笑みすら浮かべている。
「旦那はどうなってる?」
年配の刑事が訊ねると、
「もうすぐ海外から戻るとの連絡が来てます」
若い刑事が答える。
「精神鑑定が必要だな」
庭を、見る。
女が殺したのは、強盗犯。
だから《これ》は、正当防衛なのだが……、
「勿論、殺意はありました。殺す気がなかったら、殺せませんもの」
妖艶に笑う女の唇が赤く艶めく。
広い中庭には沢山の種類の花が一面に咲き誇る。
唯一の違和感は、《花の色がすべてピンク》であることだ。
——何人が眠っているというのか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?